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グルメの注目 食通でなくとも知っておきたい9つの話題 2019年

東龍グルメジャーナリスト
(ペイレスイメージズ/アフロ)

2019年グルメの注目

2019年も始まりました。

昨年始めには、解決に向けて少しでも前進できたらと考え、<食通であれば知っておくべき2018年の飲食店に関する5つの課題・問題>で飲食店に関連する5つの課題や問題を取り上げました。

ノーショーやドタキャン、食品ロス、和牛、食の評価、インフルエンサーにおける問題について言及し、1年を通して記事を書いてきましたが、反響を鑑みると少しずつ認識が広まってきたように感じます。

今年は昨年とは趣向を変えて、以下の通り、グルメの注目点を紹介します。

  • 美食
  • ニューオープン
  • トレンド

美食、ニューオープン、トレンドにおけるそれぞれの注目を、2018年の振り返りも含めてみていきましょう。

美食

グルメ=gourmet という言葉は、日本でもそのまま意味が通じるフランス語です。本来グルメは食通や美食家という意味ですが、おいしい料理や評価の高い料理を指すこともあり、広く使われています。

美食の注目どころを挙げていってみましょう。

ミシュランガイド

美食といえば、ミシュランガイドの星付きレストランを思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。ミシュランガイド(ギド・ミシュラン)は本国のフランスで1900年に出版された歴史も権威もあるレストランガイドです。フランスでも日本でも、料理人や食通が星の獲得や喪失、増加や減少について一喜一憂し、それによってレストランの売上も大きく変わるなど、大きな影響力を持っています。

2018年に発売された「ミシュランガイド東京 2019」はその前年度版「ミシュランガイド東京 2018」に比べて星の変動が大きかったといわれています。

全体の掲載店数は512から484に、ビブグルマンは278から254、一つ星は166から165、二つ星は56から52となっています。フランス料理でいえば、勢いのあった玄人好みのレストランが星を失っていたり、老舗の一軒家フレンチが星を減らしたりしました。

そういった状況で、朗報といえるのは「ロオジエ」が二つ星から三つ星へと返り咲いたこと、それによって三つ星が12から13へと増えたことでしょう。

「ロオジエ」エグゼクティブシェフを務めるオリヴィエ・シェニョン氏は物静かな料理人ですが、「お客さまにご満足いただけることだけを考えて邁進してきた結果、三つ星を獲得することができた。本当に幸せなことだ。改装休業後、リニューアルオープン5周年を迎えたこの年に、スタッフ全員のこれまでの努力が実った」と喜びを表現しています。

ミシュランガイドで落とした星を再び取り戻すことは、その歴史を見る限り非常に難しいことです。フランスでもかつては三つ星をずっと維持していたレストランが、今では一つ星を維持するのが精一杯ということも珍しくありません。

したがって、日本におけるグランメゾンのアイコンとなっている「ロオジエ」が改装休業後初めてとなる三つ星となり、「ミシュランガイド東京 2016」以来、三つ星が13店となったことは、日本の美食にとっては嬉しい材料なのです。発売当初から三つ星を獲得し続けている「カンテサンス」「ジョエル・ロブション」と合わせて、フランス料理の三つ星が3店となりました。

他にも注目したいフランス料理店があります。

それは、<逝去の報道で激震を与えた料理界の巨匠ジョエル・ロブション氏は何がすごいのか?>でもコメントを紹介した渡辺雄一郎氏がオーナーシェフを務める「ナベノ-イズム(Nabeno-Ism)」です。

エグゼクティブシェフとして「ジョエル・ロブション」を三つ星に導いてきた渡辺氏は、2016年7月7日に「ナベノ-イズム(Nabeno-Ism)」をオープンしてから、すぐに一つ星を獲得し、「ミシュランガイド東京 2019」では二つ星へと昇格しました。

渡辺氏は「フランス料理に携わる者にとってミシュランガイドは本当に特別な存在。フランス修行時代は毎日のように、ミシュランガイドで食べに行く店、働きたい店を探した。『ジョエル・ロブション』では9年間三つ星、『ナベノ-イズム』でも2年間一つ星、2019年版からは二つ星をいただけて本当に光栄であった。フランス料理と地域食文化の融合という新しい試みで世界基準であるミシュランガイドに掲載され、評価していただけたのは何よりも嬉しいことであり、そして自信になった」と噛みしめるように述べます。

