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ある1つのキーワードで語る一流ホテルのクリスマスケーキ15品2018年

東龍グルメジャーナリスト
グランド ハイアット 東京/著者撮影

年末の大きな商戦

2018年も師走に入り、残すところ1ヶ月を切りました。日本における年末年始の大きな商戦は、ハロウィーンが終わればクリスマス、そして年を越して、おせち料理という流れになっています。

その中でも特に大きいのはクリスマス商戦でしょう。クリスマスプレゼントやクリスマスケーキなどの物販はもちろん、特別な食事ということでレストランも賑わいます。

昨年は<ある2つのキーワードで語る一流ホテルのクリスマススイーツ2017年>でホテルのクリスマスケーキを紹介しましたが、引き続き今年も一流ホテルのクリスマスケーキに注目したいです。

ひとつのキーワード

今年は昨年とは異なり、あるひとつのキーワードをもとにして、一流ホテルのクリスマスケーキを紹介していきましょう。

  • ハイアット リージェンシー 東京
  • パレスホテル東京
  • ザ・キャピトルホテル 東急
  • ホテル インターコンチネンタル 東京ベイ
  • マンダリン オリエンタル 東京
  • ザ・ペニンシュラ東京
  • 帝国ホテル東京
  • ザ・リッツ・カールトン東京
  • アンダーズ 東京
  • グランド ハイアット 東京
  • ウェスティンホテル東京
  • パーク ハイアット 東京
  • プリンスホテル

そのクリスマスケーキに関するキーワードとは「原点」です。

ここ数年におけるホテルのクリスマスケーキは大型化や高価格化が進んでいきましたが、ここ1、2年はそこまで大きかったり、高価だったりするものが少なくなってきました。

とにかく目立てばよいのではなく、心の込もったクリスマスケーキを届けているように見掛けられます。そこで、それぞれの一流ホテルにおいて本質をなす「原点」からクリスマスケーキを紹介していきたいと思います。

ハイアット リージェンシー 東京

ルドルフ@ハイアット リージェンシー 東京/著者撮影
ルドルフ@ハイアット リージェンシー 東京/著者撮影

ハイアット リージェンシー 東京では、4種類のクリスマスケーキ、シュトーレン1種を含むクリスマスブレッド5種が販売されています。

毎年人気となっている愛くるしい雪だるま型ケーキ「スノーマン」や、クリスマスシーズンのオーナメントを模した「ブール・ド・ノエル」に加え、「スノーマン」のトナカイ版ともいえるチョコレートとヘーゼルナッツが効いた大人の味わいの「ルドルフ」が新しく登場しています。

ペストリー・ベーカー料理長 佐藤浩一氏は「毎年多くの種類を作っていたので、個数限定となり、購入できない方がたくさんいらした。より多くの方に、食べたいクリスマススイーツを届けるのが私達の役目であり、原点。そのため、昨年よりもあえて種類数を減らして製造数を増やし、個数を限定しないようにした」と話します。

「スノーマン」は一昨年、昨年と最も人気のあったクリスマスケーキです。ホワイトチョコレートのムースの中には、甘酸っぱいラズベリーのジュレとムース、アーモンドビスキュイが入っています。

「ルドルフ」はチョコレートとヘーゼルナッツがハーモニーを奏でる濃厚な大人の味わいで、サンタクロースの乗るソリを引いて今にも走り出しそうな躍動感に溢れています。

人気の「スノーマン」とその派生型である「ルドルフ」に重点を置き、個数限定とはせず、求めるゲスト全てにおいしいスイーツを届けるのは、夢を与えるクリスマスの本質なのではないでしょうか。

パレスホテル東京

スペリュール@パレスホテル東京/著者撮影
スペリュール@パレスホテル東京/著者撮影

パレスホテル東京では7種類のクリスマスケーキ、4種類のシュトーレン、パネトーネ、ベラベッカが提供されています。

フランス語でクリスマスツリーを意味する「アルブル ド ノエル」、切り株を模した「ブッシュ ド ノエル ルージュ」、美しく繊細な飴細工とショコラで作られた深紅のポインセチアでデコレーションされた「フルール ド ノエル」など、印象的なものが多くあります。

