異色のグルメアニメが訪日外国人のお通し問題を解決する理由

ぐるなび提供

堅実に伸びている訪日外国人数

日本政府観光局は毎月、前月の訪日外国人の数を集計し、発表しています。

2018年11月21日発表された訪日外客統計の集計・発表によると、2018年10月は264万人となり、10月としては過去最高を記録しました。2018年1月から10月までの訪日外国人の数を累計すると2610万人となり、年間累計が初めて3000万人を突破することは、まず確実となっています。国の目標である2020年の4000万人に向けて順調に伸びているといってよいでしょう。

訪日外国人のお通し問題

<訪日外国人にもトラブルになっている居酒屋のお通しは本当に悪なのか?>では、日本のお通し文化に馴染みのない訪日外国人客が飲食店に訪れ、お通し料金の計上でトラブルになっていることを取り上げました。

日本でしか体験できないとあって、新宿ゴールデン街や新橋のガード下にある日本の古き良き居酒屋は、引き続き訪日外国人で賑わっています。

ますます訪日外国人が増えていく状況で、このお通し問題が解決される糸口は何かあるのでしょうか。

私は先の記事で、日本人がお通し文化を知り、それをしっかり伝えていくことが大切であると述べましたが、実は既に日本の居酒屋文化が世界へと発信されているのです。

異世界居酒屋

蝉川夏哉氏によるライトノベル『異世界居酒屋「のぶ」』は、京都の寂れた通りに店を構える居酒屋「のぶ」の正面入口がなぜかヨーロッパを思わせる城壁の古都アイテーリアとつながっており、様々な物語が展開される異世界グルメ小説です。

訪れる客は、中世のアイテーリアに住む昔の人々なので、日本料理はもちろん近代的な料理を食べたことがなく、洗練されたお酒も飲んだことがありません。おいしい未知の料理の数々に驚嘆するアイテーリアの人々と、「のぶ」の板前であるタイショーやサービススタッフのシノブさんとの間で物語が展開されていきます。

異世界グルメファンタジーという面白い設定が好評を博し、『異世界居酒屋「のぶ」』は2015年に漫画化されました。さらには、サンライズが制作して「異世界居酒屋~古都アイテーリアの居酒屋のぶ~」というアニメになり、2018年4月13日から9月14日にかけてインターネットで配信されたのです。

海外の動画配信サイトでの包装では英語や中国語の字幕が加えられ、累計視聴数3000万回を突破するなど、世界中の人々に発信されました。2018年10月2日からはBS11で、3日からはJ:COMテレビで放送が開始されています。

日本の食文化を伝える物語なので、もちろん、お通しも何度となく登場します。世界で注目される日本のアニメを通して、日本の食文化を伝えることは非常に効果的ではないでしょうか。

リアル店舗でのコラボレーション

居酒屋「のぶ」/ぐるなび提供
居酒屋「のぶ」/ぐるなび提供

ライトノベル、漫画、アニメでの反響を受けて、面白い試みも行われました。

2018年7月26日から8月26日にかけて「養老乃瀧」とコラボレーションし、池袋近辺にある7店舗でアニメに登場したメニューが提供されたのです。

さらには、2018年11月16日から11月30日にかけて、日頃から訪日外国人がよく宿泊している浅草の「Samurai Hostel(サムライ ホステル)」とコラボレーションしています。1階にあるヴィーガン・ムスリム対応した『レストラン浅草「侍」屋台』がコラボレーション期間中は『居酒屋「のぶ」 』に改装され、営業しているのです。

西麻布の個室料理店「くすもと」シェフである楠本勝三氏が監修し、ベジタリアンやムスリムに配慮したアレンジを加えながら、「のぶ」のメニューをブッフェや弁当で提供しています。

