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日米通算2000本安打達成も、期待の若手昇格で地位安泰でないアストロズ青木宣親

豊浦彰太郎Baseball Writer
記録達成の歓びに浸ってばかりもいられない?(写真:Shutterstock/アフロ)

アストロズの青木宣親の日米通算2000本安打達成は、現地のメディアでも比較的大きく報道された。球団も12日のレンジャーズ戦の前には記念セレモニーを開催し、テキサスの球団らしくテンガロンハットを贈呈し讃えていた。青木としては、忘れられないマイルストーン達成となったことだろう。

しかし、その青木もいつまでも記録達成の喜びに浸ってばかり、という訳にもいかない状況がありそうだ。

アストロズは14日にマイナーから、デレク・フィッシャー外野手を昇格させたのだ。21歳のフィッシャーは2014年のドラフトで全体でも37番目に指名された外野手だ。MLB.comは、2月に発表した球団別のプロスペクトランキングでアストロズのNo4としている。彼が昇格したのは、レギュラー外野手のジョシュ・レディックが12日のレンジャーズ戦での守備で脳震盪を負い、7日間の故障者リスト入りしたためだ。

したがって、レディックが戦列に復帰すれば、今度はフィッシャーが3Aに戻されるというのが順当なシナリオだ。しかし、そうならない展開も決してありえないとは言い切れない。実際、昇格後フィッシャーはいきなりデビュー戦で初本塁打を含む2安打に2四球で計4度出塁と目覚ましい活躍を見せているのだ。

青木は間違いなくアストロズにとって貴重な戦力だが、今季チームが67試合を消化した時点で、スタメン出場は約6割強の42試合、そしてそのうち試合終了まで全うしたのはそのちょうど半数の21試合だ。言い換えれば、彼は脇役として貴重なのであって、今後よほどのことがない限りレギュラーとして起用されることはあり得ない。それに対し、フィッシャーは現時点では未熟かもしれないが、今後はレギュラーに成長し中心選手としてチームを支えることが求められている。出塁率は高く、青木には絶対的に欠けるパワーがある(今季、3Aですでに16本塁打を放っている)。これから先、彼ら2人のパワーバランスは確実にフィッシャーに傾いていく。青木のプラトーンプレーヤーとしての位置付けは決して安泰ではない。

もっとも、フィッシャーは期待の若手だけに、7月末のウェーバーを経由しないトレードデッドラインまでに放出される可能性も否定できない。現在、メジャー最高勝率.672で地区2位のエンジェルスに11.5差を付け首位を快走するアストロズだが、先発ローテーション投手が3人も故障者リストに入っている。ポストシーズンを勝ち抜くことを視野に入れると先発投手の補強は絶対必要で、その場合交換相手としてフィッシャーが求められることは大いに考えられる。

どちらにせよ、ここから先しばらく青木の動向には目が離せないところだ。

Baseball Writer

福岡県出身で、少年時代は太平洋クラブ~クラウンライターのファン。1971年のオリオールズ来日以来のMLBマニアで、本業の合間を縫って北米48球場を訪れた。北京、台北、台中、シドニーでもメジャーを観戦。近年は渡米時に球場跡地や野球博物館巡りにも精を出す。『SLUGGER』『J SPORTS』『まぐまぐ』のポータルサイト『mine』でも執筆中で、03-08年はスカパー!で、16年からはDAZNでMLB中継の解説を担当。著書に『ビジネスマンの視点で見たMLBとNPB』(彩流社)

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