Yahoo!ニュース

中日 大島、平田の複数年契約は「大判振る舞い」か?

豊浦彰太郎Baseball Writer
(ペイレスイメージズ/アフロ)

一時はFA宣言が確実されながらも、残留の道を選んだ中日の大島、平田の両外野手が正式に複数年契約を交わしたようだ。スポーツ紙電子版には「大判振る舞い」の見出しも踊っている。

「中日 残留コンビに大判振る舞い 大島はチーム最高1億5000万円」

(スピニチアネックス 11月20日)

具体的には、大島は3年契約で2017年の年俸は6000万円アップの1億5000万円、平田は5年契約で来季年俸は5000万円アップの1億2000万円と伝えられている。しかし、契約期間内の年俸は変動制だそうだ。これはちょっと気になる。

西山球団代表(67)は大島と平田の年俸について「(ダウンする可能性?)あります。ただ、ものすごく悪くなっても40%ダウンということはしない。もちろん良かったら(年俸を)上げます」と説明。

出典:スポーツ報知 11月19日

これは、場合によっては途中から安い報酬で囲い込まれるリスクもないとは言えない。両選手とも許容できる最低保証額をコミットしてもらっていると思いたい。契約期間内の年俸交渉も、「複数年契約」という前提がある以上保有権は球団が留保している訳で、対等な立場とは言い難く、球団が有利だと思う。

複数年にもミソがある。28歳の平田は順当に行けばこれからの5年間は選手としてのピークを迎える。31歳と平田より年上の大島は短めの3年契約にとどめられている。言い換えれば、球団は彼らの選手としていちばん美味しい期間だけの保有権を確保しながら、故障や不調のリスクを変動制の年俸でヘッジすることに成功したのだ。契約期間内の解雇はないようだが、複数年契約を結んでいなくても、彼らクラスならいくら故障や不調に陥っても、登録選手契約を解除される事態はほぼあり得ない。

両選手のファンや球団への愛には敬意を表するのだけれど、ぼくには彼らは来季の昇給との引き換えにその先の保有権を渡してしまった印象が拭えない。基本的には年俸変動制の複数年契約は、スタークラスの選手にはメリットはないと言えるだろう。

Baseball Writer

福岡県出身で、少年時代は太平洋クラブ~クラウンライターのファン。1971年のオリオールズ来日以来のMLBマニアで、本業の合間を縫って北米48球場を訪れた。北京、台北、台中、シドニーでもメジャーを観戦。近年は渡米時に球場跡地や野球博物館巡りにも精を出す。『SLUGGER』『J SPORTS』『まぐまぐ』のポータルサイト『mine』でも執筆中で、03-08年はスカパー!で、16年からはDAZNでMLB中継の解説を担当。著書に『ビジネスマンの視点で見たMLBとNPB』(彩流社)

豊浦彰太郎の最近の記事