新人王大谷翔平、波乱万丈も全てが意義ある初年度だった

今季最終打席でも安打を放ったが、本当の有終の美は新人王獲得だった。(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

エンジェルスの大谷翔平が、ア・リーグの新人王に選出された。有終の美だ。今季、ひじの故障は残念だったが、PRP療法選択も、尚早の声もあった9月の復帰登板も、最終的な手術の決断も全て正解だった。

歴史的意義だけでなく数字でも上回っていた

新人王投票では、ヤンキースのミゲール・アンドゥハー、グレイバー・トーレスとの接戦を予想する声もあったが、投票権を持つ30人の記者の内、25人が大谷に1位票を投じる圧勝だった。もちろん、実質的にベーブ・ルース以来の二刀流のインパクトによるところ大なのだが、WAR(Wins Above Replacement 、メジャー最低レベルの選手を起用した場合に比べ、どれだけ勝利数に貢献したかを示す指標)で比較すると、大谷3.8(打者として2.8、投手として1.0)、アンドゥハー2.7、トーレス1.9となる。歴史的意義や印象度ではなく、やはり数字の上でも投打で稼いだことにより、大谷が上回っていたのだ

キャンプでの不振と故障という試練

振り返ってみると、スプリングトレーニング時の評価は最悪だった。投げてはボールの違いに戸惑い、四球がやたら多かった。打撃ではさらに苦しみ、ベテランスカウトの「高校生並み」というコメントを引用した記事が掲載されて大きな話題となった。そこから、投打とも短期間で良くぞここまでアジャストしたものだ。開幕後の大活躍で、アメリカメディアの大谷に対する評価の「手のひら返し」が日本で話題になったが、スプリングトレーニング時点での状態を見る限り、厳しい評価を下すのは当然だし、その後の驚異的なパフォーマンスには素直に脱帽するしかない。見聞したものを率直に評価すればそうなるのは仕方ない、と思う。

そして、試練もあった。言うまでもない。ひじの故障だ。これで、6月から1ケ月間打者としても欠場した。腱を移植するトミー・ジョン手術を回避し、再生療法であるPRP療法を選択したこと、エンジェルスがポストシーズン進出の可能性を逸しているのにも拘らず、9月に投手として復帰したこと、その結果手術に踏み切ることになったことに対しては、大きな議論もあった。

しかし、一見遠回りしたようにも思えるが、PRP療法の選択により早期に打者として復帰できたことが、夏場以降の長距離砲としての覚醒に結びついた。そして、投手として敢えて復帰してみたことで、「やっぱりメスを入れなければダメだ」という結論を得ることができた。手術により投手としての欠場は長きに及ぶが、「いつか、いつか」と本人も周囲もビクビクする事態を避けることが出来た。

初年度での手術は却って良かった?

良く知られているように、大谷は現行労使協定の取り決めにより、エンジェルスに激安契約(今季はメジャー最低年俸の545,000ドル)で6年も囲い込まれてしまった。これは、「カネより夢」を選択した大谷自身の判断ゆえだが、「夢よりカネ」が常識の世界で何年か過ごせば、逃した魚の大きさを認識するようになるかもしれない。もちろん、2020年オフに年俸調停権を得た後は年俸はそれなりに上昇するはずだが、その価値に見合うビッグマネーの獲得はFA市場に身を投じる2023年のオフまで待たねばならない。そこまで薄給に耐えに耐え(言い過ぎ?)、やっとFA権を得たと思いきやトミー・ジョン手術からの回復待ちでは目も当てられない。しかし、今年手術を済ませたことで、その恐れはかなり減少したと言えるだろう。

不謹慎に思われるかもしれないが、この手術は今や投手のキャリアにおける通過点だ、という考えもある。球団にとっても、大谷の若さと拘束期間の長さ、年俸の安さを総合的に考慮すると、早いうちに「済ませとく」のはアリだった。