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プロ野球ファンの「民度」が問われかねない大谷翔平の球宴ファン投票1位

豊浦彰太郎Baseball Writer
(写真:アフロスポーツ)

「プロ野球ファンの民度が問われてしまう」そんな想いにすら駆られた。日本ハムの大谷翔平が球宴ファン投票のDH部門で1位になったことについてだ。ご存知の通り、彼は今季4月8日を最後に出場実績がない。

もちろん「ファン投票」なので、必ずしもきっちり実力・成績の順位通りである必要はない。しかし、それも程度問題だろう。大谷が日本球界を代表するスターであることは間違いないが、あくまでファン投票は、そのポジションでもっとも秀でた成績を残している選手を各自が独自の視点で選ぶことが基本だと思う。

ぼくが「ファンの民度が問われかねない」と嘆いているのは、結果的に大谷が選出されたということだけではなく、中間発表以降に自浄作用が働かなかったことだ。

メジャーでも、近年球宴ファン投票でちょっとした事件があった。2年前のア・リーグファン投票の中間報告で、一時ロイヤルズの選手が9ポジション(野手8人プラスDH、メジャーでは投手は投票の対象になっていない)中8つを占めたのだ。当然、中には球宴には到底相応しくない成績の選手も含まれていた。この年から投票は用紙が廃止されネットのみとなったため、ウェブ投票の弊害とする意見も出た。しかし、最終的には4枠に終わった。ロイヤルズの寡占状態に「どげんかせんといかん」とする「良識派」が攻勢に転じたのだ。

しかし、同様な事態は残念ながら日本では起きなかった。起きたのは、アイドルの人気投票だけだったということか。脱力感すら感じてしまう。

もうひとつ大事なことを指摘しておこう。大谷に票が集まっている状態を問題視するメディアがここまで事実上皆無だったことだ。批評性を持たないジャーナリズムは泳げない水泳選手に等しい。

Baseball Writer

福岡県出身で、少年時代は太平洋クラブ~クラウンライターのファン。1971年のオリオールズ来日以来のMLBマニアで、本業の合間を縫って北米48球場を訪れた。北京、台北、台中、シドニーでもメジャーを観戦。近年は渡米時に球場跡地や野球博物館巡りにも精を出す。『SLUGGER』『J SPORTS』『まぐまぐ』のポータルサイト『mine』でも執筆中で、03-08年はスカパー!で、16年からはDAZNでMLB中継の解説を担当。著書に『ビジネスマンの視点で見たMLBとNPB』(彩流社)

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