飯島直子氏が牛丼店で10袋も紅生姜を持ち帰ったのはなぜダメか? 考察するべき4つの点

(写真:アフロ)

牛丼の食べ方を披露

ここ最近、テレビやウェブのニュースは新型コロナウイルスの話題で埋め尽くされているといっていいかと思います。

実際に私も新型コロナウイルスの影響を受けている飲食店の現状を案じて記事を書きました。

新型コロナウイルスのパンデミックという大きな問題が起きている状況の中で、書くタイミングを逸していた記事があります。

それは、日本テレビ系「誰だって波瀾爆笑」で放送された女優の飯島直子氏がとった行動についての記事です。

飯島氏の素顔に迫る内容であり、好物であるという牛丼の食べ方も放送されました。

飯島氏は牛丼店の「松屋」で「おろしポン酢牛めし」を半熟卵と共にテイクアウトし、無料の紅生姜や七味唐辛子をもらっていくといいます。食べ方は、「おろしポン酢牛めし」の上に半熟卵をのせてから紅生姜を散らし、最後に七味唐辛子をかけるというもの。

その時に使われた紅生姜が全部で10袋を超えており、丼の表面が真っ赤に見えるほどであったことから、賛否両論がありました。

ネット上では賛否両論

ネット上の声は以下の通りです。

《「持ち帰り過ぎだな...」「せいぜい2、3袋だろ?」「ちょっと引くわ」といった批判的な声も上がっていて、「スーパーで買い置きしなさいよ」「テレビで放送したら、真似するヤツが出てくる」との指摘も出た。

(中略)

 「好きなら別に良いんじゃん」「席に置いてある箱からビニール袋に入れて持ち帰っておる訳じゃない」「完食したなら 問題ない!」といった意見だ。紅ショウガをたくさんかけるのが好きという人も多いようで、「私も同じ食べ方するから大量に持って帰ってくる」「庶民的でええやん」との共感も出ていた》

出典:飯島直子、牛丼店の紅しょうが大量持ち帰り 「ちょっと引く」「好きなら別に良い」(J-CAST)

10袋という分量の多さもあって驚きや否定的な意見が多いですが、それなりに共感する声もありました。

また、大手の牛丼店3社に紅生姜の制限数に尋ねたところ、以下のような回答があったといいます。

【吉野家】

お弁当1食につき、3袋までとさせていただいております

【松屋】

基本的には1つを推奨しておりますが、お客様には必要数どうぞとお声掛けしております。タレやドレッシングは1メニューにつき1つで、特段制限はございません。お断りはしませんが3個以上の多い数を必要な方へは、在庫を確認の上お渡ししたり、またはお新香お持ち帰りカップにて店内用のタレやドレッシングに対応する場合もございます。

【すき家】

醤油や七味と同じく、お客様のお好みでお使いいただく調味料のため、特に制限等は設けておりません。

出典:飯島直子の牛丼“紅ショウガ10袋持ち帰り”で論争勃発 適正量を大手3社に聞くと……(デイリー新潮)

牛丼店によって異なりますが、該当の「松屋」に関しては1つを推奨していながらも、希望すれば特に制限は設けてないといいます。

牛丼店としては問題ないとしているので、そこまで問題視する必要はないかもしれません。ただ、私としては、紅生姜の役割、主従関係、コスト、過剰演出の観点から気になることがあるので、説明していきたいと思います。

牛丼における紅生姜の役割

まず、牛丼とはどういった食べ物でしょうか。

牛丼とは薄切りの牛肉とタマネギを醤油ベースのタレで煮込み、それをご飯にのせた料理のことです。ほぼ全ての日本人が食べたことがある牛丼は、代表的な和食のファストフードであり、日本人のソウルフードともいうべき食べ物であるといってよいでしょう。

ちなみに、牛丼と牛めしは呼び方が異なるだけで同じものです。

牛丼は、ご飯と煮込んだ牛肉やタマネギが基本的な要素ですが、場合によっては牛肉やタマネギと一緒にシラタキが煮込まれたりもします。また、完成した牛丼に生卵を加えたり、紅生姜を添えたり、七味唐辛子をかけたりして、様々なアレンジを施すことも可能。

当然のことながら、牛肉とタマネギとご飯が牛丼の主役であり、生卵や紅生姜や七味唐辛子は、主役を引き立てるための脇役です。

紅生姜を添えることには次のような意味があります。

牛丼は塩味がしっかりとしており、甘味もあるので、紅生姜の酸味によってさっぱりとさせ、食味のバランスをとったり、紅生姜がもつ辛味がタレの濃厚さと協調することによって、味わいを深めたりしているのです。つまり、紅生姜は牛丼のおいしさを引き立てる役割を果たしています。