他にも、「カンテサンス」オーナーシェフ岸田周三氏の薫陶を受けた深谷博輝氏の「アルゴリズム」、日本での修行経験がないという異色の経歴を持ち、食材やストーリーにこだわりを持つ大槻卓伺氏の「Takumi」が新しく一つ星を獲得し、フランス料理に新しい世代が現れているのは非常に期待が寄せられるところです。

ベストレストラン50

ミシュランガイドは長い歴史を誇るガイドブックですが、2002年から始まり、今最も勢いのあるアワードがあります。それは、<今最も信頼されている食のアワード「世界のベストレストラン50」を知る>でも紹介した「世界のベストレストラン50」および「アジアのベストレストラン50」です。

記事で詳しく説明しましたが、大きな特徴となっているのが、世界各地にいる審査員の投票によってベスト50のレストランが選出されることです。記事執筆時と現在とでは投票システムが少し変わっていますが、審査員が料理人、フードジャーナリスト、食通のトラベルジャーナリストによってバランスよく構成されているところや、毎年審査員が一定数入れ替わるところは全く変わりません。

一部の審査員によって全てが決定されるシステムとは異なり、「アジアのベストレストラン50」では318人、「世界のベストレストラン50」では1040人と非常に多くの審査員によって決められるところも、他にはない特徴です。

では、今年の見どころはどこでしょうか。

2013年から日本の評議委員長を務める中村孝則氏に尋ねると、2019年3月26日に香港・マカオで発表会が行われる「アジアのベストレストラン50」では「日本のレストランが初回2013年以来の1位になる可能性が高い。昨年2位の傳、3位のフロリレージュは大きなチャンス。4位バンコクのズーリング、5位シンガポールのオデットの追い上げも見もの」と、日本勢にチャンスがあると答えます。

2019年2月10日にシンガポールで発表会が行われる「世界のベストレストラン50」に関しては「昨年3位であったフランス・マントンのミラズールと昨年6位であったペルー・リマのセントラルに勢いがある」と、世界の美食に精通した中村氏ならではの注目レストランを挙げます。

「アジアのベストレストラン50」および「世界のベストレストラン50」は、ガストロノミーの潮流をどこよりも敏感に色濃く反映しているだけに、日本のレストランが美食の発展が著しいアジアで1位を獲得できるかどうか、目が離せません。

ル・テタンジェ国際料理賞コンクール

<32年振りの快挙なるか? 日本人料理人によるパリ・ファイナルへの挑戦>でも紹介したように、日本には大きなフランス料理のコンクールが3つあります。

それは、ル・テタンジェ国際料理賞コンクール、ボキューズ・ドール国際料理コンクール、エスコフィエ・フランス料理コンクールです。

先の記事では、浦和ロイヤルパインズホテル総料理長である竹下公平氏と同じく、エスコフィエ・フランス料理コンクールおよびル・テタンジェ国際料理賞コンクールの日本大会で優勝したホテル インターコンチネンタル 東京ベイの吉本憲司氏が、ル・テタンジェ国際料理賞コンクール決勝大会に挑む様子を紹介しました。残念ながら優勝とはなりませんでしたが、堂々の世界3位入賞を果たしています。

ル・テタンジェ国際料理賞コンクールは歴史ある国際的な大会であり、1984年に決勝大会で日本人として初めて優勝した堀田大氏以来、実に30年以上も日本人の優勝者は存在しませんでした。

しかし、昨年2018年11月19日にパリで行われた、第52回ル・テタンジェ国際料理賞コンクール決勝大会において、「ラトリエ ドゥ ジョエル・ロブション」でシェフを務める関谷健一朗氏が優勝したのです。

<逝去の報道で激震を与えた料理界の巨匠ジョエル・ロブション氏は何がすごいのか?>でも述べたように、関谷氏はフランス料理界の巨匠であるジョエル・ロブション氏の愛弟子であり、次世代のフランス料理会を担う料理人です。

