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相次いでリニューアルしている高級ホテルのレストランで注目しておくべき3つの特徴

東龍グルメジャーナリスト
スノーエイジング 北海道産 シャトーブリアン(著者撮影)

レストランの注目時期

レストランはどういう時に注目されるでしょうか。

それはレストランがオープンした時、もしくは、リニューアルオープンした時です。どのようなレストランであるのか、どのように変わったのかと、多くの人が注目するからです。これと同じように、シェフが替わった時も、どのような料理が作られるのかと注目されます。

これまでレストランのオープンやリニューアルに関して以下の記事を書いてきましたが、どのレストランも大きな関心を寄せられました。

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ホテルのレストランがリニューアル

2020年の東京五輪へ向けて、ホテルの業績は伸びており、新しいブランドも日本へと上陸しています。

そのような状況で、既存のホテルはレストランをリニューアルして、新たな付加価値を作り上げようとしているのです。

以下のように、2018年1月から4月のたった4ヶ月間だけで、東京の名だたるホテルがレストランをリニューアルオープンさせています。

  • 2018/1/26

アルヴァ(アマン東京)

  • 2018/02/15

龍天門(ウェスティンホテル東京)

  • 2018/03/01

オーク ドア(グランド ハイアット 東京)

  • 2018/03/07

嘉門(帝国ホテル 東京)

  • 2018/03/09

タワーズ(ザ・リッツ・カールトン東京)

  • 2018/03/19

サザンタワーダイニング(小田急ホテルセンチュリーサザンタワー)

  • 2018/04/01

鉄板焼 浜木綿(グランドニッコー東京 台場)

  • 2018/04/16

ザ タヴァン グリル&ラウンジ(アンダーズ 東京)

特徴

東京にある8つのホテルがレストランをリニューアルオープンしましたが、ここには次のような特徴が見出されます。

  • 食材を生かす
  • 肉を追求する
  • スタイルを変える

まず、食材を生かすようにしていることです。ヌーベル・キュイジーヌが台頭してきてから既に50年近く経ちますが、ますます軽い味付けや食材が本来持つ力を引き出す方向となっています。食材の味がそのまま伝わるようにと工夫しているのです。

次に、肉を追求するようになっています。よりよい肉を購入したり、理想の料理に相応しい肉を使ったりしているのです。素晴らしい肉料理を作り上げるために、最新の什器も設置しています。

最後の特徴はスタイルを変えていることです。高級ホテルでありながらも気軽に訪れてもらうために、コース料理を勧めるのではなく、アラカルトで自由に好きなように注文してもらうスタイルにしたり、和の料理に洋の要素を取り入れて個性を出したりしています。

以上のキーワードをもとにして、それぞれのレストランを紹介していきましょう。

アルヴァ(アマン東京)

カマスのグリルカリフラワーのアッローストとアッチューガ@アルヴァ(アマン東京)(著者撮影)
カマスのグリルカリフラワーのアッローストとアッチューガ@アルヴァ(アマン東京)(著者撮影)

アマンといえば極上リゾートホテルとして根強いファンが多く、レストランは宿泊客だけが利用する非常に特別感溢れるものでしたが、2015年3月17日にグランドオープンしたアマン東京はシティホテルということで、レストランは宿泊していない客も気軽に利用できるようになっています。

そのアマン東京のレストランが、2018年1月26日にイタリアンレストラン「アルヴァ(Arva)」として新しく生まれ変わりました。全世界で展開を始めた統一ブランドということで、注目を集めています。

「アルヴァ」は英語「Harvest(収穫)」の語源となるラテン語であり、季節の恵みを生かしたシンプルで誠実なイタリア料理を提供しています。

エグゼクティブシェフの平木正和氏はイタリアで17年を過ごし、そのうち13年を山と森と海に囲まれたヴェネトの州都であるヴェネチアでヴェネト料理の経験を積んできました。

メインの魚、肉料理、デザートは、シェフやサービススタッフがテーブルまで運んできて、目の前で取り分けてくれるスタイルとなっています。コース料理ですが、かしこまって食べるのではなく、同席者やシェフ、サービススタッフと会話を楽しみながら食べられるのが特徴です。

カリフラワーを2時間もローストして味わいを引き出したり、ローマの野菜としてイタリアではよく食されているイタリア野菜「プンタレッラ」をシンプルにバーニャカウダと共に提供したり、チコリに似たイタリアの高級野菜「ラディッキオ」を使ったサラダを作り上げたりし、野菜のおいしさをそのまま味わってもらいたいという気持ちがよく伝わってきます。

