フカヒレは何のサメのどの部位か? フカヒレの豪華フルコースと現状

フカヒレの姿煮 トリュフソース@ロイヤルパークホテル/著者撮影

中国料理の高級食材

中国料理の高級食材といえば、何を思い浮かべるでしょうか。

アワビ、ナマコ、ツバメの巣、伊勢海老、熊の手、スッポンなど色々と挙げられます。しかし、日本人によく知られ、食べられており、人気が高いものといえばフカヒレではないでしょうか。

ちなみに、中国料理の三大珍味としてよく紹介されるのもツバメの巣、アワビに加えて、フカヒレです。

サメやヒレの種類

フカヒレはサメのヒレを乾燥させたものです。中国料理では乾燥させたフカヒレを戻して調理し、形を保ったもの(排翅/パイツー)は姿煮にし、ほぐされたもの(散翅/サンツー)はスープや点心に加えて食べます。

フカヒレは中国で1600年あたりから食べ始められていたといわれており、日本では宮城県や千葉県でとれたフカヒレを中国に輸出しています。

サメは400種類くらいいるといわれていますが、フカヒレに使われるサメは限られています。最高級とされ、絶滅危惧種に指定されいてるジンベイザメから、日本ではポピュラーなヨシキリザメやモウカザメ、アオザメのヒレが食されています。

ヒレは、そのままの形で使われることが多い立派な尾びれや背びれの他に、ほぐした状態で使われることが多い胸びれ、腹びれ、尻びれが用いられます。

フィニングが問題

ヒレの割合はサメの体のうち1%にも満たず、希少部位であることが高級食材となっている大きな理由です。

フカヒレは非常に人気が高いですが、過度な漁によって世界的にサメの個体数が激減していると指摘されたり、ヒレだけを採取して殺してしまう「フィニング」が残酷であると糾弾されたりした結果、フカヒレの売買と所持を禁止する法律が、2010年7月にハワイで、2011年10月にカリフォルニアで成立し、さらにはカナダのトロントも追随しました。

ホテルでも禁止

国際世論に敏感なグローバルなホテルも反応し、2012年からザ・ペニンシュラやシャングリ・ラといった香港系のホテルグループが、2014年からはヒルトングループもフカヒレの使用を中止しました。

また中国当局は公務員の贅沢を取り締まる一貫として、公式晩餐会などでフカヒレやツバメの巣といった高級食材を使った料理を出すことを禁止する施策もとっています。

日本に関しては、サメ類の保護・管理のための日本の国内行動計画にも記載されているように、陸揚げするサメを限定したり、陸揚げ量を制限したりして、サメの保護を行っています。

フィニングは禁止されているので、ヒレを採るためだけにサメを殺して捨ててしまうのではなく、身を練り物にしたり、皮を調度品に加工したりと、ヒレ以外の部分も無駄なく使っているのです。

日本系ホテルはフカヒレ料理を提供

日本ではしっかりとサメのことを配慮した上で、フカヒレを採取しているので、多くの日本系ホテルではフカヒレを堪能できます。

例えば、ホテルオークラ東京「桃花林」ではフカヒレを使った料理だけでも、姿煮やスープなど約10種類もあり、その人気の高さが窺えます。

ホテルニューオータニ「大観苑」で提供されている「ふかひれの姿煮」は天日干しの上質なものにこだわっていたり、ザ・キャピトル東急ホテル「星ヶ岡」では白湯で時間をかけて煮込んだ「ふかひれの姿煮」が伝統料理となっていたりするのです。

多くの有名中国料理人を輩出している京王プラザホテル「南園」や、ザ・プリンス パークタワー東京「陽明殿」を始めとする多くのプリンスホテルの中国料理でも、フカヒレ料理は提供されています。

フカヒレをテーマとしたコース

このように日本系ホテルの中国料理ではフカヒレに力が入れられていますが、その中でも今、とりわけフカヒレに注力しているところががあります。

それは、ロイヤルパークホテルの「桂花苑」です。

2018年9月1日から10月31日にかけて「~桂花苑自慢の粋品~ 有本料理長渾身のフカヒレ料理」フェアを開催しており、中国料理「桂花苑」料理長である有本大作氏が渾身の力を奮って、フカヒレをテーマとしたコース料理を作り上げています。

コース内容

フカヒレ入り 前菜盛合せ/著者撮影
フカヒレ入り 前菜盛合せ/著者撮影

コース内容は以下の通りです。

  • フカヒレ入り 前菜盛合せ
  • フカヒレの姿煮 トリュフソース または 三種フカヒレの食べ比べ(吉切鮫、毛鹿鮫、青鮫)
  • 大海老と帆立貝 銀杏の炒め
  • フカヒレ入り ショーロンポー
  • 和牛と栗の黒酢炒め
  • フカヒレの姿煮 あんかけ炒飯
  • ココナツプリン ザクロソース