優勝したことに関して関谷氏は「かつてジョエル・ロブション氏が優勝した歴史と権威のあるコンクールで良い成績を収めることができて、大変光栄。きっと天国のロブション氏も喜んでくれていると思う。この経験を生かし、今後も全てのお客様にご満足いただけるような料理を創り出していきたい」と述べています。

ロブション氏が亡くなった年に、そのフランス料理の真髄を継承した関谷氏が権威ある国際大会で優勝したことは、新たなガストロノミーの時代が幕を開けたと考えてよいのではないでしょうか。

ニューオープン

<相次いでリニューアルしている高級ホテルのレストランで注目しておくべき3つの特徴>で紹介したように、2018年にはホテルのレストランが相次いでリニューアルオープンしました。

2019年にオープンし、注目するべき施設を紹介しましょう。

東京會舘

東京會館は「世界に誇る施設ながら、誰でも気軽に利用できる、大勢の人々が集う社交場」を標榜し、1922年に開業した施設です。

結婚式場や宴会場としても有名ですが、1934年に日本初の鮮魚介料理店としてオープンし、「舌平目の洋酒蒸 ボンファム」などのスペシャリテで日本におけるフランス料理の黎明期をリードした「プルニエ」、ローストビーフやダブルコンソメといったシグネチャーディッシュを有する「ロッシニ」を始めとしたレストランも非常に評価が高いです。

この東京會舘は、建て直しのために2015年1月31日から休館していましたが、4年近くの歳月を経た2019年1月8日に「NEWCLASSICS.」=「新しくて伝統的」というコンセプトを掲げて開業します。

フランス料理「レストラン プルニエ」、グリルレストラン「ローストビーフ&グリル ロッシニ」、「日本料理 八千代」、オーセンティック バー「MAIN BAR」、メンバーシップクラブ「TOKYO KAIKAN UNION CLUB」、ペストリーショップ「SWEETS & GIFTS」といった施設に加えて、オールデイダイニング「ロッシニテラス」、鉄板焼「TOKYO KAIKAN 會」が新しくオープンします。

この料飲施設の中で特に注目したいのが「レストラン プルニエ」と「TOKYO KAIKAN 會」です。

東京會舘では伝統的なフランス料理の味が継承されていますが、その味をさらに革新的に強化していくために、松本浩之氏をシェフとして招聘しました。松本氏は25歳で渡仏して研鑽を積んでから帰国し、「レストラン・フウ」ではシェフを務めてミシュランガイド一つ星を獲得するなど、輝かしい経歴を誇る料理人です。

外部から実力ある料理人を招聘することは長い東京會舘の歴史の中でも稀有であることからも、東京會館がいかに「新しくて伝統的」というコンセプト通り、生まれ変わろうとしているかが分かります。

「TOKYO KAIKAN 會」は今回新しくオープンしますが、先の<相次いでリニューアルしている高級ホテルのレストランで注目しておくべき3つの特徴>でも述べたように、鉄板焼は訪日外国人に人気ということもあって、増えている業態です。

これまで鉄板焼という業態を有していなかっただけに、他のホテルの鉄板焼店で研鑽を積むなどし、料理人を育成してきました。ローストビーフのイメージも強い東京會舘は、同じく肉料理をメインとする鉄板焼と相性がよいのではないでしょうか。

伝統に彩られた「レストラン プルニエ」で松本氏がどのようなモダンフレンチを生み出すのか、新しい「TOKYO KAIKAN 會」でどの黒毛和牛がどのように捌かれていくのか、数日後のグランドオープンで明らかとなります。

ハレクラニ沖縄

日本人に人気の旅行先として台北やソウル、香港といった近場の地域が挙げられますが、数十年前から不動の人気を誇る地域としては、ハワイが挙げられるでしょう。

このハワイにおいて、評価の高いホテルといえば「天国にふさわしい館」を意味するハレクラニです。ハレクラニは1917年に創業した老舗ホテルであり、ワイキキのビーチ前という最高の場所に位置し、エレガントであたたかなサービスを提供し、高い評価を得ています。