アマンは憧れのリゾートホテルというイメージが強いですが、「アルヴァ」のオープンによって、アマン東京は、イタリアへ訪れずともイタリア食材の素晴らしさを体験できる空間となっているのです。

龍天門(ウェスティンホテル東京)

スジアラの蒸し焼き@龍天門(ウェスティンホテル東京)(著者撮影)
スジアラの蒸し焼き@龍天門(ウェスティンホテル東京)(著者撮影)

「龍天門」といえば、ホテル新御三家と称されるウェスティンホテル東京の中国料理店であり、ミシュランガイドで星を獲得したこともある名店です。豪快な広東料理や裏メニューの担々麺がよく知られており、多くの美食家を満足させてきました。

その「龍天門」が1ヶ月もの改修期間を経て2018年2月15日にオープンし、和栗邦彦氏が新しい料理長に就任したのです。

リニューアルした龍天門では、中国建築を現代的にしたインテリアを採用しており、龍天門の象徴である個性的な門と中央ホールの天井に広がる龍はそのまま残していますが、床は雲をモチーフとしたカーペットになり、龍の宮殿をイメージした荘厳なダイニングホールとなっています。王宮をイメージさせる黒と金を使い、中国料理店であるのに赤が使われていないのが特徴です。

香港と日本で30年の経験を積み、数々のレストランやホテルで料理長を歴任してきた和栗氏は、新しい「龍天門」のコンセプトを優雅でワンランク上の本場の香港料理としました。

鮮魚を使った「香港風セイロ蒸し」や「鮑のオーブン焼き ポルトガル風」など、伝統的な料理に独自のアレンジを加えた、想像力豊かな広東料理を作り上げています。

中でも注目するべきメニューは、和栗氏が初めて香港を訪れた時に食べて感動し、自身のキャリアをかけて広東料理をマスターすることを決意させた「スジアラの蒸し焼き」です。

和栗氏は年に3、4回は香港へ訪れるなど研究熱心で、本来蒸し料理は家庭料理で素朴なものですが、とことんクオリティにこだわり、この「龍天門」のシグネチャーディッシュにまで昇華させました。

名門の「龍天門」で紡ぎだされるダイナミックで力強い広東料理は、和栗氏の就任によって、素材の滋味を引き出す繊細な広東料理へと大きな変革を遂げています。

オーク ドア(グランド ハイアット 東京)

ボーンマロー サワーブレッド ハーブのサラダ ケッパー@オーク ドア(グランド ハイアット 東京)(著者撮影)
ボーンマロー サワーブレッド ハーブのサラダ ケッパー@オーク ドア(グランド ハイアット 東京)(著者撮影)

2018年3月1日にグランド ハイアット 東京のステーキハウス「オーク ドア」がリニューアルオープンしました。

2003年4月25日にホテルと共にオープンし、15周年という節目を迎える中で、大人のラグジュアリーなステーキハウスという雰囲気はそのままにしながらも、内装を改修してノスタルジーをテーマとしたデザインに進化させています。

新しく料理長に就任したのはパトリック シマダ氏。2012年「グランド ハイアット 香港」の「ステーキハウス」でも料理長を務めるなど、輝かしい経歴を歩んできました。そして、2017年11月に自身のルーツである日本へ渡り、グランド ハイアット 東京の「オーク ドア」料理長に着任することになったのです。

リニューアルするにあたり、内装だけではなく、キッチンも進化させました。炭火焼による両面グリルが可能なチャコールグリルと、900度に達する高温ガスブロイラーを新たに導入したことによって、肉の旨味やジューシーさをしっかりと閉じ込め、おいしさを最大限に引き出せるようになっています。

「オーク ドア」の料理はどれもボリュームがたっぷりなので、アラカルトで注文して、みんなで楽しくシェアして食べるスタイルです。

牛の骨髄を香草で焼いて爽やかに仕上げた「ボーンマロー サワーブレッド ハーブのサラダ ケッパー」は他ではなかなか食べられません。

「テンダーロインステーキ カナダ オンタリオ産 170g」はチャコール グリルで焼き上げたカナダ産のテンダーロインで、海塩と黒胡椒だけで味付けし、オークの炭火で表面を焼いた後にオーブンで好みの焼き加減に仕上げています。

