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JYP初のバンド・DAY6「心がこもった音楽を作り、心を込めて歌うことが一番大切」

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
すでにワールドツアーを経験済みの5人が考える、日本で成功するために必要なこと
『UNLOCK』(10月17日発売/初回限定盤)
『UNLOCK』(10月17日発売/初回限定盤)

日本を始め、世界中でその勢いはとどまることを知らないK-POP人気。そんな中、すでにワールドツアーを行い、アジア、オーストラリア、カナダ、アメリカ、ヨーロッパで熱狂のライヴを繰り広げてきた5人組ロックバンド・DAY6が、3月に日本デビューを果たし、注目を集めている。DAY6は、2PM、GOT7、 TWICE、らが所属するJYPエンターテインメントが手掛ける、初のバンドだ。バンドは韓国の音楽シーンでも珍しく、日本でもダンス&ボーカルグループが百花繚乱の中、バンドデビューしているアーティストは少ない。DAY6は2015年に韓国でデビューした後、世界で経験を積み、満を持して日本デビューを果たした。全員が曲を作り、4人がボーカルをとれるのが強みだ。3月に1stシングル「If ~また逢えたら~」をリリース、そして6月に韓国での作品を中心に構成したベスト盤『THE BEST DAY』、7月には生形真一(Nothing’s Carved In Stones,ELLEGARDEN)プロデュースで2ndシングル「Stop The Rain」をリリース。着実にDAY6の音楽が広がりを見せている。そんな中、JAPAN 1st ALBUM『UNLOCK』を10月17日に発売し、好調だ。DAY6ワールドを全開させたこの作品で、日本の音楽シーンに攻勢をかける。

その大切な1stアルバムについて、メンバーのヨンケイ(B、Vo、Rap)、ソンジン(リーダー/Vo、G)、ジェイ(G、Vo、Rap)、ドウン(Dr)、ウォンピル(Key、Syn、Vo)に話を聞いた。

事務所に入ってからバンドを結成。「コールドプレイなどバンドが好きだったので、抵抗はなかった。正直、ダンスはそんなに好きではなかったので(笑)」(ウォンピル)

――それぞれが事務所のオーディションを受け、入ってからバンドを結成したとお聞きしました。

ヨンケイ(B、Vo、Rap)
ヨンケイ(B、Vo、Rap)

ヨンケイ ボーカルオーディションで事務所に入って、ある日「君たちは今日からバンドです」と言われ、「はい、わかりました」という感じでした(笑)。

――正直、どう思いましたか?

ヨンケイ 正直、びっくりしました。

ウォンピル 多少驚きはありましたが、ちょうどその時ザ・スクリプトやコールドプレイなどのバンドにはまっていて、そこまで抵抗感はありませんでした。学生時代にバンドをやっていたので、こういう流れになったんだ、という受け止め方でした。正直、ダンスはそんなに好きではなかったので…(笑)。

ソンジン 実は僕は、ボーカリストとして表現していきたかったのですが、でもバンドも面白いんじゃないかと思いました。

ジェイ 僕はバンドをやりたかったので、嬉しかったです。

ドウン 僕もずっとドラムをやっていたので、バンドデビューできて嬉しいです。

――DAY6の武器は、何よりその曲の良さだと思いますが、曲の制作方法を教えてください。

ソンジン(リーダー/Vo、G)
ソンジン(リーダー/Vo、G)

ソンジン 曲によってバラバラなんです。一緒に作業している、クリエイター集団が作ったトラックに、僕たちがメロディをつけたり、歌詞を乗せていくこともあれば、ジェイさんがギターリフを作ったり、ウォンピルさんがトラックを作って、そこにメロディと歌詞を乗せていく場合もあるし、曲によって違います。でも最終的には全員でDAY6らしい音楽に仕上げていきます。

――バラードはもちろん、ミディアムテンポ、アップテンポの曲も必ず「せつない」感じがあると思います。あの「せつない」成分は誰の感性が、一番反映されているのでしょうか?