シェフ 兼 ペストリーシェフの窪田修己氏は「私自身、今年でパティシエ歴30年目の節目を迎える。クリスマスには本当においしいケーキを食べていただきたいので、日本人が最も好きなショートケーキにこだわった」と述べます。

「スペリュール」は最高級の厳選素材を使用したプレミアムなショートケーキ。北海道阿寒地域の生クリーム、栃木県産のイチゴ「スカイベリー」、沖縄県産黒糖、フランス産A.O.P.バターなどが使われており、食材へのこだわりは半端ではありません。2サイズ用意されているので、食べる人数に応じて選ぶこともできます。

シュトーレンやパネトーネを始めとするクリスマスブレッドも充実し、クオリティが高いのでケーキと同様に人気があります。

スーシェフ 兼 ベーカリーシェフの星敏幸氏が「今年はパネトーネの粉の配分を変えた。しっかりとした食感で、フルーツをたっぷりと加え過ぎず、生地がおいしく食べられる。原点に立ち返って、本場の味を再現した」と述べるように、クリスマスブレッドではイタリアで定番の「パネトーネ」がお勧めです。

ザ・キャピトルホテル 東急

ルージュ ノエル@ザ・キャピトルホテル 東急/著者撮影
ルージュ ノエル@ザ・キャピトルホテル 東急/著者撮影

ザ・キャピトルホテル 東急では6種類のクリスマスケーキとシュトーレンが用意されています。

ザ・キャピトルホテル 東急がある場所は、かつて星の見える景勝地であったことから、今年のテーマは「Star Christmas」として、煌めくクリスマススイーツを取り揃えています。

流れ星をあしらった「ルージュ ノエル」(既に限定数完売)、月と太陽のコントラストが美しい「レアチーズ for Christmas」やチャーミングなパティシエ姿の「キングフロスト」など、見た目も全く異なるクリスマスケーキが揃えられています。

シェフパティシエの安里哲也氏は「原点は星が煌めくスターヒル。星を大切にしているホテルなので、今年のクリスマススイーツも星を意識した。デザインは妥協できないので、自分で型まで作っている。インスタ映えするだけではなく、おいしそうに思ってもらえるようにしている」と話します。

安里氏が特にお勧めする「ルージュ ノエル」は美しい赤が目を引く流れ星をあしらったムースケーキです。苺とホワイトチョコレートのクリーミーなムースに、ほのかに酸味を感じるライムクリームを重ねています。

「レアチーズ for Christmas」はフランス産のクリームチーズを主軸としたレアチーズケーキで、さっぱりとした味わいのヨーグルトムースが2層になっています。安里氏をもってして「黄色いクリスマスケーキは珍しい」と言わしめ、パッションフルーツとオレンジのコンフィチュールで描く太陽がチーズ本来の香りや旨みをより一層引き立たせています。

ホテルの原点である星にこだわったクリスマスケーキたちは、ザ・キャピトルホテル 東急であるからこそ燦然と輝くことでしょう。

ホテル インターコンチネンタル 東京ベイ

フロマージュノエル@ホテル インターコンチネンタル 東京ベイ/ホテル提供
フロマージュノエル@ホテル インターコンチネンタル 東京ベイ/ホテル提供

ホテル インターコンチネンタル 東京ベイでは4種のクリスマスケーキ、2種のシュトーレン、4種のクリスマスショコラに加えて、2種のクリスマスパズルも提供されています。

世界的の舞台で活躍するエグゼクティブシェフパティシエ徳永純司氏は、定番の「クリスマスショートケーキ」をはじめ、サンタクロースをモチーフにした色鮮やかな「フレーズマスカルポーネ」、フランスでは特別な日に食されるサントノーレを相性の良いショコラクリームとグリオットでデコレーションした「サントノーレショコラグリオット」、レアチーズケーキをベースにし、ピンクのハートとクリームをデコレーションした愛らしいデザインの「フロマージュノエル」を作り上げました。

