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2位は「営業時間を短縮しない!」決断 2021年上半期に反響があった飲食店×コロナの記事トップ5

東龍グルメジャーナリスト
(写真:つのだよしお/アフロ)

新型コロナの新規感染者数が過去最多

新型コロナウイルスの新規感染者数が増加の一途を辿っています。

東京都における2021年8月13日の新型コロナウイルスの新規感染者数は5773人で過去最多を更新しました。東京都をはじめとして、17都府県で過去最多の新規感染者数を記録し、いつピークを越えるのか見通しがつかない状況です。

東京都に発出された緊急事態宣言は8月31日までに延長されましたが、状況は悪化していく一方なので、延長されることが濃厚。飲食店は現在、20時までの時短営業と酒類提供の禁止を要請されていますが、延長されるとすれば、残念ながらこの要請は続くことになるでしょう。

東京都では年初に発出された2度目の緊急事態宣言から、まん延防止等重点措置、3度目の緊急事態宣言、まん延防止等重点措置、4度目の緊急事態宣言と非常事態が続いています。そしてその施策の中心が飲食店に対する営業制限。

まだ状況は改善されていませんが、2021年上半期は飲食業界にとって壊滅的な期間でした。当記事では、改めて飲食業界の状況を知ってもらうためにも、2021年上半期に執筆した新型コロナウイルス関連記事の中から、反響の大きかった5つをピックアップします。

5位/時短営業への疑問

第5位はこちらです。年明けに緊急事態宣言が発出され、飲食店に対する要請が厳しくなることに関する記事でした。

菅義偉首相が記者会見を行い、国は感染経路が不明の陽性者は、大部分が飲食に関係あるとして、飲食店の営業時間をさらに短縮することを示唆したのです。昨年末から飲食店の営業時間は22時までに制限されていましたが、これが20時へと早まり、酒類の提供も19時までとなりました。

なぜ飲食店だけが施策の対象になるのかと、飲食業界全体に大きな疑問が生まれた時期であったように思います。

4位/飲食業界の分断

次の記事は飲食業界の分断を危惧した記事です。

東京都は2021年3月18日、時短営業の要請に応じていない飲食店27店に、特措法45条に基づく時短営業命令を出しました。このうち26店がグローバルダイニングの飲食店。時短命令に従わなかったグローバルダイニングは逆に、行政による過剰な権利制約が続いているとして東京都を提訴します。

自治体と飲食業界の信頼関係が損なわれていることに加えて、協力金の不平等感や基準の不明確さによる不公平感によって、飲食業界でも分断が散見されました。

国や自治体は飲食業界に対して納得のいく説明ができていないだけではありません。その無責任で場当たり的な施策によって、飲食業界を混乱に陥れているように思います。

3位/飲食業界で新たな署名運動

3位としてピックアップしたのが、有名料理人による署名運動。署名運動はそれまでにも行われていましたが、新たにまた署名運動が開始されたのです。

2021年5月28日に東京や大阪、兵庫など9都道府県について、緊急事態宣言が6月20日まで再延長されました。協力金もまだ支給率が低く、飲食店の経営がとても逼迫していた時期。

国や自治体が行う施策の是正を求めて、2021年5月16日から一般社団法人 日本飲食未来の会による署名運動が始まりました。記事では、代表理事を務める「HAL YAMASHITA東京」エグゼクティブオーナーシェフ、山下春幸氏のインタビューも掲載。

署名運動で求めていることは、専門家による科学的な根拠をもとにしたガイドラインを策定し、しっかり対応している飲食店は通常営業できるようにしてもらいたいということ。至極真っ当な意見であり、ほとんどの飲食店が同じことを思っているのではないでしょうか。

2位/営業時間の短縮を拒否

先の記事と時系列が前後しますが、2位の記事はこちら。

2021年1月7日に菅首相が緊急事態宣言を発令しました。当初報道されていたように、飲食店に20時までの営業時間短縮と11時から19時までの酒類提供を要請。これに対して、グローバルダイニングは緊急事態宣言の期間中も通常営業をすると発表したのです。

創業者であり、代表取締役社長でもある長谷川耕造氏は同日に公式サイトへ投稿。国民の健康と生命に甚大な脅威となるような緊急事態ではないこと、飲食店の時短や休業は感染抑制に効果がないことは世界で証明されていること、死者数は米国などの約40分の1であり、医療崩壊していると考えられないこと、国からの協力金やサポートが不足していることから、通常営業の決断に至ったと述べました。

このあたりから、国や自治体と飲食業界の信頼関係が損なわれてきたように思います。そして、それが壊滅的になったのが、次の記事で述べる事象です。

1位/酒類提供の禁止

最も反響のあったのは、酒類提供の禁止に関する記事でした。

東京都、大阪府、兵庫県、京都府に対して、2021年4月25日から5月11日までの期間、緊急事態宣言が発出。東京都にとっては3度目の緊急事態宣言となりました。

それまでは20時までの時短営業と19時までの酒類提供となっていましたが、ここで初めて酒類提供の禁止が要請。飲食店の経営にとっても、食文化にとっても重要な役割をもつお酒が禁止されたことで、大きなインパクトを与えます。禁酒令、禁酒法とも皮肉られ、やりすぎだという声も少なくありませんでした。

これまでと同じように、国や自治体から飲食業界が納得できるような説明はされていません。そして酒類提供が禁止された後でも、新型コロナウイルスの新規感染者数は減少せず、現在に至ります。飲食店に酒類提供の禁止を要請するだけの施策に限界があることは明白です。

全く代わり映えしない施策

2021年の上半期が過ぎた後、飲食店が営業を大きく制限される中で、予定通りに東京五輪の開会式が7月23日に開催され、閉会式が8月8日に行われました。日本が過去最多のメダルを獲得したことは大変喜ばしいですが、その間に全国では新規感染者数が増大しています。

反響のあった5つの記事を振り返ってみると、国や自治体の飲食店に対する施策は全く代わり映えせず、新型コロナウイルスの感染も抑えられなかったことがわかるでしょう。最近では、協力金の早期支給、つまり、先払いが行われましたが、記事でも指摘したようにパフォーマンス以外の何物でもありません。

2021年下半期では、国や自治体による効果的かつ納得感のある施策によって新型コロナウイルスの感染が抑えられるとともに、飲食店が1日も早く自由な営業ができることを願っています。

グルメジャーナリスト

1976年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。ファインダイニングやホテルグルメを中心に、料理とスイーツ、お酒をこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口で分かりやすい記事を執筆。審査員や講演、プロデュースやコンサルタントも多数。

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