ヨンケイ 不思議なんですが、最初からそうでした。全員、音楽性は違いますが、そういう感じが好きなのだと思います。

――ウォンピルさんの高い声を中心に、みなさんの声が重なっていくとより、せつなさが増していきます。

ウォンピル 褒めすぎだと思います(笑)。

――事務所に入ってからバンドを結成したということで、それぞれ演奏の腕を磨くのに、相当頑張ったのでは?

ヨンケイ 僕はそれまでギターはやっていたのですが、DAY6を組むことになってからベースを始めたので、とにかく練習練習でした。

ウォンピル 常に新しいことにチャレンジしていっているので、その度に猛練習しなくてはいけないので、大変でした。

――でももう世界中でライヴで行っていて、本番を重ねることが、練習という感じになっているのでしょうか?

ヨンケイ そんなに感じになっています(笑)。

――ではファンの皆さんは、演奏がどんどんうまくなっていく、DAY6の成長過程を見ることができている感じですね(笑)

ウォンピル それも楽しいと思いませんか?(笑)

6月に日本で初ライヴ。「お客さんとどうやったらひとつになれるのか心配でしたが、その心配は不要でした」(ジェイ)

――今年の6月、東京と大阪で日本での初ライヴを行っていますが、その時感じたことを教えてください。

ジェイ(G、Vo、Rap)
ジェイ(G、Vo、Rap)

ジェイ 日本で初めての単独フルライヴだったので、お客さんとどうやったらひとつになれるのか、どんな風にコミュニケーションをとればいいのか、少し心配していました。でもやってみると、そんな心配が全く必要ないくらい盛り上がりました。

――その時々の自分達の感情を詰め込む音源を、再現することにこだわるのがライヴなのか、それとも音源とライヴはまったく別ものと考えていますか?

ソンジン 僕たちは音楽を長く続けたいので、もちろんいい曲をたくさん作って、でもライヴは一番大切なものだと思うので、ライヴを数多く重ねて、ライヴバンドと呼ばれたい。

ヨンケイ 別ですね。ライヴをやるたびに、その日のコンディションや状態によって、表現の仕方や感じ方が変わってくると思います。声も楽器もそうです。5人いるので当然毎回違うものになると思うし、そういう違いをきちんと表現できることが、ライヴの醍醐味だと思います。

ウォンピル 例えば僕らが3年間ライヴで必ずやっている「Congratulations」という曲があるのですが、実はこっそり音に変化をつけています。

ヨンケイ 僕もです(笑)。

ウォンピル ベースのリフがメインになっている曲があるのですが、最近、演奏途中でヨンケイさんが完全に音を変えてきて、でもそれが快感というか面白かったし、曲によってはそうやってみんなが遊ぶので、それがすごく楽しい。

ドウン 実はすべての曲でみんなすこしずつ変えているんです(笑)。だからよく間違えることもあります(笑)。

ジェイ やはり音源をよりダイナミックに、躍動感あふれる音にするのがライヴだと思って、演奏しています。

「プロデューサーの生形真一さんとの作業は、本当に楽しく、エキサイティングで、とても勉強になった」(全員)

――生形真一さん(Nothing's Carved In Stone, ELLEGARDEN)プロデュースの2ndシングル「Stop The Rain」は、DAY6史上最もビートが太くて、重厚感があるサウンドが聴けます。

ウォンピル(Key、Syn、Vo)
ウォンピル(Key、Syn、Vo)

ウォンピル 生形さんと膝を突き合わせて作り上げた曲ですが、本当に楽しく、エキサイティングな時間でした。意見を色々聞いてくださって、実際に僕達も色々なアイディアを出しました。カップリングの「Falling」という曲は、元々キーボードのアレンジが決まっていなかったのですが、僕がその場でアレンジを考えて、生形さんに聴いてもらうと、いいねってくださって、そこから一緒にブラッシュアップさせて完成させていきました。そういう時間が僕にとってはすごく貴重でしたし、僕たちと、生形さんのカラーを感じる曲に仕上がってよかったです。

――ギターソロもカッコよかったです。

ジェイ 生形さんと作業させていただいて、本当に勉強になりました。生形さんは僕のギターの先生です。色々なことを気づかせてくれました。

「『UNLOCK』は、日本語詞を書いて歌うので、今までやってきたスタイルを、より深く掘り下げていくことが必要だった」(ソンジン)

――6月にベスト盤(『THE BEST DAY』)をリリースした後、いよいよJAPAN 1st ALBUM『UNLOCK』を発売することが決まり、このオリジナルアルバムを制作するにあたって、まず浮かんできたキーワードは何だったのでしょうか?