また、牛肉はやわらかく、ご飯はタレでしっとりしているので、紅生姜のシャキシャキした食感がテクスチャのコントラストを生み出し、リズムを形成します。

食味の観点に鑑みれば、丼の表面を埋め尽くすほど紅生姜を載せてしまうと、紅生姜の効果が失われてしまい、本来の役割を発揮できなくなるのではないでしょうか。

主従の関係

大手の牛丼3社に推奨量を質問したところ、次のような回答が返ってきたといいます。

【吉野家】

牛丼を美味しく召し上がっていただくためのものですので、美味しいと感じる範囲でご利用いただければと存じます。

【松屋】

1~2袋です。ただ、お客様のお好みですので、仰っていただけましたらご対応させていただきます

【すき家】

お客様のお好みにあわせてご利用いただきたいと考えております。すき家では幅広いトッピングメニューを取り揃えているため、それぞれのメニューにあわせてお客様のお好みの量をご利用いただきたいと思います。

出典:飯島直子の牛丼“紅ショウガ10袋持ち帰り”で論争勃発 適正量を大手3社に聞くと……(デイリー新潮)

飯島氏が訪れた「松屋」は、1袋から2袋が適量であるとしていますが、基本的には好みを優先しているということです。

牛丼店3社ともに、好みであれば推奨量より多く持ち帰るのはよいと寛大な態度をみせていますが、正直なところ私はあまり賛同できません。

なぜならば、先程も述べたように、紅生姜はあくまでも牛丼の添え物であり、牛丼のためにサービスとして無料で提供されるものだからです。

紅生姜が大好きでたくさん食べたいのであれば、主従関係が逆転するといわないまでも、その関係性は曖昧になります。紅生姜が主のような役割を果たすのであれば、別途購入するのが筋ではないでしょうか。

テイクアウトには手間暇や包装コストもかかるだけに、紅生姜は別料金にした方がすっきりとするかもしれません。

紅生姜のコスト

紅生姜はサービスとして無料で配布しています。では、どれくらいコストがかかっているのでしょうか。

持ち帰り用の紅生姜は1袋あたり5グラム程度なので、10袋であれば50グラム。紅生姜は1キログラム500円程度であるとすれば、50グラムで25円になります。

「松屋」の牛丼の値段は「牛めし」であれば並盛320円、飯島氏がオーダーした「おろしポン酢牛めし」であれば並盛420円です。紅生姜のコストは「牛めし」の7.8%、「おろしポン酢牛めし」の5.9%を占めます。一般的に商品価格の10%程度が利益であるとされているので、これでは利益に影響を与えることでしょう。

もちろん、利益を押し下げてしまうことがあれば、牛丼店がしっかりと個数の制限を定めることが望ましいです。

ただ、飲食店は基本的に薄利の業態であるだけに、いくら無料であったとしても好きなだけもらっていくのは、少し想像力が不足しているような気もします。

過剰演出の可能性

テレビでは、やらせではないにしても、演出が過剰になることがあります。なぜならば、普通のことをやっていても何も面白みがなく、コンテンツとして成立しないからです。

したがって、もしも、打ち合わせの段階で、飯島氏が「紅生姜が好きなので多めに使う」と話していたとして、制作側が「それなら、わかりやすくするために、丼いっぱいくらい載せるのはどうか」となり、10袋もの紅生姜をもらうことになったのかもしれません。

もしくは、撮影用にスタッフが購入してきた時に、既に10袋も入っていた可能性もあるでしょう。

いずれにせよ、飯島氏が紅生姜を好きであることは嘘ではないにしても、日常的に10袋も持ち帰っていることが本当であるかどうかは疑わしいような感じがします。

食に配慮したコンテンツ制作を希望

2019年における日本の広告費は、インターネットが初めて2兆円を超えてテレビを抜かし、トップに躍り出ました。

テレビは昔に比べれば視聴者数が激減しているものの、やはり最も影響力のあるメディアに間違いはありません。

しかし、テレビでは、あまり食に配慮しないコンテンツが多いように思います。いくら無料であるからといって10袋も持ち帰るのは、食味の観点に鑑みても、飲食店の立場に立ってみても、好ましいことであるとはあまり思えません。

テレビで堂々と放送されていれば、同じことをやっても問題ないと思う人が増える可能性もあります。ただ単に面白いからというだけで、食育にも飲食店のためにもならないことを放送するのは、どうなのでしょうか。

牛丼店は日本全国にあり、牛丼は日本人のソウルフードのひとつであるだけに、もう少し牛丼について深堀りしたコンテンツを制作してもらえることを願います。