「ザ・ショップ N.Y.ラウンジブティック」マネージャーである鈴木映氏は「今年は災害の多い1年であったことから、原点に立ち返って『愛を届ける、笑顔を届ける』というシンプルなことが一番大切であると考えた」と話します。

「フロマージュノエル」は、そこまで派手さはないものの、ハートやリボンがあしらわれており、その味わいと同じように、ひと目見ただけで和やかな優しい気持ちになるクリスマスケーキです。

鈴木氏が「徳永シェフはもちろんパティシエもヴァンドゥーズも、ひとつの気持ちで平成最後のクリスマスケーキをゲストへ大切にお渡ししたい」と述べるように、最後の受け渡しの時にまで気持ちをこめることは「愛を届ける、笑顔を届ける」ための極めて重要な原点ではないでしょうか。

マンダリン オリエンタル 東京

千疋屋クイーンストロベリー プレミアムショートケーキ@マンダリン オリエンタル 東京/著者撮影
千疋屋クイーンストロベリー プレミアムショートケーキ@マンダリン オリエンタル 東京/著者撮影

マンダリン オリエンタル 東京では、6種のクリスマスケーキ、シュトーレン、パネトーネ、クグロフに加えて、3種のクリスマススイーツ、クリスマスジャムが販売されています。

「家族や友達、恋人など、大切な方々との楽しいひと時を過ごしていただきたい」をテーマにしており、大人の上質な可愛さとスタイリッシュさを表現しています。

エグゼクティブ ペストリーシェフのステファン トランシェ氏のシグネチャースイーツである「KUMO」はクリスマスバージョンとなっています。「黒トリュフのKUMO」は200個限定で、フランス産黒トリュフが香るトリュフクリームと2種類のバニラから作られたムースが特徴です。トリュフクリームを使ったクリスマススイーツは、他では味わうことができないでしょう。

「大切な人々が楽しく過ごせるように」というテーマから、日本人にとって最も馴染み深いショートケーキに力を入れており、千疋屋総本店とコラボレーションして50個限定の「千疋屋クイーンストロベリー プレミアムショートケーキ」を作り上げました。

「クイーンストロベリー」はフルーツの老舗である千疋屋総本店のオリジナルブランドのイチゴで2000年から発売されています。香川県産の女峰を高設栽培システムで育てた希少なイチゴで、中まで赤く、甘味と酸味のバランスがよいので、口溶けのよい生クリームと相性抜群です。

マンダリン オリエンタル ホテルグループの日本における原点ともいえる日本橋で、共に日本橋を盛り上げようとする千疋屋総本店と力を合わせて生み出したショートケーキであれば、クリスマスを祝う場に集まる人々の絆を深めることができるのではないでしょうか。

ザ・ペニンシュラ東京

カットケーキセレクション(一番右下がマッシ ジャンドゥーヤ)@ザ・ペニンシュラ東京/ホテル提供
カットケーキセレクション(一番右下がマッシ ジャンドゥーヤ)@ザ・ペニンシュラ東京/ホテル提供

ザ・ペニンシュラ東京では、5種類のクリスマスケーキに5種類のカットケーキセレクションに加え、クリスマスシーズン限定のチョコレートやシュトーレン、焼菓子などが提供されています。

エグゼクティブ ペストリーシェフであるパスカル シャルデラ氏によって、ベルベッドレッドのブッシュ ド ノエル「ブッシュ フレーズ ヌガー」、コクのある深い味わい「ブッシュ リンザー」、本物の松ぼっくりのように見えながらも全て食べられる「ブッシュ ポム デ ピン」、厳選のイチゴを使用した「クリスマス ストロベリー」と個性的なクリスマスケーキたちが取り揃えられています。

様々な味を楽しめるようにとフェスティブ限定スイーツとして紡がれたのが、見た目も可愛い小さな5種類のカットケーキセレクション。

ヴァローナ社がザ・ペニンシュラホテルズのために特別にブレンドしたカカオ66%のチョコレートを使用した三角形の「ペニンシュラ チョコレートケーキ」、「小さなもみの木」を意味し、ピスタチオとバタークリームのムースで仕上げた「プチ サピン」などに加えて、総料理長であるマッシミリアーノ・ジアーノ氏の原点ともいえるケーキも含まれています。

