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「トカゲのしっぽ」が反撃に出て「窮鼠猫を噛む」の幕が上がる

田中良紹ジャーナリスト

フーテン老人世直し録(290)

弥生某日

「しっぽ」の反撃が国民の目を問題の本質に向けさせることになるのだろうか。森友学園の国有地払い下げ問題は「しっぽ切り」の対象とされた籠池理事長が反撃に出たことで疑惑は膨らむ一方だ。

この問題が国会で取り上げられた時、安倍総理、稲田防衛大臣、財務省、国土交通省、大阪府知事は揃って普通ではない反応を見せた。

安倍総理は野党の質問に異様なほど気色ばみ、稲田防衛大臣も否定の仕方が強すぎて尋常ではない。そして財務省は記録をすべて破棄したと言い、知らぬ存ぜぬを貫き通そうとする。何かがなければありえない反応で、政権が吹っ飛ぶほどの深刻な問題だとわざわざ告白しているようなものだった。

であるならば安倍政権はどんな手段を使ってでもこの問題を国民の目から遠ざけようとするだろう。そのやり口をとくと拝見させてもらい、そのどこにスキがあるかを見極めようと最初の段階でフーテンは思った。

安倍政権が最初に言い出したのは会計検査院に調査をさせる方針である。しかしすべての記録を破棄したのだから満足な調査などできるはずはない。時間を稼いで国民の目から遠ざけうやむやにする手口が丸見えである。

フーテンは行政府ではなく立法府が国政調査権に基き調査を行うのが一番良いと思ったが、立法府は巨大与党に支配され、籠池理事長の参考人招致は自公によって拒否され続けた。

その理由が噴飯もので「違法行為が明確でなく民間人だから」というが、ロッキード事件でもリクルート事件でも国会は違法行為が明確でない民間人を証人喚問した。そして検察は国会での偽証を理由に民間人を逮捕した。ところが今回はできないというのだ。

ただフーテンは籠池理事長を逮捕させれば良いと考えている訳ではない。検察も警察も官邸の意向通りになる捜査機関だから、むしろ口封じに利用される可能性がある。そう思っていると「日本維新の会」が参考人招致に前向きな姿勢を示し始めた。

なるほど「日本維新の会」代表の松井大阪府知事はこの問題の疑惑の本丸にいる。それを考えると「日本維新の会」が籠池理事長を「しっぽ切り」したいのは分かる。大阪から籠池理事長に対する刑事告発の声が出てくるのもそうした事情だろう。

一方で安倍政権も「しっぽ切り」をしたい。鴻池参議院議員が暴露したのはその流れだとフーテンは思う。悪いのは籠池夫妻で安倍夫妻は被害者という印象操作である。しかしそれよりもフーテンは安倍政権が籠池氏になにがしかの利益を与え、その代わりすべての責めを負うことを約束させるとばかり思っていたのだがその形跡がない。

それどころか籠池氏は思想的に同志である稲田防衛大臣、安倍総理、松井大阪府知事を批判する動画をネット上に投降し、また保守派の人間は誰も助けてくれないと不満を漏らすようになった。そしてこれまで批判の対象としてきたTBSや作家の菅野完氏らの独占取材に応ずるようになる。

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ジャーナリスト

1969年TBS入社。ドキュメンタリー・ディレクターや放送記者としてロッキード事件、田中角栄、日米摩擦などを取材。90年 米国の政治専門テレビC-SPANの配給権を取得。日本に米議会情報を紹介しながら国会の映像公開を提案。98年CS放送で「国会TV」を開局。07年退職し現在はブログ執筆と政治塾を主宰■オンライン「田中塾」の次回日時:5月26日(日)午後3時から4時半まで。パソコンかスマホでご覧いただけます。世界と日本の政治の動きを講義し、皆様からの質問を受け付けます。参加ご希望の方は https://bit.ly/2WUhRgg までお申し込みください。

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