平昌オリンピックは歴史の転換点になるか?

フーテン老人世直し録(354)

如月某日

 平昌オリンピックは歴史に残る大会になる可能性がある。開会式に北朝鮮の独裁者金正恩委員長の妹金与正氏が出席して注目されたが、閉会式には米国の暴君トランプ大統領の娘イバンカ氏が出席してこちらも注目を集めることになる。

 二人は独裁者と暴君からそれぞれ自分の意を体する代理人として派遣され、それが韓国の文在寅大統領と会うことで、米国と北朝鮮のトップが韓国を介して接触したという意味を持つ。

 それはこれから長い時間をかけて行われる米朝対話のスタートを意味するとフーテンは思う。ただし米朝対話を望まない強硬派が米国にも韓国にもいることから一直線に対話が進むことはない。紆余曲折はあるが、しかしこれまで報道されてきた事実を重ね合わせるとそのような道筋が見えてくる。

 日本のメディアには「極悪非道の北朝鮮に韓国の文政権が取り込まれ日米韓の同盟関係に楔が打ち込まれる」と懸念する論調が多いが、それは「憲法9条があるから日本の平和は守られてきた」と主張する左翼や「日米同盟があるから米国は日本を守ってくれる」と主張する右翼と同じで、国際社会の現実を知らない子供じみた見方である。

 まず北朝鮮が極悪非道ならこれ見よがしに核実験やミサイル実験を行うはずがない。こっそり核兵器を開発し、完成させた後で他国に脅しをかける。これが極悪非道の「ならず者国家」のやり方である。ところが北朝鮮はまだ十分に完成もしていない段階からいちいち実験映像を国際社会に見せびらかしてきた。目的は何かを考えなければならない。

 秘かに核開発をしたと見られる国はイスラエルである。かつてフーテンはイスラエルの諜報機関モサドの長官を務めた人物から「それが抑止力なのだ」と教えられた。相手から攻撃されないために「持っている」と思わせるが、持っていることを認めていないので他国を脅すこともしない。それが「抑止力としての核だ」と元モサド長官は言った。

 北朝鮮はこれとは異なる。他の核保有国と比較しても低レベルの段階から国際社会に実験を見せつけて批判を浴びてきた。目的は何か。米国との対話を実現したいからである。休戦状態にある米韓との戦争を終わらせたい。ところが米国に無視され続けてきた。

 それが去年、北朝鮮は核・ミサイル開発のスピードを上げ、ついに核爆弾が米国本土に届く一歩手前まできた。その一歩手前で核・ミサイル開発から外交に力点を移したことを示すのが独裁者の妹の韓国派遣である。通常なら党の幹部か官僚でも良かった親書の手渡しを妹にやらせた。妹は金正恩自身を意味する。

 その意図はトランプ政権に伝わったと思う。開会式に出席したペンス副大統領はすぐ近くに座っていた金与正氏を「あえて無視」した。米国内の強硬派の反発を考慮したからである。しかし帰りの飛行機で一人の記者だけに「対話の可能性」を示唆した。

 三人以上大勢の前で話すことは「タテマエ」で、二人だけの会話は「ホンネ」だというのが取材の常識である。大勢の前では「北朝鮮無視」を貫くが、韓国の文大統領から「予備的対話」を促され、それを報告するとホワイトハウスから「交渉ではなく米国の強い姿勢を示すための対話」という方向が示された。それを親しい記者に語ったのだと思う。

 従って「北朝鮮の非核化」を前提に「最大限の圧力をかけながら」、しかし「米国の強い姿勢を分からせる」ため「米朝間で予備的対話」が行われる見通しが生まれたとフーテンは判断する。だとすればこれから何が起きるか。

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「フーテン老人は定職を持たず、組織に縛られない自由人。しかし社会の裏表を取材した長い経験があります。世の中には支配する者とされる者とがおり、支配の手段は情報操作による世論誘導です。権力を取材すればするほどメディアは情報操作に操られ、メディアには日々洗脳情報が流れます。その嘘を見抜いてみんなでこの国を学び直す。そこから世直しが始まる。それがフーテン老人の願いで、これはその実録ドキュメントです」

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1969年TBS入社。ドキュメンタリー・ディレクターや放送記者としてロッキード事件、田中角栄、日米摩擦などを取材。89年 米国の政治専門テレビC-SPANの配給権を取得。日本に米議会情報を紹介しながら国会の映像公開を提案。98年CS放送で「国会TV」を開局。07年退職し現在はブログ執筆と政治塾を主宰■「田中塾のお知らせ」9月25日(火)19時~■場所:東京都千代田区神田神保町2-7芳賀書店ビル5F神保町駅前会議室(地下鉄神保町駅A1出口徒歩1分)■会費:1500円■申し込み先http://bit.ly/129Kwbp

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