ソンジン 韓国では色々な音楽を、自分たちなりに新しく表現するために努力をしてきましたが、日本では新しい場所で、新しいスタートを切るという感覚で、特に日本語詞を書いて歌っていくので、今までやってきた自分達のスタイルを、より深く掘り下げていくことが大切だと強く思いました。

――日本語詞、きっと苦労しましたよね(笑)。

ソンジン そうですね(笑)。

――最初に言った、DAY6の音楽が持つせつなさは、日本語が持つリズムや雰囲気にすごく合うと思います。日本語がしっくりきますね。

ウォンピル 歌うのが難しいですね(笑)。日本語詞で歌うときに、やっぱりフレーズの中でなじみのない展開があると、リズム感がいつも歌っていた調子と違う感じになってきます。予想外の単語や、リズムの取り方が出てきて大変でしたが、発音、イントネーションをスタッフの方にチェックしてもらいながら、なんとか完成させました。

ヨンケイ 特に「つ」と「ざ」の発音が難しいですね(笑)。

「音楽の趣味、得意分野が全員違うので、その時その時必要な武器を取り出し、作品を作っている」(ヨンケイ)

――『UNLOCK』というアルバムタイトルには、バンドも音楽も、何にも囚われないという意味が込められていると思いますが、このタイトルはアルバムを作る前から存在していたのでしょうか?それともレコーディングが終わってから考えたのでしょうか?

ヨンケイ 曲が全部集まってから、決めました。タイトル通り、ジャンルにとらわれない、様々な音楽が、僕たちの強みだと思っています。

――5人いると、音楽の趣味や影響を受けた音楽も、バラバラですよね。でもそれがいい意味でひとつにならずに、逆にそれぞれの音楽のよさを、自分達に音楽に抜群の塩梅で昇華させているのが、DAY6の音楽の魅力だと思います。

ジェイ 武器がたくさん揃っている感じがしています。僕達は全員が曲を作るのですが、その時に強みだなと思うのが、見事に全員の好きな音楽のジャンル、得意分野が違うので、その時必要な武器を取り出している感じです。

――色々なカラーの曲達は、どれも映像がすぐに浮かんでくる感じがします。

ウォンピル 実は僕たち自身も映像を浮かべながら、そのパートのカラーを先にイメージして楽器を決めて、表現していくということもあるので、だからそういう風に感じていただけたのかもしれません。

――武器といえば、4人がメインボーカルをとれるのも、大きな武器ですよね。

ドウン(Dr)
ドウン(Dr)

ヨンケイ 4人に、最近はドウンさんも加わって、「Everybody Rock!」ではメインパートもあります。

ドウン 僕はドラムの方をがんばります(笑)。

ソンジン 不思議なことに、僕達4人はずっと歌を歌ってきたので、どんなメロディも“歌”として歌いますが、ドウンさんの歌は、そのピュアな感じ、ストレートな感情がずばっと伝わってきます。そのパートだけ、歌が際立つ感じがしました。だからこれからもドウンさんをメインパートで使っていきたい(笑)。

ドウン そう言ってくれるのは嬉しいですが、今、僕の心の中は、真っ暗闇です(笑)。

――選ぶのは難しいと思いますが、アルバム『UNLOCK』の中で、推し曲、印象に残っている曲をひとりずつ教えてください。

ヨンケイ 自分で日本語の歌詞も書いたので「Breaking Down」は、やっぱり愛着があります。

ソンジン 「Everybody Rock!」です。色々なものから解き放たれて、すごく遊べる曲だと思うし、聴き終わると変な自信が沸いてくると思います(笑)。気分がよくなる曲。

