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漁夫の利を得た?マリナーズが有利な条件で岩隈久志との再契約に成功した理由

豊浦彰太郎Baseball Writer
マリナーズは他球団より岩隈の健康状態に関し正確な情報を持っていたことは間違いない(写真:USA TODAY Sports/アフロ)

ドジャースと3年4500万ドルの契約に合意したと報じられたばかりの岩隈久志は、結局マリナーズに戻ることになった。どうやら身体検査で問題が見つかりドジャースとの契約が成立しなかったようで、そこでクイックに動いたマリナーズが契約にこぎつけたようだ。

マリナーズとの契約期間は1年で、2017年と2018年は”vesting options”と現地メディアは報じている。“vesting”とはこの場合、「1年ごとに確定する」という意味だ。2年間もパックではなく1年単位で「契約する」「しない」を選択できるのだ。ということは、3年間岩隈を保持するも、1年(または2年)で彼をリリースするもマリナーズは岩隈の健康状態とパフォーマンスを見極め毎年判断できるのだ。金額は現時点では明らかになっていないが、ドジャースとのとん挫した契約では年平均1500万ドルだったため、マリナーズとのそれも最高でも1500万ドルだろう。もともとマリナーズは岩隈に規定の1年1580万ドルのクオリファイングオファーを提示し、却下されている。少々不謹慎な言い方かもしれないが、岩隈の身体検査での問題発覚によるドジャースとの契約不成立で、マリナーズは漁夫の利を得たと言えよう。

マリナーズが他球団を制して契約にこぎつけることができたのは、やはりこれまで岩隈が在籍していたことで、少なくとも他球団より彼の健康状態に関する情報を多く持っていたからだろう。今回のドジャースでの検査で何がひっかかったのかは不明だが、マリナーズは「それほど心配するほどではない」と考えたのではないか。それで躊躇なく、岩隈に対しアクションを起こせたのだろう。一部の日本メディアではマリナーズのクイックな動きは「イワクマ愛ゆえ」との報道もあったが、現実にはもっと功利的な判断によるものだったとぼくは思っている。

Baseball Writer

福岡県出身で、少年時代は太平洋クラブ~クラウンライターのファン。1971年のオリオールズ来日以来のMLBマニアで、本業の合間を縫って北米48球場を訪れた。北京、台北、台中、シドニーでもメジャーを観戦。近年は渡米時に球場跡地や野球博物館巡りにも精を出す。『SLUGGER』『J SPORTS』『まぐまぐ』のポータルサイト『mine』でも執筆中で、03-08年はスカパー!で、16年からはDAZNでMLB中継の解説を担当。著書に『ビジネスマンの視点で見たMLBとNPB』(彩流社)

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