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ビターチョコレートとミルクチョコレートの違いは? ルビーチョコレートが第4のチョコレートになる可能性

東龍グルメジャーナリスト
シャンパン・バー@ANAインターコンチネンタルホテル東京/著者撮影

日本人はチョコレートが好き

チョコレートは好きですか。

マイボイスコムのアンケートによれば、<チョコレート菓子を週1回以上食べる人は4割強。食べる場面は「間食・おやつ」74.5%、「甘いものが欲しいとき」「疲れたとき」が各3割」>となっており、2017年は2011年や2014年と比べて、「ほぼ毎日」「週4~5回」の割合が増えており、チョコレートのファンが増えている傾向にあります。

<和牛オリンピックで日本一になった黒毛和牛をいえますか?>でも述べたように、今や神戸ビーフは世界で確たるブランドを確立していますが、その生産地である日本人が和牛のことをどれだけ知っているでしょうか。

これと同じように、チョコレートが好きな日本人は多いですが、チョコレートの基本的なことを知っている日本人は少ないかと思います。

チョコレート菓子

冒頭で単にチョコレートと述べましたが、そもそもチョコレートとは何でしょうか。

チョコレート類の表示に関する公正競争規約に詳しく定められていますが、規約なので細かくて少し分かりにくいです。グリコの公式サイトには、以下の通り、分かり易く掲載されています。

  • チョコレート

カカオ分が35%以上、あるいはカカオ分21%以上でカカオ分と乳固形分の合計が35%以上のチョコレート生地を全重量の60%以上使用したもののことです。

  • 準チョコレート

カカオ分が15%以上、あるいはカカオ分7%以上かつ乳固形分12.5%以上の準チョコレート生地を全重量の60%以上使用したもののことです。

  • チョコレート菓子

チョコレート生地が全重量の60%未満で、ナッツや、ビスケットなど他の食材と組み合わせたチョコレート加工品のことです。

  • 準チョコレート菓子

準チョコレート生地が全重量の60%未満で、ナッツや、ビスケットなど他の食材と組み合わせたチョコレート加工品のことです。

出典:グリコ

チョコレート製品の分類は以上のようにされています。

カカオ分などの分量によってチョコレートや準チョコレートに区分されています。さらには、チョコレート生地が60%以上使われていればチョコレート、使われていなければチョコレート菓子、準チョコレート生地が60%使われていれば準チョコレート、使われていなければ準チョコレート菓子となっているのです。

日本チョコレート・ココア協会にも記載されていますが、この区分でいうところのチョコレートとは、いわゆるプレーンの板チョコレートのような製品であると考えてよいでしょう。

チョコレートの種類

では、同じチョコレートでも、黒いチョコレートや白いチョコレートがありますが、どういった違いがあるのでしょうか。

日本チョコレート・ココア協会味覚ステーションchocolatier KAITOを参考にすると以下のように分類されます。

  • ビターチョコレート

カカオマス+カカオバター+砂糖

  • ミルクチョコレート

カカオマス+カカオバター+砂糖+ミルク

  • ホワイトチョコレート

カカオバター+砂糖+ミルク

ビターチョコレートはダークチョコレートやブラックチョコレートと呼ばれることもあり、ビターチョコレートの中でも砂糖が少ないものはスイートチョコレートと称されることがあります。

またカカオ分が何パーセントと表現されることがありますが、これはカカオマスとカカオバターを合計した分量がどれくらいの割合になっているかということです。

一般的にカカオ分が高いチョコレートが高級であったり、本格的であったりするとみなされているのは、カカオのエッセンスが非常に濃いからなのです。

第4のチョコレート

ビターチョコレート、ミルクチョコレート、ホワイトチョコレートと3種類のチョコレートがありますが、ここにきて約80年振りに新しく、第4のチョコレートが現れたと話題になっています。

それは、ピンク色をしたルビーチョコレートです。

着色料やフルーツのフレーバーを全く使用していないにも関わらず、鮮やかなピンク色をしており、目を引きます。

スイスのチューリッヒに本社を置き、高品質のカカオとチョコレート製品を開発するバリー・カレボー(Barry Callebaut)が、約10年にもわたる研究期間を経て、ルビーカカオからルビーチョコレートを作り出しました。ベリーのようなフルーティーな酸味が特徴となっており、明らかに他の3種類のチョコレートとは異なっています。