コックの絵が印象的な「マッシ ジャンドゥーヤ」には、ジアーノ氏が幼少期に慣れ親しみ、料理人への道を歩むことを決心させた祖母の味が再現されているのです。シンプルなチョコレートスポンジに、ヘーゼルナッツで新しいテクスチャーも加えたチョコレートクリームから構成されており、豊かな香りがします。

幼少期に体験した味の記憶は忘れることがないといわれています。その味から想像を膨らませて完成させたケーキであればきっと、多くのゲストの記憶に残るクリスマスケーキとなるのではないでしょうか。

帝国ホテル 東京

ブッシュ・ド・ノエル@帝国ホテル 東京/著者撮影
ブッシュ・ド・ノエル@帝国ホテル 東京/著者撮影

帝国ホテル 東京では6種類のクリスマスケーキ、2種のシュトーレン、パネトーネが販売されています。

帝国ホテル伝統のイチゴショートケーキをハート型(仏語でクール)にして2段に重ねた「クール」、黒果実(カシス、ブルーベリー)のコンポートにバニラクリームとチョコレート生地を重ねたチョコレートムースのケーキ「エトワール」、赤果実(ストロベリー、ワイルドストロベリ-、ラズベリー)のコンポートとピスタチオの生地で仕上げ、サンタクロースの帽子をイメージした「ボネ」は新作です。

紅玉ル レクチエのコンポートを包んだホワイトチョコレートムースのケーキ「ハートフル“ノエル”」、イチゴをしっとりとしたスポンジ生地で挟み、生クリームとチョコレートクリームの2種から選べる「クリスマスショートケーキ」は定番となっています。

この中で原点といえるのは、ペストリー シェフ秋城俊徳氏が「私が入社した頃からずっと変わらぬ伝統の味。素材はよくなっているが、基本的な配合は同じ」と説明する「ブッシュ・ド・ノエル」です。

「ブッシュ・ド・ノエル」は、キャラメルを加えたコーヒー風味のバタークリームを、ふんわりとしたスポンジ生地で巻き、帝国ホテル伝統のレシピで仕上げたクリスマスケーキです。

1890年に誕生し、日本のホテル発祥である帝国ホテルは、シャリアピンステーキやレーヌ・エリザベス、さらにはワゴンでのローストビーフのサービスやバイキングの生みの親でもあります。

個性豊かな3つの新作クリスマスケーキに加え、輝かしい歴史を誇る帝国ホテルで受け繋がれてきた「ブッシュ・ド・ノエル」まであれば、食べたくなるクリスマスケーキを必ず選ぶことができるのではないでしょうか。

ザ・リッツ・カールトン東京

ストロベリーショートケーキ@ザ・リッツ・カールトン東京/著者撮影
ストロベリーショートケーキ@ザ・リッツ・カールトン東京/著者撮影

ザ・リッツ・カールトン東京では、5種類のクリスマスケーキ、シュトーレン、パネトーネが用意されています。

サンタクロースをモチーフにデザインされた真っ赤なケーキ「ストロベリーマスカルポーネケーキ」、あしらわれたキノコが目を引き、マロンムースとマロンクリームがカシスコンポートの酸味を引き立てた「カシスマロンケーキ」、ヴァローナ社のカカオ70%のビターなチョコレートムースとチョコレートスポンジケーキを12層重ね、バームクーヘンを連想させる「ザ・リッツ・カールトン ツリーケーキ」など、見た目も印象に残るクリスマスケーキばかりです。

2018年3月にオープンしてから初めてクリスマスを迎えるチョコレート&ペストリー「ラ・ブティック」では、可愛らしいキャンドルをモチーフにしたキューブケーキ「キャンドル」も販売されています。

ザ・リッツ・カールトン東京の原点を体現しているのが、2007年の開業当時から味を守り続けている「ストロベリーショートケーキ」です。まるごとのイチゴがたくさん用いられており、生クリームとカスタードクリームが合わせられています。リッチな味わいで非常に高級感もありますが、購入しやすいようにと3サイズも用意されています。