ハレクラニはハワイのイメージがとても強いですが、2つ目のホテルとしてハレクラニ沖縄が2019年7月26日、沖縄県・恩納村にオープンします。

沖縄県・恩納村は国内屈指の美しいビーチを持つことで知られていますが、ハレクラニ沖縄は全長約1.7キロメートルにわたって海岸線に接し、360室の全てがオーシャンビュー。こういった高級リゾートならではの魅力も話題に上っていますが、実は料飲施設も非常に充実しているのです。

テラス席のあるオールデイダイニング、日本料理、ステーキ&ワインに加えて、リゾートホテルにしては珍しく、本格的なイノベーティブを提供するレストランまで擁しています。他にはバー、季節営業のバーベキュー、エンターテインメントエリア、プールバーといった施設もあります。

早くも世界中の美食家がイノベーティブレストランに関心を寄せていますが、その理由は、川手寛康氏がプロデュースするレストランだからです。

川手氏は「フロリレージュ」のオーナーシェフであり、ミシュランガイドで二つ星を獲得し、「アジアのベストレストラン50」では今年1位を獲得するかもしれないという、今最も輝いている料理人のうちの一人です。

その川手氏が沖縄を始めとした日本各地の食材のポテンシャルを引き出し、最先端のガストロノミーを提供するということであれば、旅行による宿泊だけではなく、食だけを目的としたゲストも訪れるでしょう。

一般的にリゾートホテルはロケーションやハードウェアは素晴らしいと称賛されながらも、食に関しては弱いというイメージを有しています。しかし、川手氏のイノベーティブレストランが耳目を集めることになれば、これまでのガストロノミーのシーンはまた新たな段階を迎えるのではないでしょうか。

開業までにまだ時間はあるだけに、まずは川手氏がどの料理人をイノベーティブレストランのシェフとして指名するのか、注視したいです。

The Okura Tokyo

今年2019年、東京にオープンする最も大きなホテルといえば、The Okura Tokyoが挙げられるのではないでしょうか。

ホテルオークラ東京の本館が2015年8月31日をもって建て替え工事のために閉館し、同年9月1日から別館で単館営業を始めましたが、本館が閉館する際には、国内外の著名人が閉館を惜しむ声明を発して話題となりました。

閉館から約4年後の2019年9月12日に、The Okura Heritage Wing(オークラ ヘリテージウイング)とThe Okura Prestige Tower(オークラ プレステージタワー)の2棟を擁するThe Okura Tokyoとして生まれ変わります。

The Okura Heritage Wingは17階建てで伝統美に彩られた静謐で落ち着いた空間となっており、The Okura Prestige Towerは41階建てでオークラ伝統の和のアクセントを取り込んだ最高品質の空間となっています。

食のオークラは名高い料飲施設を抱えることでも知られていますが、The Okura Tokyoは日本料理「山里」、鉄板焼「さざんか」、中国料理「桃花林」といった既存店に加えて、新しい業態・ブランドであるファインダイニングやオールデイダイニング「オーキッド」が新しく加わります。バーもこれまでと同様に充実しており、メインバー「オーキッドバー」、バーラウンジ「スターライト」、「バロンズ バー」を有します。

帝国ホテルの村上信夫氏(参考:村上信夫を知らずして食通を気取るな【グルメ偉人伝】)と共に日本のフランス料理の黎明期を牽引してきたホテルオークラ東京開業当時の料理長である小野正吉氏の味が継承された「ラ・ベル・エポック」がクローズし、その代わりにモダンなファインダイニングがオープンするということは、ホテルグルメの歴史として大きな節目となるでしょう。

これから各レストランのシェフが決まり、詳細が詰められていくところですが、今の段階でも料飲施設で注目するべきトピックスが2つあります。

1つ目は、1836年に設立し、1874年に初めてブリュット(辛口)を生み出した老舗のシャンパーニュメゾンであるポメリー(Pommery)との提携です。

ポメリーはThe Okura Tokyoに向けた2500本のシャンパーニュ「ポメリー ブリュット・ロワイヤル マグナム」専用の熟成セラーを開設し、2018年11月20日に除幕式を行いました。これほど大きなシャンパーニュメゾンが特定ホテルのためだけに対応することは驚きであり、これまでの信頼関係の深さが窺えることです。