バリー・カレボーがルビーチョコレートについて発表したのは2017年9月でしたが、ここにきて、ルビーチョコレートを使ったスイーツが盛り上がりをみせているのです。

キットカット ショコラトリー サブリム ルビー

ネスレ提供
ネスレ提供

最初にルビーチョコレートを使った製品を発売したのがネスレでした。

2018年1月18日に世界で初めてとなるルビーチョコレートを使った製品「キットカット ショコラトリー サブリム ルビー」を発表し、1月19日から期間限定かつ数量限定で販売しました。反響を受けて3月21日からは定番商品となっています。

日本を代表するパティシエ・ショコラティエである「ル パティシエ タカギ」「ル ショコラティエ タカギ」のオーナーシェフである高木康政氏が全面監修していることからも、ルビーチョコレートに対する力の入れ方が分かるでしょう。

ルビーチョコレートの発表から4ヶ月もの時を経てようやく発売された製品とあって、日経新聞朝日新聞でも取り上げられるなどして大きな話題を呼びました。

しかし、この後しばらくの間は、ルビーチョコレートを使った他の製品は発売されていませんでした。

ローソンからも発売

ローソン提供
ローソン提供

次はどこからどのようなルビーチョコレートを使った製品が発売されるのかと思っていたところ、意外なところから新製品が販売されました。

コンビニエンスストアのローソンが、2018年9月25日に「プレミアム ルビーチョコレートのロールケーキ」を発売したのです。ルビーチョコレートはスポンジ生地と巻かれたクリームに使われており、きれいな色合いに仕上がっています。

これに加えて、2018年11月にはルビーチョコレートを使用したショートケーキを、2018年12月にはルビーチョコレートを使ったクリスマスケーキを発売する予定であり、ルビーチョコレートを大きな目玉にしようとしています。

ローソンは競争が激しいコンビニのスイーツにおいて、ルビーチョコレートで差別化を図ろうとしているのです。

チョコレート・センセーション

アトリウムラウンジ@ANAインターコンチネンタルホテル東京/ホテル提供
アトリウムラウンジ@ANAインターコンチネンタルホテル東京/ホテル提供

ローソンがルビーチョコレートを使った商品を発売して、多くの消費者にルビーチョコレートが手軽に食べられるようになった一方で、ルビーチョコレートで大きなプロモーションを行う高級ホテルも現れました。

それは、ANAインターコンチネンタルホテル東京です。

2018年10月1日から12月26日にかけて、ホテル全館をあげて総重量4500キログラム、220種類のチョコレートメニューや商品を提供する「チョコレート・センセーション」を開催しています。その中心に据えられているのが、ルビーチョコレートなのです。

多くの料飲施設でフェアを開催

シャンパン・バー@ANAインターコンチネンタルホテル東京/著者撮影
シャンパン・バー@ANAインターコンチネンタルホテル東京/著者撮影

それぞれの料飲施設で行われているフェアは以下の通りです。

  • アトリウムラウンジ

「ルビーチョコレート・アフタヌーンティー」

スイーツメニューすべてにルビーチョコレートを使用した世界初の「ルビーチョコレート・アフタヌーンティー」を提供

  • シャンパン・バー

「チョコレート・デザートブッフェ」

ルビーチョコレートをはじめ、各種チョコレートを用いた彩り豊かなデザート、セイボリーやサンドウィッチ類などの約50種類のアイテムを好きなだけ楽しめるスイーツブッフェ

  • ピエール・ガニェール パン・エ・ガトー

「ルビーチョコレート・パティスリー」

ルビーチョコレートをはじめ、各種チョコレートを使用した様々なパンやケーキ、マカロン、クッキーなど、テイクアウト商品50種類以上を用意

  • ザ・ステーキハウス

「ザ・ステーキハウス チョコレート・センセーション」

厳選したチョコレートを用いたスペシャルメニューを提供

  • MIXX バー&ラウンジ

「ルビーチョコレート シャンパンペアリング」

ソムリエが提案する、ルビーチョコレートとシャンパンのセット

ANAインターコンチネンタルホテル東京には、ミシュランガイドで2つ星を獲得する「ピエール・ガニェール」(参考:一流ホテルの星付きフレンチで知る、今だけの高級食材「黒トリュフ」)から中国料理「花梨」(参考:2018年初夏に食べておきたいホテル中国料理における3つのキーワード)、日本料理「雲海」(参考:「嬉野茶時」「パリで活躍する日本人シェフ」「こぶ黒」。日本の食文化を育む3ホテルのフェア)や鉄板焼「赤坂」(参考:夏と鮎と鉄板焼。日本人であれば体験してもらいたい3つの旬味)、さらにはアメリカンスタイルの「ザ・ステーキハウス」やブッフェが人気の「カスケイドカフェ」、オーセンティックなメインバー「ダビンチ」からシャンパーニュに特化した「シャンパン・バー」などを有しており、非常に料飲施設が充実しています。