デザートの「ベイクド東京」はボリュームたっぷりで、2人から3人で食べるシェアスタイル。目の前でキルシュをフランベしてもらえるので、インパクトがあって香りも広がります。

新しいチャコールグリルと高温ガスブロイラーを設置し、万全の態勢でグリルのスペシャリストであるシマダ氏を迎えた「オーク ドア」のグリル料理はますます注目されるでしょう。

嘉門(帝国ホテル 東京)

ブルーオマール海老と榛豆腐のラビオリ 青豆を纏ったポーチドエッグ モリーユ茸のブイヨン オシェトラキャヴィアと共に@嘉門(帝国ホテル 東京)(著者撮影)
ブルーオマール海老と榛豆腐のラビオリ 青豆を纏ったポーチドエッグ モリーユ茸のブイヨン オシェトラキャヴィアと共に@嘉門(帝国ホテル 東京)(著者撮影)

帝国ホテル 東京の鉄板焼「嘉門」が2018年3月7日にリニューアルオープンしました。1993年にオープンしてから、和食と洋食の出会いと融合をテーマにし、16世紀の安土桃山時代に端を発する「和魂洋才」をコンセプトにして高い評価を得てきましたが、リニューアルによって、そのコンセプトはよりモダンに洗練されました。

リニューアル前から引き続き神谷望氏がシェフを、渡邉真也氏と木曽和宏氏がスーシェフを務め、フランス料理の経験を惜しみなく鉄板焼に生かしています。ペストリースーシェフは女性の齋藤有希氏が務め、2017年から嘉門のデザートをメインで担当しており、今回のリニューアルでは訪日外国人が多い鉄板焼で和を意識したデザートを創作しています。

今回のリニューアルで注目したいのはフランス料理の技法がふんだんに使われているディナーコース「嘉門」。

「ブルーオマール海老と榛豆腐のラビオリ 青豆を纏ったポーチドエッグ モリーユ茸のブイヨン オシェトラキャヴィアと共に」では、通常は鉄板焼で提供されることのないフランス料理の高級食材オマール・ブルーが使われています。

「メバルとフランス産ホワイトアスパラガスのポワレ 墨烏賊と浅利のコンディマンと桜海老の煎餅 甘酸っぱいプーラルドのジュ」は肥育鶏の出汁が印象的な一品で、見た目も味もモダンフレンチにしか思えません。

どちらとも鉄板焼の新たな未来を感じさせる料理でしょう。

デザートコーナーは銀座側から日比谷公園側に移り、眺望がより開けました。日比谷公園の景色を眺めながら、桜、ほうじ茶、抹茶、小豆と和の要素が多い、日本人にはもちろん、訪日外国人にも喜ばれるスイーツが取り揃えられています。

「嘉門」はもともと和の魂を礎にしながら洋の技術でゲストをもてなしてきましたが、このリニューアルによって、より和の色合いを濃くすると共にますます洋の技術と融合し、世界に鉄板焼を発信しようとしています。

タワーズ(ザ・リッツ カールトン 東京)

トラディッショナルなパイ包み@タワーズ(ザ・リッツ・カールトン東京)(著者撮影)
トラディッショナルなパイ包み@タワーズ(ザ・リッツ・カールトン東京)(著者撮影)

ザ・リッツ・カールトン東京45階に、2018年3月9日「タワーズ(Towers)」「アジュール フォーティーファイブ」がリニューアルオープンし、チョコレート&ペストリー「ラ・ブティック」が新しくオープンしました。

東京タワーと東京スカイツリーを2つとも眺められることから名付けられた「タワーズ」は、ホテル全体のデザインテーマ「東洋と西洋の融合(East meets West)」をより意識し、モダンビストロからコンテンポラリーグリルへとコンセプトをシフトし、新しく生まれ変わったのです。

「タワーズ」料理長は、ホテルの副総料理長も務めるフランケリー・ラルーム氏。パリのミシュランガイド3つ星「パヴィヨン・ルドワイヤン」で10年以上研鑽を積んだ後に、ヴァランスの「メゾン・ピック」、カンヌのミシュランガイド2つ星「ラ・パルム・ドール」で働くなど、料理人としての経歴は一流です。