ホテルオークラ東京は毎年ワインの試飲即売会である「マルシェ・デ・ヴァン」を開催するなどしてワインにとても力を入れており、バーも非常に充実しています。それだけに、The Okura Tokyoがオリジナルのシャンパーニュに力を入れることになったのは自然な流れです。日本は2017年にフランスからの輸出量および輸入金額が世界3位となりましたが、シャンパーニュ好きの日本人にとっては喜ばしいことではないでしょうか。

2つ目の話題は洋白のカトラリーです。

<マツコ・デラックス氏がカフェで注文しない客を「もう終わりだこの国」と批判したことは正しいか?>などでよく述べていますが、レストランのコストは料理だけに掛かっているわけではありません。

料理がより映えるようにするためのプレートや料理に直接触れるナイフやフォークといったカトラリーにもコストが掛かっているのです。食材に比べて費用がかかっていることが分かりにくいだけに、どれだけテーブルウェアにお金を掛けているかは、一流レストランであるかどうかを判別するための重要な材料となります。

ホテルオークラ東京には、ナイフやフォークといったカトラリー、袋物と呼ばれるスープチューリンやコーヒーポット、パーティーや結婚式などの宴席に華やぎを添えるジャーマンプラター、飾台などの大型銀器まで、約500種類ものテーブルウェアや什器が存在しています。

ホテルオークラが開業した1962年当時、既にメッキのグレードにも明確なJIS規格(日本工業規格)が定められていましたが、オークラスペックと呼ばれるJIS規格を凌駕する規格がホテルオークラで採用されていました。

特にカトラリーは、硬貨や装飾、金管楽器にも使用される「洋白(ニッケルシルバー)」と呼ばれる厚手の合金で作られており、銀メッキが施され、表面につや消し加工が行われています。金属洋食器職人から「地金が厚いこんな素材を使っているホテルはない、メンテナンスさえしっかり行えばあと50年以上も使い続けることが可能」と保証されたほどです。

メンテナンスにとても手間は掛かりますが、現在は開業に向けて、約210種4万点の化粧直しが全て手作業によって行われています。

洋白のカトラリーは料飲施設の随所で見掛けられるはずなので、訪れた際には料理の味と同様に、磨き上げられたカトラリーの見た目や使い心地を試してみるとよいでしょう。

トレンド

グルメでは、そのトレンドについて多大な関心が寄せられます。

2018年には原宿を席巻したレインボーフードとも虹色フードとも呼ばれる、カラフルなフードが流行しました。カラフルに彩られたサンドウィッチ、チーズケーキ、ピッツァ、綿あめといった食べ物が、SNSにたくさん投稿されたり、テレビによく露出したりしたので、覚えている人も多いでしょう。

年間を通しては、ぐるなびが毎年発表している「今年の一皿」にサバが選出されたことが記憶に新しいです。2018年は災害が多かった年であっただけに、日本人が古くから食べ親しんでいるサバを使った缶詰の有り難みが再認識されたり、サバを使ったレシピがたくさん作成されたり閲覧されたりし、サバは非常に人気がありました。

では、2019年ではどういったトレンドが予測できるでしょうか。

ブラジル

ブラジルのパティシエやスイーツに注目しています。

<サッカーだけではない? SNS世界一のカリスマパティシエによるブラジルのスイーツが日本初上陸の背景>では、シュラスコが日本に根付いたことや帝国ホテル 東京が提供を始めたブラジル風朝食「ヘルシーエナジーブレックファスト」が人気を博していることから、次の注目はブラジルのカリスマパティシエであるディエゴ・ロザーノ氏やブラジルのスイーツではないかと述べました。

ロザーノ氏は今年から本格的に日本で活動を始め、2019年1月30日から2月14日にかけて松屋銀座でオリジナルのバレンタイン商品を販売し、2月7日から14日までは自身が店頭にも立ちます。

