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中日によるカブレラ降格判断は戦力極大化の放棄

豊浦彰太郎Baseball Writer

中日のダニエル・カブレラが二軍落ちとなった。3試合連続のクオリティスタート(先発して6回以上を投げ自責点3以下)を果たした投手を降格させる人事には全く首をかしげざるを得ない。

5月29日のオリックス戦に先発したカブレラは6回まで3安打無失点の好投を見せたが、7回に四球と安打で一二塁のピンチを招くと、送りバントの構えの次打者にストレートの四球を与え満塁とすると降板を命じられた。

試合後、首脳陣はカブレラの二軍降格を決めた。確かに、突然の変調とバントで一死を与えてくれる打者を4球であっさり歩かせたことは褒められたことではない。しかし、それが二軍に落とすべきことだろうか?

ある選手の二軍降格は、別の選手の昇格を伴う「ロースターチェンジ」である。28人の登録枠を最大限活用し、選手の構成をベストなものにしなければならない。それなのに、山井大介の57.2回に次ぐチーム2位の55.2回を投げているカブレラを落としていいのかといいたい。今のファームに、ここ5試合で4度のクオリティスタートのカブレラを上回る投手がいるのだろうか。

結局この人事は、自軍の戦力の極大化よりも、ふがいない投球(それも7回表だけだ)に対する懲罰を優先したもので、勝利を目指す集団にとってベストな判断とは言い難い。

また、カブレラはここまでの10試合で5勝4敗3.72ながら、55.2回で奪三振数(31)を上回る35の四球を与えている。貴重なローテーション投手だが大エースではない。そんな「中の上」クラスの彼の先発登板には、そこそこのイニングをこなす成果にある程度の不安定さも伴うと考えるべきだ。今回程度のプチ乱調は、年間を通じればカブレラには一定回数予測されることだ。都度、懲罰降格させる種のものではないし、カブレラもこの懲らしめにより不安定さが改善されるものでもないだろう。選手の強みと弱点を把握した上で、適材適所の起用をするのが首脳陣の役割ではないか。

<記録は、5月30日時点>

Baseball Writer

福岡県出身で、少年時代は太平洋クラブ~クラウンライターのファン。1971年のオリオールズ来日以来のMLBマニアで、本業の合間を縫って北米48球場を訪れた。北京、台北、台中、シドニーでもメジャーを観戦。近年は渡米時に球場跡地や野球博物館巡りにも精を出す。『SLUGGER』『J SPORTS』『まぐまぐ』のポータルサイト『mine』でも執筆中で、03-08年はスカパー!で、16年からはDAZNでMLB中継の解説を担当。著書に『ビジネスマンの視点で見たMLBとNPB』(彩流社)

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