北朝鮮のミサイル発射はトランプ政権に対する強烈なカウンターパンチ

フーテン老人世直し録(302)

皐月某日

北朝鮮が14日早朝に行った新型ミサイルの発射実験は米国のトランプ政権の外交軍事戦略に対する強烈なカウンターパンチである。軍事圧力を加えながら話し合いも認める硬軟織り交ぜたトランプ大統領の要求を金正恩委員長は一顧だにしなかった。

メディアは北朝鮮の金正恩委員長が中国の習近平国家主席の顔に泥を塗ったと報じているが、深刻な打撃を受けたのは米国のトランプ大統領である。米国内ではトランプ政権とロシアとの不適切な関係について追及が続いており、そのうえ北朝鮮問題の対応を誤れば命取りになりかねない。

トランプ政権の外交軍事戦略とは「世界の警察官」としての役割を他国に肩代わりさせることで、その点ではオバマ前政権と全く変わらないのだが、それをいかにもオバマ前政権とは異なる形で見せつけようとするところにある。

大統領選挙の最中からトランプは「IS(イスラム国)の殲滅」を声高に叫び、そのためにロシアとの協力関係が必要だとして、ロシアが後ろ盾となりISと戦うシリアのアサド政権存続を容認する発言を繰り返していた。

アサド退陣を要求しながら「弱腰のために何もできなかった」オバマ政権との対比を国民に見せ、またウクライナ問題で米ロ冷戦に逆戻りしたオバマ時代とは対照的にロシアと協力関係を結ぶことでIS殲滅をロシア軍に肩代わりさせようとした。

ところが選挙戦の最中にトランプ陣営がロシア政府と不適切な関係を構築していた疑惑が浮上し、FBIや議会が調査に乗り出したことから、側近のフリン大統領補佐官を更迭せざるを得なくなり、さらに懐刀である娘婿のクシュナー大統領顧問までもが調査の対象にされた。トランプ大統領は一時的にでもロシアとの関係悪化を見せる必要が出てきた。

そのためだと思うが、米中首脳会談の最中にトランプ大統領はシリアが化学兵器を使用したとして突然ミサイル攻撃を行い、それを習近平国家主席に見せつけることで、もう一つの焦点である北朝鮮の核ミサイル開発を中国に抑えるよう求めたのである。

北朝鮮問題に「戦略的忍耐」を貫いたオバマ政権とは異なり、中国が抑えないなら米国が直接軍事介入する可能性を匂わせ、しかしあくまでも中国の力によって北朝鮮に核ミサイル開発を断念させようとしたことは、これも肩代わりの一つである。

トランプ政権は軍事力2位のロシアと3位の中国をそれぞれ中東と北朝鮮の脅威に対応させ、自らの軍事的役割を一歩引いたものにしようと考えた。その見返りに中国に対し経済面での強硬姿勢を緩和することを約束した。

従って中国は北朝鮮に対し石油の禁輸など一定程度の圧力をかけるが、しかし一方で北朝鮮の存在は中国にとって対米関係を有利にできる切り札となる。であるならばなるべく存続させた方が得策である。それは隣国ロシアにとっても同様だ。この問題では中露が水面下で提携することが大いにありうる。

そうしたところ韓国に親北派の文在寅大統領が誕生した。「条件が整えば金正恩委員長と会談する用意がある」と公言している。北朝鮮にとって好ましい韓国大統領の誕生直後、また中国の習近平国家主席が最大の課題と位置付ける「一帯一路国際フォーラム」の初日にぶつけて金正恩委員長は新型ミサイルを発射した。

それは事前の準備からすべて米国の監視衛星に見せつけながら行った模様である。北朝鮮が準備に取り掛かったのは12日夜で、亀城(クソン)付近の飛行場に発射台を移動させ、13日未明にかけてミサイルを直立させ、24時間以上たった14日朝に発射した。ミサイルは上空2111キロに達し、787キロ離れた公海上の目標に正確に落下した。

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1969年TBS入社。ドキュメンタリー・ディレクターや放送記者としてロッキード事件、田中角栄、日米摩擦などを取材。89年 米国の政治専門テレビC-SPANの配給権を取得。日本に米議会情報を紹介しながら国会の映像公開を提案。98年CS放送で「国会TV」を開局。07年退職し現在はブログ執筆と政治塾を主宰■「田中塾のお知らせ」2月25日(火)19時~21時 場所:東京都大田区上池台1-21-5スナック「兎」(03-3727-2806) 東急池上線長原駅から徒歩5分■参加費:1500円 ■申込先:agoto@K6.dion.ne.jpに住所氏名明記で

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