食べる人数や予算に応じてサイズを選びやすくなっているのは、常にゲストのことを考えるザ・リッツ・カールトン東京のホスピタリティの原点なのではないでしょうか。

アンダーズ 東京

苺のパリブレスト@アンダーズ 東京/著者撮影
苺のパリブレスト@アンダーズ 東京/著者撮影

アンダーズ 東京では5種のクリスマスケーキ、クリスマスエクレア セレクション、クリスマス ロリポップ、シュトーレンが提供されています。

カップルや小さな子供のいるファミリーにもお勧めの「苺のショートケーキ」、クリスマスツリーをイメージした「抹茶のモンブラン」、濃厚なダークチョコレートのムースがリッチな「ブッシュドノエル」、ピスタチオとイチゴがふんだんに使われた「苺のパリブレスト」、クルミやレーズンもたっぷり包まれた三角形の「アップルツリーパイ」と、バラエティ豊かなクリスマスケーキが取り揃えられています。

ホテル名の「アンダーズ」はヒンディ語で「パーソナルスタイル(個性)」を意味し、あらゆる面においてバリアがなく、シンプルでありながらも洗練されており、ゲストにまるで自宅にいるかのように寛いでもらうことを大切にしています。

そのため、アンダーズ 東京のクリスマスケーキは、ショートケーキやブッシュ ド ノエルといったクリスマスの定番、さらにはモンブランやアップルパイ、パリブレストといった日本人にも慣れ親しんだスイーツが用意されているのです。

「苺のショートケーキ」には生地にシロップが入れられていたり、「抹茶のモンブラン」にはクレームブリュレが忍ばされていたり、「苺のパリブレスト」は4層になっていたりと、しっかりと手間暇がかけられています。

クリスマスだからといって、奇をてらったスイーツを提供するのではなく、よく知っているスイーツを上質なクリスマスケーキへ昇華することによって、より多くの人々にクリスマスケーキの素晴らしさを伝えているといってよいでしょう。

グランド ハイアット 東京

スプレンドーレ@グランド ハイアット 東京/著者撮影
スプレンドーレ@グランド ハイアット 東京/著者撮影

2018年で15周年を迎えるグランド ハイアット 東京では9種類のクリスマスケーキ、シュトーレン、パネトーネ、クリスマスクッキーが販売されています。新作4種類を含む9種類のクリスマスケーキは最も多い部類に入るでしょう。

鮮やかな彩りのケーキの上にエクレアをあしらい、キラキラとしたデコレーションを施した「スパークル」、繊細な飴細工のドームの中にまるで宝石のような色とりどりの果実を忍ばせた「クリスタルフルーツショートケーキ」、濃厚な味わいの「スプレンドーレ 輝き」、毎年高い人気を誇る定番の「ストロベリーショートケーキ」や「シャンティショコラ」と、どれも非常にきらびやかです。

ペストリー料理長を務める金子浩氏は「パティシエになった25年ほど前に食べたクレーム ブリュレがあまりにもおいしくて感動した。衝撃を受けた味は今でも覚えている」と述懐します。そのクレーム ブリュレからインスピレーションを得て、今年初めて作られたのが「輝き」を意味する「スプレンドーレ」です。

軽い食感のダコワーズの上に、ヘーゼルナッツ、口当たりがなめらかで濃厚なチョコレート、しっとりとしたチョコレートのスポンジ、コーヒー味のクレーム ブリュレ、アプリコットとオレンジのフィリングを重ねています。仕上げに全体をチョコレートのムースで包み、なめらかなダークチョコレートで覆いました。オレンジとアプリコットの酸味がアクセントになっており、クレーム ブリュレの口溶けがより印象に残るように工夫されています。