ブラジルのアマゾンから取り寄せられた神のフルーツと呼ばれる「クプアス」やスーパーフルーツとして定着した「アサイー」、さらには独特の風味のある「ブラジリアンナッツ」やブラジルの蒸留酒「カシャーサ」など、ブラジル食材を巧みに西洋菓子へ融合させています。

和菓子にも大変関心を寄せており、伝統和菓子の老舗「青柳正家」の須永友和氏に自ら弟子入りして技術を学んだほどです。須永氏や同世代の和菓子職人と共に、2019年にブラジルを訪れる予定なので、ブラジルの食文化を取り入れた和菓子が日本へと逆輸入されることも期待されます。

ロザーノ氏は、日本人歌手TABARU氏が歌う「Beautiful World」をイメージしたスイーツも手掛けました。音楽とスイーツが融合したイベント「Music Meets Sweets」を開催し、動画が1ヶ月で30万回再生されるなど、反響も大きかったのです。

実は「Beautiful World」を作詞作曲したのが、様々な有名歌手の歌を手掛け、日系ブラジル人を父に持つブラジル出身のカルロス・K氏でした。共にブラジルにゆかりをもち、既に日本で活躍しているカルロス・K氏と、これから日本で活躍しようとしているロザーノ氏がコラボレーションを行ったことは興味深いところです。

また、ブラジルで知らぬ者はいないという漫画家マウリシオ・デ・ソウザ氏が、在日ブラジル人が日本で暮らすための助けとなり、ロザーノ氏も登場する漫画を手掛ける予定であるなど、ロザーノ氏に関する話題は尽きません。

2019年は、ロザーノ氏自身はもちろん、ブラジルの食材やスイーツが注目される年となるのではないでしょうか。

ルビーチョコレート

次はルビーチョコレートです。

<ビターチョコレートとミルクチョコレートの違いは? ルビーチョコレートが第4のチョコレートになる可能性>では、ネスレの「キットカット ショコラトリー サブリム ルビー」、ローソンの「プレミアム ルビーチョコレートのロールケーキ」、さらにはANAインターコンチネンタルホテル東京で行われた大きなプロモーション「チョコレート・センセーション」を取り上げました。

昨年はルビーチョコレートがようやく日本でも食べられるようになってきたところでしたが、今年からはルビーチョコレートを使った商品がさらに多く出揃うのです。

ダイヤモンド型のショコラでお馴染みのベルギーの高級老舗であるデルレイ(DelRey)がバレンタインデーの商品にルビーチョコレートのアソートを販売します。

デルレイは今年で創業70周年、日本に上陸してからも15周年という節目を迎えます。今でこそ、海外の多くの有名なスイーツブランドが上陸していますが、15年前から日本に進出しているので、他のブランドと比べてもデルレイの知名度は高いでしょう。このデルレイが大々的に扱うことによって、より多くの日本人にルビーチョコレートのブランドと認知の向上が図れるのではないでしょうか。

バレンタインデー向けの商品でルビーチョコレートを提供するところは、他にもあります。

先に紹介した東京會舘では、リニューアルオープンしてから初めて迎えるバレンタイデー用にルビーチョコレートを贅沢に使用したショコラを、ザ・キャピトルホテル 東急ではルビーチョコレートとライチのムースを合わせたハート型の「クール ド ルージュ」を、ホテル椿山荘東京ではルビーチョコレートを使用した「ルビーショコラロール」を販売します。

デザートブッフェの先駆けであるヒルトン東京「マーブルラウンジ」では、極めて人気が高いストロベリーデザートブッフェ「ストロベリーCATSコレクション」で、ルビーチョコレートを使ったスイーツを提供しています。

グランド ハイアット 東京「フレンチ キッチン」で行われるストロベリーデザートブッフェでも、ルビーチョコレートが流れる「ルビーファウンテン」が登場するなど、ルビーチョコレートはデザートブッフェでも注目の食材です。

