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ロッテ・ナバーロとヤンキース・チャップマンの両ケース 不祥事への処分に関する日米の違い

豊浦彰太郎Baseball Writer
DVのチャップマンに処分を下したのは球団ではなくMLB機構だ。(写真:USA TODAY Sports/アフロ)

ここ数日の間に、不祥事に関する処罰裁定が日米で下った。その対比が興味深いので紹介したい。

まずは日本だ。銃刀法違反で逮捕されたヤマイコ・ナバーロに対し、ロッテ球団はオープン戦期間を含む約2ヶ月の出場停止と罰金を課し、球団社長他一部フロントスタッフも管理責任を問い罰金・注意処分とした。

6年前にナバーロ同様の実弾所持で逮捕されたマキシモ・ネルソンに対し、所属する中日球団は3ヶ月の出場停止処分を下していただけに、今回のロッテの判断はやや意外だった。戦力のナバーロをお蔵入りさせねばならない期間を最短化したいとの思いから、フロントの管理責任を持ち出した可能性もあるだろう。また、処分期間に(これはネルソンのケースも同様だが)オープン戦期間が含まれているのも「水増し感」がある。しかし、NPBの熊崎勝彦コミッショナーは「適切な処置」とコメントしている。

次は、アメリカのケースだ。このオフ、レッズからヤンキースに移籍した豪速球左腕のアロルディス・チャプマンに対し、MLB機構は開幕から30試合(30日ではない、同一期間でもチームにより試合数が異なるケースがあるからだ)の出場停止処分を下した。罰金はないが、処分期間のサラリーは支払われない。

チャップマンは移籍決定前に恋人に対するDV容疑で逮捕されていたのだ(ヤンキースはそれによる処分発生の可能性を踏まえての獲得だった)。チャップマンは、この処分が不服なら異議申し立てをすることもできるが、処分には従うと語っている。

ナバーロもチャップマンも彼らの非はまちがいない。処分を受けるのは致し方ないだろう。しかし、処分は公正中立でなければならない。その観点からは、裁定を下すのが中立的立場の機構で、処分される選手に異議申し立ての権利が確保されているMLBの方が、コンプライアンスの観点からも正しい仕組みと言えるだろう。また、選手の背後には地上最強の労組であるMLB選手組合が控えている。彼らによる裁定内容のチェック機能も働いている。

それに比べると、NPB式は球団の判断に一任されている点でスキームの健全性に欠けると思う。契約関係にある選手は、立場上球団の判断に異議申し立てをし難いものだ。その結果(かどうかは分からぬが)、今回のケースでは球団の思惑も感じ取れる処分内容となっている。それなのに、コミッショナーが単に球団判断を追認しているのも不可思議だ。

また、ナバーロの件に関し、NPB選手会は何らのコメントも出していない。もちろん、外国人枠のナバーロは選手会に所属していないのだが、仮にこれが組合員の不祥事だったらどうだろう。選手会は選手が不当に重い処分を受けないようバックアップ体制を取っていたかは疑問だ。

Baseball Writer

福岡県出身で、少年時代は太平洋クラブ~クラウンライターのファン。1971年のオリオールズ来日以来のMLBマニアで、本業の合間を縫って北米48球場を訪れた。北京、台北、台中、シドニーでもメジャーを観戦。近年は渡米時に球場跡地や野球博物館巡りにも精を出す。『SLUGGER』『J SPORTS』『まぐまぐ』のポータルサイト『mine』でも執筆中で、03-08年はスカパー!で、16年からはDAZNでMLB中継の解説を担当。著書に『ビジネスマンの視点で見たMLBとNPB』(彩流社)

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