フレンチを知り尽くすラルーム氏によって、グリルとフランス料理が融合したレストランとして生まれ変わったのです。

「トラディッショナルなパイ包み」はクラシックなフランス料理。モミの上に載せられたパイ包みをテーブルまで運んで来て、見せてくれてからサーブしてくれます。パイの中には名古屋コーチン、京鴨、フォアグラが包まれていて、肉の旨味が閉じ込められています。季節によって肉が変わり、シーズンにはジビエも使われます。

「あか牛 熊本 モダン ”ベアルネーズ” ソース」はあか牛を堪能できるグリル料理の一品。あか牛は日本の褐毛和牛ですが、フレンチ仕込みのオリジナルのベアルネーズソースとよく合います。

グリルを中心にしながらも、モダンなフランス料理のエッセンスを惜しみなく注いだコンテンポラリーグリルは、新しいグリルレストランのひとつの業態となっていくのではないでしょうか。

サザンタワーダイニング(小田急ホテルセンチュリーサザンタワー)

デザートのショーケース@サザンタワーダイニング(小田急ホテルセンチュリーサザンタワー)(著者撮影)
デザートのショーケース@サザンタワーダイニング(小田急ホテルセンチュリーサザンタワー)(著者撮影)

2018年3月19日、小田急ホテルセンチュリーサザンタワーに「プレザント&パノラミックビュー」をコンセプトにし、心地よい空間と素晴らしい眺望を楽しめる「サザンタワーダイニング」がグランドオープンしました。

奥のエリアは55席のレストランゾーンとして、落ち着いた空間の中でゆっくりコース料理を楽しむエリアとなりました。手前のエリアは67席のバルゾーン。バーカウンターとスタンディングテーブル、オープンキッチン、景色を望める窓に向いたカウンターテーブルなど、様々な利用シーンで利用できる空間が設けられています。

料理長は岡本省三氏、レストラン担当シェフは石川篤志氏、ペストリーシェフは鎌内由希子氏。ペストリーチームのパティシエは全員女性となっています。全面オープンキッチンに改装し、料理人もパティシエも接客するようになったことで、より親しみのあるダイニングとなりました。

岡本氏が自ら訪れて視察した宮城県女川と熊本県の食材にこだわっています。現地でおいしいと紹介されたことから、宮城県女川のホヤが様々な料理に使われるようになったり、熊本県のあか牛が提供されるようになったりしています。料理はアラカルトで提供されているので、好きなものを選んで、みんなでシェアして楽しく食べるスタイルです。

「オードブルバリエ」と「シェアデザート」はショーケースから季節によって変わるメニューを選ぶことができ、3品か5品かによって値段が変わります。前菜では青森県坂本養鶏のブランド卵「にっこり・もっこり 福々たまご」や宮城県女川産の魚介類を使ったメニューは常に用意されています。

駅からの立地がよいことでもともと重宝されていましたが、シェアスタイルや盛り合わせメニューをコンセプトにしたバルゾーンによって、さらに気軽に利用できるレストランになっています。

鉄板焼 浜木綿(グランドニッコー東京 台場)

神戸牛モモ肉のコンフィ 筍とモリーユ茸@鉄板焼 浜木綿(グランドニッコー台場 東京)(著者撮影)
神戸牛モモ肉のコンフィ 筍とモリーユ茸@鉄板焼 浜木綿(グランドニッコー台場 東京)(著者撮影)

2018年4月1日、グランドニッコー東京 台場に「鉄板焼 浜木綿」がリニューアルオープンしました。2018年2月13日からリニューアル工事のため一旦休業していましたが、2ヶ月近くの大改装を経て、新しく生まれ変わりました。

最上階30階、地上100メートルから東京ベイを一望できるのは以前と変わりませんが、以前よりも灯りを暗くし、客が身に着けるエプロンは紺(昼は白、夜は紺)、コックコートが黒になったことにより、夜景がよりはっきりと見えるようになりました。店内は暗くなりましたが、テーブルの上に新しく照明を設置したので、手元が明るくなり、食べるのに不便はありません。

4~8人で利用できるプライベート空間「Chef’s Table」が新しく設けられました。鉄板焼では横並びとなるカウンター席が普通ですが、4人と4人が向かい合う形のテーブルとなっています。そのため、同席者と顔を見合わせて会話を楽しむことができるのです。

シェフは2017年3月に就任した川上健朗氏、支配人 シェフソムリエは似内利徳氏です。独自のルートを開拓して、神戸ビーフのサーロインとフィレを安定して提供できるようにしたり、川上氏が千葉県八街に視察へ行って野菜を探したり、似内氏が収穫の手伝いから関わったプライベートワインを作り上げたりしました。

