バッハをテーマに据えたホテル

バッハと聞いて、誰だと思う人はほとんどいないのではないでしょうか。

バッハは希代の音楽家であり、日本の音楽教育では「音楽の父」と紹介されています。1685年3月31日にドイツで生まれ、作曲した作品は1000曲以上。正式名はヨハン・ゼバスティアン・バッハで、J.S. バッハと略されることもあります。

バッハの音楽はどれも素晴らしい名曲ばかりですが、実はバッハをテーマにしたホテルがあります。

ホテルグランバッハ東京銀座 (C) 東龍
ホテルグランバッハ東京銀座 (C) 東龍

それは、2021年11月30日にグランドオープンしたホテルグランバッハ東京銀座。ホテルグランバッハ京都セレクト、ホテルグランバッハ熱海クレッシェンド、ホテルグランバッハ仙台に続いてオープンしました。

レセプションのあるロビー&ラウンジに置かれたグランドピアノではバッハの曲が自動演奏されている (C) 東龍
レセプションのあるロビー&ラウンジに置かれたグランドピアノではバッハの曲が自動演奏されている (C) 東龍

「食と音楽を通して癒しと感動を提供する」というコンセプトのもと、バッハゆかりの7つの地域をイメージしたアートワーク、音や名曲をコラージュした絵画が館内に飾られていたり、レセプションのあるロビー&ラウンジにグランドピアノが置かれていてバッハの曲が自動演奏されていたりします。

ウェルネスを追求

オリジナルスイーツの「グランバッハトルテ」 (C) 東龍
オリジナルスイーツの「グランバッハトルテ」 (C) 東龍

音楽にこだわっているホテルですが、食に関しても他とは違うコンセプトを有しています。食材にこだわり、おいしさとウェルネスを追求したスタイルになっているのです。

総支配人の佐藤敏浩氏が総料理長も兼任。総支配人が料理人出身というのは珍しく、それだけ食にも力が入れられています。

ウェルネスを追求するためにウェルネスフード・コンシェルジュという職を置き、管理栄養士の資格を有する大島瑠梨子氏が就任。ランチやディナーではウェルネスやSDGsを追求した料理を監修しています。

食事だけではなく、ドリンクもウェルネスがテーマに。ヘッドバーテンダーの高橋司氏は2014年ニッカ・ウィスキー・フォーラム「カクテルコンペティション」で日本一に輝いたという指折りの実力派です。バッハやウェルネスを意識したカクテルを創作しています。

さらには、日本を代表するパティシエであり、「Toshi Yoroizuka」オーナーシェフの鎧塚俊彦氏がスイーツを監修するという豪華ぶり。

ホテルグランバッハ東京銀座で体験できる料理やカクテルを紹介していきましょう。

Wald Haus(ヴァルト ハウス)

Wald Haus(ヴァルト ハウス) (C) 東龍
Wald Haus(ヴァルト ハウス) (C) 東龍

1階にある「Wald Haus(ヴァルト ハウス)」はドイツ語で「森の家」を意味するレストランです。大島氏によるおいしくてヘルシーな料理や、アシスタントマネージャーでありロンネフェルトティーマスターシルバーを取得する大城眞由美氏がセレクトしたお茶を楽しめます。

ランチには新鮮で上質な旬素材を用いたカジュアルなランチメニューを用意。「ウェルネスランチコース」(4,400円、税込)は 魚料理か肉料理かをチョイスするコース仕立て。免疫機能を整えて身体の中から強く、キレイをつくることを意識したメニューです。

ディナーはプリフィクススタイルの「プリフィックスディナー」(メインディッシュ1品6,600円、メインディッシュ2品8,580円、税込)で本格的なコースを楽しめます。前菜、メインディッシュを選ぶことができ、どのメニューも栄養バランスを追求したものばかり。

いくつか代表的なメニューを紹介していきましょう。

アミューズ

アミューズ (C) 東龍
アミューズ (C) 東龍

旬の野菜を用いて血糖値が上がらないようにと動物性の要素は用いられていません。カブとカキのマリネ、紫キャベツとレーズンとリンゴのブレゼ、カボチャのメープルシロップ漬け、フレッシュなマッシュルームのスライスがのせられた4種のキノコのソテーとシェリービネガー、ロマネスコのペペロンチーノ風と野菜尽くし。ポタージュも、ゴボウとマッシュルームの野菜スープです。

多種の野菜が多彩な調理法を用いてつくられており、様々な栄養素がとれます。野菜が本来もっている滋味を存分に堪能でき、ウェルネスにこだわったホテルであることが印象付けられたアミューズであるといえるでしょう。

鮮魚と甘えびのクリュ 小松菜のエミュリュション

鮮魚と甘えびのクリュ 小松菜のエミュリュション (C) 東龍
鮮魚と甘えびのクリュ 小松菜のエミュリュション (C) 東龍

塩分を控えめにし、昆布締めしたマダイの旨味が存分に感じられます。甘味のある甘海老、紅芯大根のピクルス、さらには目の前でかけられる小松菜とワサビのソースによってメリハリのある味わいに。たっぷりと配されたエディブルフラワーも美しいです。

