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“フィギュアスケート解説の達人”・八木沼純子に聞く、フィギュア音楽の魅力と楽しみ方

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
全写真提供/BSフジ

ますます盛り上がるフィギュアスケートシーン

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ますます盛り上がりを見せるフィギュアスケートシーン。男子は羽生結弦、宇野昌磨、田中刑事他、女子は紀平梨花、宮原知子、坂本花織、本田真凜他ら、世界で活躍するスター選手がまさにキラ星のごとく揃い、ファンの目を釘付けにしている。そんなフィギュアスケートをより楽しく、深く楽しむためのプログラムがBSフジ『フィギュアスケートTV!』(毎月第1金曜日23:00~)だ。放送が50回を超えた、この人気番組のメインパーソナリティは、元オリンピック代表選手で、“フィギュアスケート解説の達人”の異名をとる八木沼純子。一昨年、この番組についてインタビューし、その際、番組から派生した『フィギュアスケートTV!クラシカルコンサート』についても話を聞いたが、今年も4月13日『フィギュアスケートTV!クラシカルコンサートVol.2』が東京・かつしかシンフォニーヒルズ モーツァルトホールで開催される。改めてフィギュアスケートと音楽の関係について、そしてそれをつなぐ『フィギュアスケートTV!クラシカルコンサートVol.2』について、八木沼に話を聞いた。

昨年の第1回目の『フィギュアスケートTV!クラシカルコンサート』を振り返り、「みなさんが笑顔で帰ってくださったのが印象的だった」

「前回は第1回目だったので、正直、どんなコンサートになるのだろうかという不安もありました。でも参加してくださったアーティストの皆さんは、フィギュアスケートに非常に興味を持ってくださっている方ばかりで、お客様の割合も、フィギュアファンの方と音楽ファンの方、半々でした。すごく嬉しかったですし、思い描いていた理想の形です。フィギュアスケートで使う曲は知らなくても、そのアーティストのファンの方々が、彼らが歌うとこういう感じになるんだとか、フィギュアスケートではこんな曲も使うのか、などの色々な気づきもあったり。楽しんでいただけたのではないかと…。みなさん笑顔で帰ってくださったのが印象的でした」。

日野真一郎(LE VELVETS)
日野真一郎(LE VELVETS)
佐賀龍彦(LE VELVETS)
佐賀龍彦(LE VELVETS)
神谷悠生(P)
神谷悠生(P)

昨年4月に行われた第1回目の『フィギュアスケートTV!クラシカルコンサート』は、ボーカルグループLE VELVETS、バイオリニストNAOTO、ピアニスト神谷悠生が出演し、八木沼がMCを務めた。今年は昨年に引き続き、LE VELVETSから日野真一郎、佐賀龍彦、ピアノ神谷悠生が出演し、そして世界的ソプラニスト岡本知高が出演する。

岡本知高
岡本知高

「今年は去年も出演してくださったLE VELVETSさんから、日野真一郎さん、佐賀龍彦さんが参加してくださり、それからなんといっても、フジテレビ系列のフィギュアスケート番組のテーマソング「ボレロ」を歌ってくださっている、岡本知高さんが参加してくださいます。会場が熱いパワーで満たされると思います。岡本さんと他のアーティストの方も相乗効果もあると思いますし、昨年とはまた違ったコンサートになりそうな気がしていて、今からワクワクしています。岡本さんはフィギュアスケートにも造詣が深い方で、3月20日は『世界フィギュアスケート選手権』のオープニングセレモニーで、生歌でボレロのニューバージョンを披露し、それに合わせプロフィギュアスケーターの無良崇人さんが滑るというコラボを見せてくれます(インタビューは「世界選手権」前)。「世界選手権」をきっかけにして、このコンサートにも興味を持っていただき(笑)、足を運んでいただけたら幸いです。今回も前回同様、フィギュアではおなじみの曲、特に日本選手が活躍した大会で使っていた楽曲や、オリンピックで印象に残っている選手が演技の時に使用していた曲が、多いと思います。出演アーティスト同士のコラボレーションも楽しみです」。

フィギュアスケート選手の音楽の選び方

フィギュアスケートの採点方法の中に、プログラム全体の芸術性、表現力を採点する「演技構成点」があるが、それは「スケート技術」「要素のつなぎ」、そして「パフォーマンス」「振り付け」「音楽の解釈」という項目がある。音楽が大きく関係し、その重要性がわかる。選手たちはどのように音楽を選ぶのだろうか。

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「オリンピックに向けて4年間、選手は引き出しを増やすために、色々な楽曲で滑ることが多いです。ひとつは自分が得意としている、得点、評価が高かったジャンルの音楽、もうひとつはチャレンジする曲。それらを一年一年試行錯誤を重ねて、オリンピックの前の年に、なんとなく形を作って、本番に臨むという人が多いと思います。振り付けをどう体現できているか、音楽を使ってその選手がどう解釈しているか、というところにも続いていくので、やはり音楽のチョイスは大切になってきます。どういう音楽を選ぶのかは、もちろんスケートに合う、合わない、滑りやすい、滑りにくいという判断ですが、そんな中で、過去に強い選手が使っていた曲で、多くの人の印象に残っている曲を、自分だったらこう表現してみたいと使う人もいます。「カルメン」もこれまで色々な選手が使ってきていますし、「ボレロ」(ラヴェル)もそうですし、紀平梨花選手が『2018グランプリファイナル』で当季世界最高得点を叩き出した「月の光」(ドビュッシー)などもそうです。ファンにとっては「○○の「ボレロ」、○○の「月の光」がいい」という好みもあると思います。その曲を聴いて思い出す選手も、ファンによってそれぞれだと思います。選手にもそれはあると思います。自分より上の世代の、オリンピックや世界選手権を賑わせていた選手たちが使っていたあの曲がいい、あのステップ、振り付けがいい、というのもあると思います」。

「このコンサートはフィギュアファン、音楽ファン、みんなで楽しむことができる」

そんなおなじみの曲が今回のコンサートでも数多く披露される。

「前回とてもアットホームなコンサートになり、できれば今回も、それぞれのファンの皆さんがお互いに楽しめるような、そんな世界観を作れたらと。温かい空気の中で、音楽とフィギュアとを融合させて、みんなで楽しむことができるコンサートになればと思っています。これを機会に色々なアーティストの音楽に興味を持っていただいたり、フィギュアスケート関連の音楽をさらに聴いていただいて、今度は大会やアイスショーを観に行ってみよう!と、次につながっていったら嬉しいです。その役割を担うのが『フィギュアスケートTV!』だと思っています」。

放送が50回を超えた『フィギュアスケートTV!』「フィギュアスケートの魅力を色々な角度から見せる、草の根運動隊的存在でありたい」

フィギュアスケートシーンがますます盛り上がる中、同様に番組もますます注目を集め、放送50回を超えた。

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「どんどんマニアックな方向に走りがちになるので(笑)、私のスタンスとしては常に中立の立場でいることを心がけています、でも自分自身も選手としてやってきたバックボーンがあるので、これからもフィギュアスケートの面白さを色々な角度から解説、紹介していきたいです。今まで、フィギュアスケートにそんなに興味がなかったという人にも興味をもっていただけるよう、フィギュアスケート草の根運動隊として、そんな存在でいることができたら、一番いいと思います。『フィギュアスケートTV!クラシカルコンサート』も、もちろん番組と地続きの、大切な「場所」です」。

BSフジ『フィギュアスケートTV!クラシカルコンサートVol.2』特設サイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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