「神戸牛モモ肉のコンフィ 筍とモリーユ茸」では前菜から神戸ビーフやフランスの高級食材であるモリーユ茸が贅沢に用いられています。「蛤 メバル ホワイトアスパラガスのカルタファタ包み」は230度まで耐熱性のあるカルタファタで包み、旨味を閉じ込めました。どのコースでも料金を追加すれば、神戸ビーフへとグレードアップできます。

安定的に供給できるようになった神戸ビーフを軸に据え、東京を一望できる強みをより生かし、これまでよりもさらに上質な鉄板焼に生まれ変わっています。

ザ タヴァン グリル&ラウンジ(アンダーズ 東京)

スノーエイジング 北海道産 シャトーブリアン@ザ タヴァン グリル&ラウンジ(アンダーズ 東京)(著者撮影)
スノーエイジング 北海道産 シャトーブリアン@ザ タヴァン グリル&ラウンジ(アンダーズ 東京)(著者撮影)

2018年4月16日アンダーズ 東京51階に「ザ タヴァン グリル&ラウンジ」がリニューアルオープンしました。グリルを楽しめるダイニングへと変わり、雪国古来の熟成技術「雪室熟成(スノーエイジング)」にとことんこだわり、肩肘を張らず気軽に和やかに食事とお酒を楽しめる空間となっています。

2017年12月総料理長に就任したショーン・キーナン氏は日本語が堪能で、日本の食材にも造詣が深いです。今回のリニューアルにあたっては、全てのメニューをゼロから考えて作り上げました。専門がフレンチながらも、イギリス、日本を始めとしたアジアなど、世界の食文化の影響を強く受けているオーストラリアで育ったことから、調理法、食材において幅広い知識と経験を持ち合わせています。

360度全方向から均一に火を通すことができる高温のグリルオーブンを新しく設置し、スノーエイジングされた肉の旨味を閉じ込め、よりジューシーに焼き上げられるようになっています。底に置かれたラバストーン(溶岩石)によって、肉から落ちた余分な脂がスモークとなって立ち上り、肉を燻して味わいを増していることも特徴的でしょう。

「フォアグラテリーヌ ラムレタス 奈良漬け マンゴーピューレ」はフォアグラのテリーヌの周りには奈良漬けが巻かれています。

「スノーエイジング 北海道産 シャトーブリアン F1」は希少な部位である国産牛のシャトーブリアンを新潟県の雪室で熟成させた、他ではめったに食べられないグリル料理です。

「スノーエイジング ガーリックマッシュポテト」は3ヶ月間も雪室熟成させた男爵芋をマッシュポテトにし、甘味も強くなっています。

新しいグリルオーブンを設けただけではなく、スノーエイジングという東京のホテルでは初めての試みも取り入れたことによって、新しい付加価値を生み出しています。

確実に変わっているホテルのレストラン

2020年の東京五輪へ向けて、2018年1月22日にはハイアット セントリック 銀座 東京が銀座並木通りにオープンしたり、2019年春にはホテルオークラの本館がリニューアルオープンする予定であったりと、ホテルの話題はまだまだ尽きることがありません。

こういったラグジュアリーホテルは、寝る場所さえ確保できればよいというビジネスホテルや民泊とは異なり、食とは切っても切れない関係にあります。

「ミシュランガイド」や「世界のベストレストラン50」および「アジアのベストレストラン50」から「食べログ」や「Retty」など、様々なレストラン評価のメディアで町場のレストランが高い評価を得ている中で、ホテルのレストランが競争力を保っていくためには変わっていかなければなりません。

そういった状況でホテルは、強みとする安定かつ高品質の食材からポテンシャルをより引き出したり、最先端の什器や先進的な試みを導入して肉のおいしさを高めたり、シェアスタイルやジャンルの融合といった従来のホテルらしからぬ斬新さを発揮したりと、レストランの魅力が高まるリニューアルを施しています。

新しくなったホテルのレストランは確実に素晴らしくなっているので、引き続き注目していきたいです。

グルメジャーナリスト

1976年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。ファインダイニングやホテルグルメを中心に、料理とスイーツ、お酒をこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口で分かりやすい記事を執筆。審査員や講演、プロデュースやコンサルタントも多数。

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