ピエール・ガニェール@ANAインターコンチネンタルホテル東京/ホテル提供
ピエール・ガニェール@ANAインターコンチネンタルホテル東京/ホテル提供

様々な種類の料飲施設があるので、同じルビーチョコレートが使われているといっても単調ではありません。プティガトーからアシェットデセール、アフタヌーンティーやデザートブッフェ、さらにはルビーチョコレートに合うシャンパーニュなど、ルビーチョコレートの魅力がふんだんに引き出されているといえるでしょう。

11月1日からは「チョコレートアート」も行われ、スイーツを専門とした写真家である石丸直人氏の写真を展示したり、徳永純司氏(参考:世界最高峰パティシエ徳永純司氏が移籍、その裏側を読み解く)を始めとした実力派のパティシエやショコラティエによるチョコレートオブジェを飾ったりする予定です。

ルビーチョコレートは第4のチョコレートとして定着するのか

ルビーチョコレートがだんだんと広まっていく中で、世界のトップパティシエたちに愛されるフランスのヴァローナが開発し、2013年に日本へ上陸したブロンドチョコレートの存在が気になります。

日経トレンディネットの記事でも詳しく掲載されていますが、ブロンドチョコレートが新しいチョコレートであると消費者にあまり認識されていない現状を踏まえると、ルビーチョコレートはどうなるのでしょうか。

ルビーチョコレートはブロンドチョコレートに比べて、色合いや味について、大きな利点があると私は考えています。

ブロンドチョコレートはキャラメルのような色合いをしており、多くの人がイメージするチョコレートの色に近いです。

一方ルビーチョコレートは色を付けているわけではないのにピンク色をしており、チョコレートのイメージとかけ離れています。そのため、これがチョコレートなのかという意外性があり、この意外性があるからこそ、「新しいチョコレート」「第4のチョコレート」であると認識されるのではないでしょうか。

食味に関しては、適度な酸味があるので甘味とのメリハリがあり、さらにはベリー系の酸味との相性も抜群によいので、割と多くの素材と合わせ易いように思えます。

こういった観点からすればルビーチョコレートはブロンドチョコレートよりも、新しい第4のチョコレートとして定着する可能性は高いと感じます。

プロからの視点

チョコレートを扱うプロの作り手は、ルビーチョコレートをどのように捉えているのでしょうか。

最高級のガトーショコラで数々のアワードを受賞し、コンビニエンスストアとのコラボレーションも手掛けるケンズカフェ東京のオーナーシェフ氏家健治氏は「チョコレート専門店からすると、先行して商品を発売されると使いづらくなった感はある。一社提供商品なので、現在のところ、価格面も含め、大々的に広まる感じではない」と冷静に分析します。

しなしながらも「可憐な色合いや繊細な風味が魅力的で、ひとつのジャンルとして認められる可能性がある」と他のチョコレートにはない点を挙げます。

さらには「ショコラトリー以上にフランス料理のデセールとしても活路がありそうだ」と述べるように、ルビーチョコレートには広い活路が見い出せそうです。

ルビーチョコレートの今後

チョコレートは紀元前から歴史があり、神への供物から薬や交易品、さらには貨幣として機能していたことから、とても貴重であったことが分かります。

ルビーはダイヤモンドに次いで硬度が高く、大きな石の産出量も少ないことから、カラーストーンのなかで最もカラット単価が高いとされています。

このルビーを冠したルビーチョコレートは、ルビーの希少性とチョコレートの神秘性が合わさったチョコレートであるといえるでしょう。

新たな食体験を生み出そうとする作り手や美食を求める食通にはもちろん、話題性やキーワードを欲するメディアや見た目や自分が映えることを重視するインフルエンサーには、まさにうってつけの新しい食べ物といえるのではないでしょうか。

ルビーチョコレートが第4のチョコレートになるかどうかは、ブームが過ぎ去った後も、消費者に新しいチョコレートであると認識されることが重要であり、そのためにもルビーチョコレートでしか表現できないようなチョコレート製品やデセールを生み出していく必要があります。

グルメジャーナリスト

1976年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。ファインダイニングやホテルグルメを中心に、料理とスイーツ、お酒をこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口で分かりやすい記事を執筆。審査員や講演、プロデュースやコンサルタントも多数。

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