25年前金子氏に感動を与えたクレーム ブリュレと同じように、「スプレンドーレ」も多くのゲストにクリスマスケーキの感動と衝撃を与えてくれるのではないでしょうか。

ウェスティンホテル東京

リースケーキ ルージュ@ウェスティンホテル東京/著者撮影
リースケーキ ルージュ@ウェスティンホテル東京/著者撮影

ウェスティンホテル東京では、11種類のクリスマスケーキ、シュトーレン、パネトーネ、パンドーロが用意されています。11種類というクリスマスケーキはホテルの中では非常に多い方であり、エグゼクティブペストリーシェフである鈴木一夫氏のクリエイティビティが発揮されているといってよいでしょう。

豪華3段仕立ての「クリスマスショートケーキ」、ブッシュ ド ノエルが載せられ、グリオットチェリーとチョコレートで構成された「プレミアム フォレノアール」は共に限定5台です。

酸味と苦味のバランスがよい「ラズベリーショコラ」、イチゴのピューレ入りの「ストロベリーショートケーキ」、雪だるまが載せられた「サンタショートケーキ」と、ショートケーキは3種類あります。直方体の形をしたフランス風のショートケーキ「フレジェ」、真っ白な雪山をイメージした「モンターニュ ネージュ」、オレンジの香るクリームをヘーゼルナッツ風味のチョコレートで包み込んだ「ブッシュ ド ノエル オレンジノアゼット」と選ぶのが大変になるくらい充実しています。

2018年の新作は、マロンがたっぷり使われた「リースケーキ マロン」、チョコレートとブラックベリーの「リースケーキ ショコラ」、ラズベリー風味の「リースケーキ ルージュ」です。

原点について尋ねると、鈴木氏は「洋菓子の原点ともいえるのはバターの味わいではないか。新作のリースケーキには、バター生地とバタークリームがたっぷり使われている。1種だけではインパクトがないので、7種ほど作って試食し、最終的に3種に決まった」と説明します。

最近は重たいからとバター生地やバタークリームが敬遠されることもありますが、小さい頃に体験したバターのおいしさは、子供の頃の思い出に満たされたクリスマスに食べてみたくなるものではないでしょうか。

パーク ハイアット 東京

クリスマス ショートケーキ@パーク ハイアット 東京/著者撮影
クリスマス ショートケーキ@パーク ハイアット 東京/著者撮影

パーク ハイアット 東京では4種のクリスマスケーキ、3種のシュトーレン、パネトーネ、パンドゥジェンヌが提供されています。

イチゴのあまおうを使った「ブッシュ モナコ」、栗とカシスの「ブッシュ モンブラン」、そして宇治抹茶と柚子の「ブッシュ トーキョー」などブッシュ ド ノエルが3種類もあって充実しています。

3種のシュトーレンはそれぞれ形が異なっており、デザインも独創的です。「柚子パンドゥジェンヌ」は美しい星型をしており、真ん中にある柚子のスライスも目を引きます。

スタイリッシュなクリスマススイーツが多い中で、パーク ハイアット 東京の原点といえば「クリスマス ショートケーキ」です。1994年のオープン以来、24年間ほとんどレシピを変えずに提供し続けています。毎年購入するゲストも多く、クリスマスケーキの中でも常に売上トップを誇っているのです。

「クリスマス ショートケーキ」は厳選した素材を使い、しっとりと焼き上げたきめ細やかなスポンジ、上質な生クリームのフレッシュで優しいフレーバーが魅力です。ふんだんにあしらったフレッシュなイチゴやグランマルニエの香りが上品な味わいを引き立てています。

洋酒がさりげなく香る大人の味わいは、ホテル新御三家と呼ばれてから20年以上経っても圧倒的な存在感を示し、特別な時に背伸びをして訪れるパーク ハイアット 東京らしいクリスマスケーキであるといえるでしょう。

プリンスホテル

ジュエル ボックス@ザ・プリンスギャラリー 東京紀尾井町/著者撮影
ジュエル ボックス@ザ・プリンスギャラリー 東京紀尾井町/著者撮影

プリンスホテルは東京シティエリアを紹介します。

ザ・プリンスギャラリー 東京紀尾井町では、3種のクリスマスケーキ、シュトーレンを含む3種のクリスマスブレッドが提供されています。パールとリースをテーマとした「パールリース」(数量限定)、イチゴをたっぷりと使用した「ホワイトクリスマス」が注目です。