ルビーチョコレートが持つ特徴的な酸味と鮮やかな赤が、今年ますます多くの人に記憶されることになるのではないでしょうか。

プラスティック製ストロー

最後は、プラスティック製ストローです。

プラスティック製ストローが排除されるトレンドになっています。

プラスティックごみによる深刻な海洋汚染が進んでいく中で、プラスティック製ストローは細長いためにゴミ処理システムをすり抜けてしまってリサイクルが難しいこと、さらには、海亀の鼻にプラスティック製ストローが突き刺さった映像が衝撃的であったことによって、消費者が意識を変え、企業がイメージアップを図ったりするために、プラスティック製ストローが排除されていく傾向にあるのです。

多くの方が知っているのは、日本にも広く展開しているアメリカのコーヒーチェーン大手スターバックスが2018年7月9日に発表した声明ではないでしょうか。世界中の店舗約2万8000店で使われているプラスティック製ストロー約10億本を2020年までに全廃すると発表したのです。

世界的なホテルでも大きな動きがありました。

アメリカのヒルトンは2018年5月23日に世界650のホテルでプラスティック製ストローを年内に全廃すると発表し、同じくアメリカのマリオット・インターナショナルは2018年7月19日に世界6500カ所以上のグループホテルで2019年7月までにプラスティック製ストローを廃止すると周知しました。

さらには、イギリスのインターコンチネンタルホテルズグループやハイアット ホテルズ コーポレーションもプラスティック製ストローの全廃を発表しています。

こういった環境保護の流れは、<フカヒレは何のサメのどの部位か? フカヒレの豪華フルコースと現状>でも触れたサメ保護と同じような流れとなるでしょう。

多くのホテルでプラスティック製ストローの代わりに紙製ストローを提供するようになっていますが、ここにきて、また新しい取り組みが注目されています。

ザ・キャピトルホテル 東急では、紙ではなく木を用いた木製ストローを2019年1月16日から提供するのです。

2018年7月に発生した西日本豪雨では、各地で大規模な土砂災害が起き、甚大な被害がもたらされましたが、この主因のひとつとして、間伐など適時適切な森林管理が行われていないことが挙げられています。

間伐材は細くて未成熟なので主伐材よりも用途が限られること、より安価な輸入木材が多く出回っていることから、間伐材の需要は激減しています。しかし、木製ストローは間伐材を利用するので、これによって間伐を行うことができ、森林環境によい影響を与えられるのです。

コストに関しては、紙製ストローはプラスティック製ストローの3倍、木製ストローはプラスティック製ストローの10倍もかかるとされているだけに、ザ・キャピトルホテル 東急による自然環境の保全意識は非常に真摯であるといえます。

プラスティック製ストローは安価で扱い易いですが、世界的なチェーン店やホテルグループがその叡智をもって本気で取り組めば、プラスティック製ストローとすぐ同じようにとはいかないまでも、それに代わるストローが生まれるのではないでしょうか。

食の注目

2019年のグルメの注目を、美食、ニューオープン、トレンドに分類して紹介してきました。

美食では、星の入れ替わりが多かったフランス料理で世代交代が感じられたミシュランガイド、日本のレストランが1位を獲得するかもしれない「アジアのベストラン50」、30年以上振りに日本の料理人が優勝したル・テタンジェ国際料理賞コンクールを取り上げました。

ニューオープンでは、もうすぐグランドオープンする伝統の東京會舘、美食のリゾートホテルとして評価されるであろうハレクラニ沖縄、世界中から関心を寄せられている御三家ホテルのひとつであるThe Okura Tokyoと、心躍る施設を紹介しています。

トレンドでは、機運が高まってきたブラジルのカリスマパティシエやスイーツ、様々な商品が販売されるルビーチョコレート、海洋保全によるプラスティック製ストロー全廃について説明しました。

みなさんがどこかの飲食店で食事したり、ショップで購入したりした時に、ここで紹介したことに関心を寄せてもらった結果、食に対する理解が深まり、より少しでもおいしく感じて食べていただけるのであれば、私としても嬉しい気持ちで2019年を始められそうです。

グルメジャーナリスト

1976年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。ファインダイニングやホテルグルメを中心に、料理とスイーツ、お酒をこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口で分かりやすい記事を執筆。審査員や講演、プロデュースやコンサルタントも多数。

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