「黒船」DAZNでもお手上げ!日本人選手命のNHKが市場を占有する中でのMLB中継の難しさ

欧州生まれのDAZN、サッカーには意欲的も野球は理解不能だった?(写真:つのだよしお/アフロ)

DAZN(ダゾーン)が今季からはMLB中継での日本語のコメント入れを止めるようだ。これは信頼できる関係者筋からの情報だ。やはり、大御所NHKが日本のメジャーリーグファンをがっちり掴んでいる中、ライバルに入り込む余地はないということか。

DAZNとはご存知の通り、英国のパフォーム・グループが提供するスポーツ中継のネット配信サービスだ。Jリーグとの大型10年契約で一躍有名になった「黒船」だ。日本市場にしっかり腰を据えて取り組む姿勢を印象付けたばかりだが、そこは外資系。将来性のあるコンテンツとそうでないものをビジネスライクにしっかり見極めたということだろう。

誤解なきよう記しておきたいが、MLB中継自体から撤退するということではない。今季からは日本語でのコメント入れがなくなり、現地映像&音声の流しっぱなしになるということだ。しかし、1日平均2試合ほどの日本語放送のアナウンサーと解説者(一応、ぼくもその1人だ)のギャラなんぞ、MLBに支払う(直接かそれともディストリビューター経由かは知らない)莫大な放映権料からすると大した金額ではないだろう。何年後かは不明だが、放映権が切れたら更新はあっさり見送る可能性が高いのではないか。

ネットでのスポーツ中継に関しては、先日スポナビライブのサービスのDAZNへの統合が発表されたばかりだ。DAZNはMLBに関しても一層力を入れていくのかと思いきや、実態は全く反対だった訳だ。

しかし、日本でのMLB中継はつくづく難しいと思う。基本的に視聴者が関心を示すのは日本人選手だけで、そのようなマジョリティはNHKがしっかり掴んでいる。Jスポーツにせよ、スポナビライブやDAZNにせよ、NHKとの差別化を図ろうとマニアックなカードに走れば走るほど視聴者数の一層の減少につながるという状況にあった。

まだスカイパーフェクTVが直接の製作でMLBライブを放送していた2003年のこと、放送カードを徹底的にイチロー所属(当時)のマリナーズと松井秀喜のヤンキースに絞ったことがあった。その年から、スカパー!の解説者の末席に加えていただいたぼくは、プロデューサー氏に「これではNHKと同じではないですか」と生意気に意見したことがある。細分化されたマニアックな世界にこそ、CS放送の生きる道があるのでは?と素人ながらに考えたからだ。

しかし、プロデューサー氏の答えは違っていた。「CS放送はマニアのためのものですが、細分化されたセグメントの中で王道を行かねばならないのです。野球ファンの中で、メジャー好きというだけでもう十分少数派です。その少数派の中ではマジョリティにならなければならない。イチロー、松井ではなく、“パイレーツが渋い”なんて言っていては出口のない袋小路に入っていくようなものです」ということだった。「ナルホド」。

因みにDAZNはMLB中継での日本語コメント付けの廃止をまだ発表はしていない。今は、担当アナウンサーや解説者に「もうやりません」と順番に告知している最中らしい。ぼくにはまだ何の連絡もないが、まあ優先順位としては限りなくラストのほうだろう。

一方で、今こそチャンスとばかりにMLB日本語中継という火中の栗を敢えて拾う媒体が出てくることを期待している。しかし、改めて思う。「メジャーリーグはメシのタネにはならない」。2008年いっぱいでスカパーが自社製作での放送を打ち切った時もそうだったが、これが本業だったらおまんまの食い上げだ。根っからのメジャー好きのぼくにとっては、MLB解説の仕事がなくなるのは個人的にとても寂しいが、これが生業ではないので、我が家の家計には何のインパクトもないのが救いだ。