キングショコラ@ザ・プリンス パークタワー東京/著者撮影
キングショコラ@ザ・プリンス パークタワー東京/著者撮影

ザ・プリンス パークタワー東京では、6種のクリスマスケーキ、シュトーレン、パネトーネ、ベラベッカを含む6種のクリスマスブレッドが販売されています。「クリスマスは信じる人のもとへ訪れる」という意味を込めた「Croire(クロワール)」(数量限定)、愛らしい表情のサンタクロースをモチーフとした「サンタクロース」(数量限定)、プレゼントモチーフがクリスマス気分を盛り上げる「ウールータルト」、女性ホテリエプロジェクト「TOKYO HONEY PROJECT」がプロデュースし、美しく驚きに満ちたチョコレートケーキ「エスポワール -ロゼ ド ノエル-」(数量限定)とバラエティに富んでいます。

メルヴェイユ@グランドプリンスホテル新高輪/著者撮影
メルヴェイユ@グランドプリンスホテル新高輪/著者撮影

グランドプリンスホテル新高輪では、5種のクリスマスケーキ、シュトーレン、パネトーネ、ベラベッカを含む6種のクリスマスブレッドが用意されています。色とりどりのフルーツが華やかにきらめくフルーツの宝石箱「エクラン ド フリュイ」(数量限定)、“女性の美しさをほめたたえる”語意をもち、現代をしなやかに生きる女性たちへのオマージュを込めて作られた「ベル」(数量限定)、バラをテーマとし、2015年のデビュー以来、多くの人気を集めている「ルージュ プルミエール」(数量限定)など、目を引くものばかりです。

この東京シティエリアにあるプリンスホテルにとっての原点は、エグゼクティブシェフ パティシエ内藤武志氏の味。

内藤氏が2005年に赤坂プリンスホテル(現ザ・プリンスギャラリー 東京紀尾井町)のシェフパティシエに就任し、自身のレシピに変えてからは、技法やスタイルを継承してクリームやスポンジ生地が作られているのです。

原点として注目したいクリスマスケーキは次の通り。

ザ・プリンスギャラリー 東京紀尾井町「ジュエル ボックス」(数量限定)はビターチョコレートの蓋を開けると宝石のように輝くラズベリーを敷きつめたガトーショコラが現れます。

ザ・プリンス パークタワー東京「キングショコラ」はダークチョコレートと、たっぷりなベリーのハーモニーが奏でる大人の味わいのケーキです。

グランドプリンスホテル新高輪「メルヴェイユ」は、イチゴのあまおうの持ち味を最大限に引き立てた、こだわりのショートケーキとなっています。

「ケーキ作りはシンプルなものほど難しい」と内藤氏は述べますが、ケーキの礎となるクリームやスポンジがしっかりと継承されているのであれば、これから先もずっと、おいしいクリスマスケーキを届けることができるのではないでしょうか。

2018年のクリスマスケーキ

東京の一流ホテルのクリスマスケーキを原点というキーワードをもとにして紹介してきました。

シェフが昔体験して感動した味を再現したり、ホテルのコンセプトに立ち返って考案したり、日本人であればほとんどの人が好きなケーキに力を入れたりと、各ホテルやそれぞれのシェフが考える原点は様々ですが、おいしいクリスマスケーキを食べてもらいたいという気持ちは同じでしょう。

洋菓子の老舗である不二家が1910年12月に日本で初めてとなるクリスマスケーキを販売してから100年以上経った今、ひとつのホテルだけで何種類もの素晴らしいクリスマスケーキが作られるようになっています。

クリスマスケーキをただおいしく楽しく食べるだけでもよいですが、クリスマスケーキにまつわる原点を知り、そこに想いを馳せて食べてみれば、味わいもまた違って感じられるかもしれません。

グルメジャーナリスト

1976年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。ファインダイニングやホテルグルメを中心に、料理とスイーツ、お酒をこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口で分かりやすい記事を執筆。審査員や講演、プロデュースやコンサルタントも多数。

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