居酒屋「のぶ」 唐揚げ/ぐるなび提供
居酒屋「のぶ」 唐揚げ/ぐるなび提供

アニメに登場する料理が忠実においしく再現されていることから、早速話題となっており、開催期間も12月16日まで延長されることが決定しました。

訪日外国人によく利用されるホテルと海外でも人気となっているアニメがコラボレーションすることによって、日本の食の魅力がより伝わりやすくなっているのではないでしょうか。

ぐるなびが関係

異世界居酒屋「のぶ」 第2話「若鶏の唐揚げ」/ぐるなび提供
異世界居酒屋「のぶ」 第2話「若鶏の唐揚げ」/ぐるなび提供

実は今回のアニメ化や実店舗のコラボレーションで注目したいことがあります。それは、ぐるなびが関係していることです。

アニメ化に際しては、ぐるなびがアニメ製作委員会として参加していますが、これはなぜでしょうか。

『異世界居酒屋「のぶ」』では、外国人であるアイテーリア人の視点から日本の食文化である居酒屋の素晴らしさを再発見しています。また、食べ飲みしながら歓談し、人々が楽しく交流する様子が描かれており、居酒屋の魅力も十分に表現されています。

ぐるなびに掲載されている飲食店の中で、最も多く、全体の20%を占めている業態は居酒屋です。そのため、ぐるなび広報の鈴木裕美氏が「外国で人気のある日本の食と日本のアニメを掛け合わせて、日本の食文化を海外に発信したい」と述べるように、国内外に居酒屋の魅力を伝えるため、アニメ製作委員会に参画したのです。

コラボレーションの経緯

居酒屋「のぶ」 ブッフェ台/ぐるなび提供
居酒屋「のぶ」 ブッフェ台/ぐるなび提供

「養老乃瀧」や「SamuraiHostel」とコラボレーションしたのは、どういった経緯だったのでしょうか。

鈴木氏は「日本の食文化をアニメで発信するだけではなく、実際の飲食店でも伝えていくことが、弊社の重要な役割であると考えている。どちらのコラボレーションとも、こちらから企画を持ちかけた」と話します。

「養老乃瀧」とのコラボレーションでは、国内のアニメファンが、アニメをきっかけにして居酒屋へ足を運んでもらうことを期待しました。「SamuraiHostel」とのコラボレーションでは、訪日外国人客に向けてアニメの世界感とともに気軽に日本食を味わってもらうことを意図したということです。

実際に『居酒屋「のぶ」 』を訪れたゲストは、どういった反応を示しているのでしょうか。

訪れる日本人はアニメや原作であるライトノベルのファンが中心で、とても楽しんでくれているということです。訪日外国人はアニメに興味のある人も多いので、『異世界居酒屋「のぶ」』を知っているという人も少なくないようです。

日本の食と日本のアニメ

異世界居酒屋「のぶ」 第1話「おでんのじゃがいも」/ぐるなび提供
異世界居酒屋「のぶ」 第1話「おでんのじゃがいも」/ぐるなび提供

JNTOが2016年に調査した<訪日外国人旅行者の消費動向とニーズについて>によると、訪日外国人によるニーズでは「特産物の飲食」が大きいと述べられており、<地方を旅する欧米豪旅行者の「日本食体験」の実態~JNTO自主調査レポート(番外編)~>によると、「訪日前に期待していたこと」は「日本食を食べること」が68.3%で最も多くなっています。

日本動画協会発表の「アニメ産業レポート2017」によると、アニメの海外販売は前年比131.6パーセントの7676億円と大幅に増えており、引き続き伸長しています。

こういった調査結果から、共に世界で関心を持たれている日本の食と日本のアニメを組み合わせ、海外へ展開していくことは、非常に効果があるのではないでしょうか。

国が目標に掲げる2020年に4000万の訪日外国人は現実のものとなりつつありますが、日本のアニメで日本の食文化を知ってから訪れた方が、日本での旅がより楽しく、より有意義なものとなるでしょう。その結果、世界の人々が日本に親しみを覚え、日本にまた訪れてくれるのではないかと私は期待しています。