ボリュームはしっかりとありますが、100キロカロリー以下で炭水化物も4.5グラムと非常にヘルシーな前菜。

2種の調理法で楽しむ 氷温熟成肉の氷室豚

2種の調理法で楽しむ 氷温熟成肉の氷室豚 (C) 東龍
2種の調理法で楽しむ 氷温熟成肉の氷室豚 (C) 東龍

低い温度で熟成させ、旨味を増した氷温熟成の氷室豚を2種のスタイルで味わえます。右が低温調理した豚肉で、上にマスタード、アーモンドとクルミ、下にはカラメリゼしたダイコン。左がソテーした豚肉で、トマトと野菜のビネグレットソースです。付け合せは大きめのプティヴェール。

豚肉の旨味が味わえる素晴らしいメインディッシュですが、エネルギーは僅か282キロカロリーしかありません。糖質をエネルギーに変える手助けをするビタミンB1がたっぷりと含まれており、健康的な食材です。

ウェルネスな料理と充実したドイツワイン

ドイツのスパークリングのゼクト (C) 東龍
ドイツのスパークリングのゼクト (C) 東龍

どれも非常においしい上に、ウェルネスを意識したメニューとなっていました。バッハをテーマにしているので、ドイツワインも充実。「厳選ドイツワインとのペアリング3種」(3,300円、税込)ではスパークリングのゼクト、白ワイン、赤ワインと、ドイツのワインを料理に合わせてもらえます。

Magdalena(マグダレーナ)

Magdalena(マグダレーナ) (C) 東龍
Magdalena(マグダレーナ) (C) 東龍

2階のロビー階にはバー&ラウンジ「Magdalena(マグダレーナ)」があります。マグダレーナはJ.S.バッハの妻の名前です。ここでは、オーセンティックなカクテルから最新のミクソロジーにまで精通した高橋司氏によるカクテルを堪能できます。

特にオススメしたいのは、バッハにちなんだ5つのカクテル「Bach Cocktail」(1,540円、税込)。「1. A」「2. B」「3. C」「8. H」と「14」と、不思議な名前のシグネチャーカクテル5種が味わえます。さらには、シーズンによって新しくなる「Wellness cocktail」(1,320円、税込)も用意。

高橋氏がオススメする、いくつかの「Bach Cocktail」を紹介しましょう。

14

14 (C) 東龍
14 (C) 東龍

モンキー47、ライムジュース、竹炭パウダー&クランベリービネガー、トニックウォーター、シトラスバブルを合わせた、見た目もインパクトのあるカクテルです。

バッハが大好きな数字である14を命名した集大成ともいえるカクテル。球には竹炭パウダーとクランベリービネガーが包まれており、割ってカクテルに混ざると鮮やかな紫色になります。

3, C

3, C (C) 東龍
3, C (C) 東龍

コーヒー、カカオインフューズドカンパリ、ココナッツウォーター、コーヒーリキュール、アマレット、サトウキビシロップ、トンカビーンズパウダーと、コーヒーが香る大人向けのコクのあるカクテル。

コーヒー中毒だったバッハのためのコーヒーを生かしたカクテルで、瞬間燻製によってさらに香り高くなっています。

1, A

1, A (C) 東龍
1, A (C) 東龍

テキーラ、ライムジュース、酵素パイナップルジュース、アガベシロップ、甘酒、青い塩で構成された爽やかなカクテル。珍しい素材ばかりが使われており、南国風の優しい味わいがします。健康的で見た目も麗しいので、女性が好んでもらえそうな一杯です。

ストーリー性のあるカクテルの数々

それぞれのカクテルはBACHの文字を用いたカクテル名となっています。アルファベットのAから順番に数字が振られており、B=2、A=1、C=3、H=8という番号に。そしてBACHに対応したこれら全ての数字を足し合わせると、バッハが愛した14になります。

このような驚くべきストーリーを紡いだのが、ヘッドバーテンダーの高橋氏です。同ホテルを運営するグリーンホスピタリティーマネジメントに入社したのが2021年11月1日。オープンまで期日が迫っているので、正味10日間で全てのカクテルを考案しました。

その時の様子について尋ねると、高橋氏は次のように答えます。

「カクテルに重要なのはコンセプトとストーリー性。バッハに関するありとあらゆることを調べていき、カクテルを考案した。これからは低アルコールやモクテルなど、健康的なカクテルも増えていく。カロリーや栄養分を明示したカクテルも現れ、コンビニでも販売される時代が訪れるのではないか」

来年以降はカクテルペアリングのイベントも予定しており、ウェルネスフード・コンシェルジュを務める大島氏とのコラボレーションも考えているといいます。

音楽やウェルネスに加えて食も発信

食事に興味のある音楽家は少なくありません。バッハは大食漢であったといわれており、ワインが大好物。イタリアのジョアキーノ・アントーニオ・ロッシーニは牛フィレ肉とフォアグラ、トリュフを合わせた料理を考案し、ドイツのベートーヴェンはシンプルな食事を好んでいましたが、マカロニチーズには目がありませんでした。

食と音楽に共通するのは、人類が発展させてきた重要な文化であること。音楽や美食は生きるために必要ではありません。しかし、どちらとも人生を豊かに彩るのに必要な要素であり、人を人たらしめるものです。

音楽に加えてウェルネスをコンセプトにした料理とカクテルを発信できるホテルグランバッハが、世界的に誇れる日本の中心である銀座にオープンしたことは非常に楽しみなことです。