前菜と点心にほぐしたフカヒレが用いられており、最後のご飯物にはフカヒレの姿煮が使われています。フカヒレが使える料理には全てフカヒレを使っているといってもよいでしょう。

特に注目したいのはやはり、3種類ものサメのフカヒレを食べ比べできるメニューです。何種類かのサメのフカヒレを食べたことがある人は多いと思いますが、同時に食べ比べする経験をしたことがある人は、美食家の中でもそういないのではないでしょうか。

料理の詳細

三種フカヒレの食べ比べ(吉切鮫、毛鹿鮫、青鮫)/著者撮影
三種フカヒレの食べ比べ(吉切鮫、毛鹿鮫、青鮫)/著者撮影

フカヒレが使われている料理の詳細は次の通りです。

「フカヒレ入り 前菜盛合せ」は6種類が盛り合わされた前菜で、フカヒレは煮凝りに使われています。フカヒレはゼラチン質なので、煮凝りの食感との相性もよいです。

「フカヒレの姿煮 トリュフソース」はヨシキリザメの尾びれの姿煮。トリュフソースを合わせたのも新しい試みですが、かためのメレンゲにスライスしたトリュフを立てたプレゼンテーションも目を引きます。

「三種フカヒレの食べ比べ(吉切鮫、毛鹿鮫、青鮫)」はヨシキリザメ、モウカザメ、アオザメの尾びれの食べ比べです。オアザメはトリュフソースで、ヨシキリザメは蟹の卵のソースで、モウカザメは醤油のソースと、それぞれのフカヒレの質に最適なソースを考えて合わせています。

フカヒレ入り ショーロンポー/著者撮影
フカヒレ入り ショーロンポー/著者撮影

「フカヒレ入り ショーロンポー」は小籠包にフカヒレが加えられた点心で、最もオーソドックスな一品ではないでしょうか。しかし実は普通の小籠包とは異なる点があります。それは、食用のスポイトが挿してあり、その中に、食味で定評のある横井醸造工業の真黒酢が入れられていることです。お酢を好みの分量だけ手軽に加えられます。フランス菓子のババ・オ・ラムでラムを含んだ食用スポイトがババに挿さっていることはありますが、小籠包ではなかなか見掛けません。

「フカヒレの姿煮 あんかけ炒飯」は、ヨシキリザメの胸びれを使った贅沢なあんかけ炒飯。中国料理のコースでは、最後に麺やご飯ものが提供されますが、シンプルなものがほとんどです。ご飯ものにまでフカヒレが使われているのは贅沢な体験でしょう。

背景

フカヒレの姿煮 あんかけ炒飯/著者撮影
フカヒレの姿煮 あんかけ炒飯/著者撮影

ここまで紹介したようにフカヒレ尽くしのコースですが、どのような経緯で行われるようになったのでしょうか。

有本氏は「フカヒレは中国料理の高級食材として人気が高い。ヒレの部位を食べ比べるフェアは多いが、サメの種類を食べ比べるフェアはあまりなかった。様々なサメのフカヒレを体験いただける機会を提案できないかと考えた」ときっかけを述べます。

こだわりとしては「サメを保護する観点から、フィニングしていないとしっかり証明されたフカヒレだけを使っている」ことを真っ先に挙げ、他にも「フカヒレの食べ比べでは当初、全て同じ味付けにしていた。しかし、それでは面白味がないし、サメによってフカヒレの特徴も異なる。そのため、試作を重ねて最適なソースを考案したので、是非味わっていただきたい」と自信を持ちます。

反応を尋ねると「ホテルのゲストは舌が肥えており、本物の味をよくご存知。そのため、値が張っても妥協せずに一番おいしい部分を使っている。その甲斐もあって、非常に満足していただいている」と回答します。

今後に関しては「初の試みであったが好評なので、反響を踏まえて今後も展開していきたい」と前向きに捉えます。

日本とゆかりの深いフカヒレ

世界三大スープとして、フランスのブイヤベース、ロシアのボルシチ、タイのトムヤムクンがよく挙げられますが、必ず挙げられるというわけではありません。しかし、中国のフカヒレスープは、ほぼ必ず世界三大スープのひとつとして挙げられるので、世界的にみても誉れ高いスープであるといえるでしょう。

日本のアワビ、ナマコ、フカヒレは高品質であるからと中国へ輸出されており、江戸時代には金銀銅を獲得できる貴重な海産物でした。俵に詰めて輸出されていましたが、他の輸出物と区別して「俵物三品」と呼ばれていたことからも、この3品の重要性が想像できます。

フカヒレは確かに中国料理の食材ですが、日本にもゆかりの深い海産物です。世界的にフカヒレ禁止の流れはあるものの、サメの保護をしっかりと行っている日本においては、その高品質なフカヒレを味わえる機会が必要以上に失われないことを願います。