佐川理財局長の再来を演じる大塚内閣府官房長の「桜を見る会」

フーテン老人世直し録(475)

霜月某日

 先週金曜日の参議院予算委員会をテレビで見たフーテンは、共産党の田村智子議員が安倍総理主宰の「桜を見る会」を追及したことに注目した。そしてその夜のテレビニュースが満足に取り上げないのを「不思議だ」とブログに書いた。

 それが今週になると一転して「桜を見る会」報道が「花盛り」である。ただ報道内容は総花的で何が問題なのかが絞られていない。安倍総理の後援会が特別に優遇され、税金を使って有権者サービスを行ったことが問題なのか、内閣府が名簿をすべて処分したと言って「隠蔽」を図ったことが問題なのか、それとも政府の公的行事に与党議員の支持者が招待されていることが問題なのか。

 前回のブログでフーテンは前の二つを問題にした。安倍総理は舛添元東京都知事と同じく「せこい感覚」の持ち主で公私の区別がつかない。また国会で答弁に立たされた内閣府の大塚官房長は、まるで「森友疑惑」での佐川元理財局長と同じく「文書破棄」を明言した後、自席に戻る姿にひきつったような印象を受けたと書いた。

 ところが政府の行事に与党議員の支持者らが招待されていることをメディアが問題視したことから、自民党の二階幹事長は「当然のことで何か問題があるか」と反論し、その発言に対する批判が燃え上がって、与党議員の招待枠が最大の問題に浮上しつつある。

 公私の区別がつかない総理や、「隠蔽」を図る政府の行動より、政府行事の招待者の決め方に問題があるとなれば、政府の対応は簡単だ。菅官房長官は早速招待基準の見直しを検討すると発言して収拾しようとしている。しかしこの問題はそういう問題なのだろうか。

 総理主宰の「桜を見る会」は昭和27年4月に吉田茂が始めた。その年の4月28日に日本はサンフランシスコ平和条約を締結して連合国軍の占領支配から脱したので、おそらく吉田は主権回復を祝いたい気持ちから、皇室主宰の「観桜会」を真似し、皇族や各国大使、閣僚や国会議員を招く「桜を見る会」を催したとフーテンは推察する。

 明治14年に始まった「観桜会」は、皇室が国際親善を目的に吹上御所や浜離宮、そして新宿御苑へと場所を移しながら昭和13年まで続いた。吉田にとって「桜を見る会」は、戦争で中断された行事を、占領軍の支配下から脱した年に内閣が主体となって復活させる格別の思いがあったと想像する。

 その3年後に自民党と社会党が対峙する「55年体制」が生まれ、それは同時に自民党が万年与党、社会党が万年野党の役割を担うことで米国の要求をけん制し、軍事より経済を優先する戦後日本政治をスタートさせた。

 内閣府が名簿は処分したと言っているので、どんな人が招待されていたかを調べることは困難だが、おそらく昔から与党政治家の関係者や、あるいは野党政治家の関係者も招待されていたのではないかと想像する。

 昔は今の安倍政権のように政府・与党が野党を敵視することはなかった。表では対立するが裏では手を繋いで米国をけん制する役割を担ったのが自社で、経済復興を第一に考える同志的存在であった。戦後復興のシナリオを書いたのはマルクス経済学者の有沢広巳で、吉田にはマルクス経済学者大内兵衛や社会党左派の和田博雄などのブレーンもいた。

 つまり与野党を問わず政治家の後援者らが招待される枠はあったかもしれない。ただしそれなりの節度は守られていたと思う。それは「55年体制」が終わった後も続いたのではないか。

 因みに「桜を見る会」の出席者数を見ると、小泉政権の2004年までは8000人だった。それが小泉政権末期に増え始める。郵政選挙を仕掛けた05年は8700人、06年には1万1000人に増えた。

 第一次安倍政権はその数を踏襲し、次の福田政権は1000人減らして1万人、麻生政権が1000人戻して1万1000人、民主党の鳩山政権が再び減らして1万人にした。その後は東日本大震災があったために中止され、それを復活させたのが第二次安倍政権である。

 13年に1万2000人から始まり、年々1000人規模で増やし、今年は1万8200人とかつての倍になった。つつましくという言葉が適切かどうかは分からないが、それなりに前例踏襲してきたのを変えたのは小泉政権、それを見たからか大胆に増やしたのは歴代でも安倍総理しかない。

 米国政治を見てきたフーテンの感覚で言えば、最大の問題は政治家の関係者に招待枠があることではない。政府が「隠蔽」を図ることである。これは民主主義にとってあってはならない深刻な問題で、米国なら大統領弾劾の理由になる。ニクソンはそれで大統領を辞任した。

 民主主義の基本は、税金で働く官僚が税金を使って作成した文書を国民の代表に黙って勝手に廃棄することは許されない。大塚官房長は内閣府のルールで「桜を見る会」が終われば名簿は破棄すると答弁したが、日本のメディアにはそれを信ずるほどバカな記者が多いと考えているのだろうか。

 第一に破棄するメリットが分からない。膨大な文書と言うが、官僚組織が紙媒体しか使っていない遅れた組織であるはずがない。しかも処分すれば来年の招待者リストを作成することが面倒になる。そんな馬鹿なことをやる官僚は即刻クビにするしかない。

 大塚官房長は「森友疑惑」の佐川理財局長の再来なのだ。佐川理財局長は安倍総理が「森友学園の土地の購入に私や妻が関わっていたら総理も議員も辞める」と発言したことの尻拭いをさせられた。大塚官房長も「せこい」総理の尻拭いをやる貧乏くじを引いたのである。

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「フーテン老人は定職を持たず、組織に縛られない自由人。しかし社会の裏表を取材した長い経験があります。世の中には支配する者とされる者とがおり、支配の手段は情報操作による世論誘導です。権力を取材すればするほどメディアは情報操作に操られ、メディアには日々洗脳情報が流れます。その嘘を見抜いてみんなでこの国を学び直す。そこから世直しが始まる。それがフーテン老人の願いで、これはその実録ドキュメントです」

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1969年TBS入社。ドキュメンタリー・ディレクターや放送記者としてロッキード事件、田中角栄、日米摩擦などを取材。89年 米国の政治専門テレビC-SPANの配給権を取得。日本に米議会情報を紹介しながら国会の映像公開を提案。98年CS放送で「国会TV」を開局。07年退職し現在はブログ執筆と政治塾を主宰■「田中塾のお知らせ」12月17日(火)19時~21時 場所:東京都大田区上池台1-21-5スナック「兎」(03-3727-2806) 東急池上線長原駅から徒歩5分■参加費:1500円 ■申込先:agoto@K6.dion.ne.jpに住所氏名明記で

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