ジェイ 僕はやはり「Stop The Rain」です。制作現場で学ぶことが多すぎて、ずっと記憶に残る曲だと思います。

ドウン 僕も「Stop The Rain」です。生形さんとの作業を通じて、本当に学んだことが多かったし、僕にとっても新しいスタイルの曲だったので、これからドラムをやっていくうえですごく役に立つ曲だと思います。

ウォンピル「Falling」です。デモ音源の時は、アコギ一本でした。でも聴いた瞬間、アイランドの草原が思い浮かんできました。その感性が素晴らしいと思って、最初からこの曲はすごく好きでした。先ほども出ましたが、生形さんとのレコーディングもすごくいい時間だったので、この曲を挙げたいです。

――どの曲も、やはりライヴを考えた曲の作りだと感じましたが、これからますますライヴを念頭に置いた曲作りになっていくでしょうね。

ジェイ まさに最近の僕たちがそうです。特にライヴを重ねるごとに、エモーショナルなロックサウンドのインパクトって、こんなにも大きいんだと実感しています。ライヴではよりパワフルになるし、お客さんと僕たちが行き来させるエネルギーのボリュームが大きくなるし、もっと情熱的なロックを増やしていきたいと思っています。

「どの国でやっても、歌にどれだけ心が込められているのかが、大事だと思う」(ソンジン)

――DAY6はすでに世界中にファンがいますが、日本のマーケットで成功するには何が必要だと考えていますか?

ジェイ 一番大事に考えているのは、やっぱり言葉の部分です。僕達が日本語をしっかり話せるようになることによって、自分達の考えをそのまま伝えることができます。そういう曲ができれば、ライヴでもきちんと伝えることができると思うので、日本語をマスターすることが必要です。

『UNLOCK』(10月17日発売/通常盤)
『UNLOCK』(10月17日発売/通常盤)

ソンジン 特に「歌詞」がすごく大切だと思っているので、日本語でいい歌詞を書けるようになると、それも武器になると思います。お客さんがライヴに足を運ぶというのは、単に音楽を聴きに来るだけではなく、アーティスト、そしてそこにいる人たちとエネルギーを通い合わせるためだと思っていて。今、僕達は心を込めて歌を歌っていますが、でもその言葉の奥にあるものをきちんと理解して歌うのと、そうでないのとでは感情の乗せ方や、表現が違ってきます。だから「言葉」の部分もしっかり努力していきたい。

ウォンピル 一方で、僕は居場所が違ったとしても、歌にどれだけ心が込められているのかということが大事だと思う。だからあまりその国の文化や情緒といったものを意識しすぎずに、言葉は違っても、いい音楽、心がこもった音楽を作っていきたい。僕たちが海外の英語の音楽を聴いて感動するように、いい曲というのは言葉がわからなくても、多くの人の心に響くので、そういう音楽も作っていきたいと思います。

――ワールドツアーで世界中を回って、やはりその国によって盛り上がる曲、支持が高い曲は違うのでしょうか?

「日本語の言葉の奥にあるものを理解して、歌いたい。一方で僕たちが英語の音楽を聴いて感動するように、いい曲というのは言葉がわからなくても、多くの人の心に響くので、そういう音楽も作っていきたい」
「日本語の言葉の奥にあるものを理解して、歌いたい。一方で僕たちが英語の音楽を聴いて感動するように、いい曲というのは言葉がわからなくても、多くの人の心に響くので、そういう音楽も作っていきたい」

ジェイ 同じような感じがします。例えば「I Loved You」という曲は、どの国でもサビの部分では大合唱になりました。

――10月22日から始まる日本での全国ツアー、どんなライヴにしたいですか?

ソンジン これまで通り、DAY6のエネルギーを思い切り燃やし尽くすようなライヴにしたいです。

DAY6 オフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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