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弁当を完食するもラーメンは食べ残して有名店が激怒! 飲食店への持ち込みがダメな理由

東龍グルメジャーナリスト
(写真:イメージマート)

ラーメン店に弁当を持ち込み

2021年の秋に、飲食店の持ち込みに関する記事がありました。

店に弁当持ち込みラーメン残す 客の非常識行動に二郎系店主が激怒「あまりにひどい」/J-CAST ニュース

ある有名な系列のラーメン店でのことです。客が持ち込んだ弁当を食べ、注文したラーメンは食べ残しました。食べ終えた弁当をゴミ箱に捨てたところ、店主が注意。持ち込んだ弁当は食べて、注文したラーメンを食べ残すのは失礼であると伝えたところ、客は謝ったといいます。

当然のことながら、食べ残しはよいことではありません。しかし、この事案はただ単に失礼にあたるかどうかといったマナー的な問題に留まらないと考えています。

「あまりにもひどい」ラーメン屋で「弁当」食べる客に店主激怒 持ち込み禁止にできる?/弁護士ドットコム

法的な観点から検証した記事もありました。飲食店は施設管理権によって、持ち込んだものを食べないようにルールを定められると、弁護士の大橋賢也氏が言及。このルールを定めたり、明示したりしていなくても、客に求めることができるともいいます。

持ち込んだものを食すのを、法律的に禁止することができるのは重要なことです。当記事では、飲食店の立場から、持ち込んだものを食べられると迷惑である理由を説明していきましょう。

飲食店の分類

飲食店を営業するには保健所から飲食店営業許可をとる必要があります。食品衛生法によると飲食店営業とは「食品を調理し、又は設備を設けて客に飲食させる営業」のことです。

日本標準産業分類によれば、飲食店は「中分類 76 飲食店」で分類されている業態。テイクアウトやデリバリーの店は「中分類 77 持ち帰り・配達飲食サービス業」と明確に分類されています。

つまり、飲食店は店内で食べることを前提とした業態です。

空間にはコストがかかっている

ラーメン店はもちろん飲食店なので、店内で食べることが期待されています。

飲食店の空間を維持するには、イスやテーブルを用意したり、調度品を飾ったり、灯りを点けたり、空調を整えたり、店内を清掃したりと、快適な空間を実現するのに費用が発生するもの。

飲食店では、客が席につき、店内の空間を専有しているだけでコストが発生しています。

滞在時間が長くなる

店内で注文して食べるのであれば、売上につながるので空間にコストがかかっても仕方ありません。

しかし、持ち込んだものを食べたとしても、全く売上になりません。むしろ持ち込んだものを食べている時間は、無駄なコストがかかるだけです。

しかも、余計なものを食べているせいで滞在時間が長くなってしまうので、客席回転率も低下してしまいます。

注文機会を損失する

弁当を持ち込んだ客は、もしも弁当を食べていなければ空腹が満たされず、他に何か食べたいと思ったかもしれません。

ラーメンにトッピングしたり、サイドメニューをオーダーしたりした可能性もあります。食べ物ではなく、ドリンクを飲んでいたかもしれません。

しかし、弁当を持ち込んで食べることによって、他のものを注文する機会が逸失されます。つまり、持ち込みによって、飲食店は注文機会も損失してしまうのです。

ゴミ処理の費用が発生する

ゴミは、事業系ゴミと家庭系ゴミに分類されており、事業系ゴミは一般廃棄物と産業廃棄物に分かれています。

産業廃棄物は廃棄物処理法で定められたプラスチックや金属、廃油やガラス、陶器など20種類に及ぶ廃棄物であり、一般廃棄物は、生ゴミ、調理や提供過程で発生する紙や箸などの木材や布。

飲食店は基本的に、一般廃棄物収集運搬業許可をとった廃棄物処理業者に事業系ゴミを任せ、有料で処理してもらっています。

持ち込んだものを食べることによってゴミが発生することもあり、件のようにゴミを店で捨てることもあるでしょう。そうなると事業系ゴミとして有料で処理しなければならず、余計なコストが発生してしまいます。

食中毒のリスクがある

飲食店は、提供した食べ物や飲み物に関して衛生上の責任を負います。

食中毒が起きた場合、保健所がしっかりと調査して何が原因であるかを究明しますが、客が勝手に持ち込んだ食べ物が原因であったと判明するまでは営業を休止します。

食中毒が起きたというニュースや評判が世間を賑わせた後、調査結果が判明したとしても、メディアが積極的に報じるわけではありません。したがって、飲食店に瑕疵がなかったとしても、ここで失われた信頼を取り戻すのは容易ではないのです。

大きなリスクがあることを鑑みれば、飲食店が持ち込みを許容する理由は見つかりません。

持ち込みが可能になる場合

持ち込みは飲食店にとって大きなリスクをはらみますが、全く認められていないわけではありません。

ただ、持ち込みが許容されている場合でも、かなり限定的となっています。定額で好きなだけお酒を持ち込めたり、ワイン1本毎に持ち込み料金が発生したりすることがほとんど。つまり、持ち込みの対象はお酒であり、食べ物ではありません。

飲食店のオーナーは基本的に料理を食べてもらいたいから、飲食店をオープンし、営業しています。したがって、食べ物の持ち込みを認めようと思う飲食店は非常に稀です。

持ち込んだものを食べていけないのは基本的なルール

ここまで色々なことを検証してきましたが、件の場合であれば、客は弁当を公園などで食べてからラーメン店に訪れたらよかったのではないでしょうか。

飲食店はもともと薄利多売な業態。できるだけ値段を上げないように努力しており、営業利益率が10%もあれば、かなりの優良店です。

現在は、新型コロナウイルスの感染が再び拡大して第6波を迎えています。東京をはじめとした多くの地域では、まん延防止等重点措置が引き続きとられており、飲食店は営業時間や酒類提供の制限を受けている状況。

コロナ禍の中で、薄利多売の飲食店が生き残るのは容易ではありません。ただでさえ大変な時期であるだけに、飲食店では持ち込んだものを食べてはいけないという非常に基本的なルールが改めて浸透すればと願っています。

グルメジャーナリスト

1976年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。ファインダイニングやホテルグルメを中心に、料理とスイーツ、お酒をこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口で分かりやすい記事を執筆。審査員や講演、プロデュースやコンサルタントも多数。

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