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真木よう子さんが事実婚を発表!~事実婚で「指輪」といっしょに交わしたいこと

竹内豊行政書士
(写真:アフロ)

俳優の真木よう子さんが本日、指輪をつけた手の写真とともに「私にはパートナーシップの相手がいます 事実婚というものですかね。」と事実婚をしていることをご自身のインスタグラムで報告しました(真木よう子、事実婚を発表「私にはパートナーシップの相手がいます」

真木よう子さんはインスタグラムで指輪を付けた写真も公開しています。そこで、事実婚の場合に指輪とともに交わしたいことについてお話ししたいと思います。

事実婚が増える背景

事実婚を選択する方は増えているようですが、その背景には女性の社会進出と経済的自立およびどちらかの姓にしなければならない(このことを「夫婦同氏の原則」といいます)等といった婚姻制度と相いれない考えがあると思われます。

法的保護を享受しにくい

ただし、事実婚では、婚姻届を届出た法律で夫婦と認められたカップルと比べて様々な法的保護を享受しにくいという事実があります。

法律上の夫婦関係ではない

民法の規定では、「婚姻は戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その効果を生ずる」(民法739条1項)とされています。

事実婚は、自分たちの主体的な意思で婚姻届を出さない共同生活を選択したため、「法律上の夫婦」ではありません。

近代的な法制度では、家族の基礎となる婚姻を法の規制と保護の対象とし、婚姻外の関係については、法的規制もしない代わりに法的保護もしないという立場をとっているのです。

法律婚に認められて事実婚には認められないもの

法律上の夫婦は保護されるが、事実婚を選択したパートナーには認められないことの一つに相続権があります。

婚姻関係の夫婦は、お互い「配偶者」として2分の1の相続分があります。婚姻関係にあれば、婚姻関係が破綻して「仮面夫婦」であろうが長期間別居をしていようが相続権はあります。実際に、婚姻関係が破綻していても、配偶者の相続が発生すること(つまり、配偶者の死亡)を期待して離婚しない人もいます。

一方、事実婚を選択したパートナーは、いくら仲良く暮らしていても相続権はありません。したがって、パートナーが死亡した場合、遺産を受け取る権利はありません。つまり、相続分はゼロです。

たとえば、死亡したパートナーの親が存命の場合、親が相続人としてパートナーの遺産を引き継ぎます。親が既に死亡していて兄弟姉妹がいる場合は兄弟姉妹が遺産を引き継ぎます。

もし、男性パートナーとの間に子どもをもうけていれば、その子どもが遺産を引き継ぎます(ただし、男性が認知をすることが条件となります)。

改正相続法でも保護の対象外

2018年7月に40年ぶりに改正された相続法は、残された配偶者(夫が先に死亡した妻を想定)の保護を目的に「配偶者短期居住権」と「配偶者居住権」を設けました。

また、結婚20年以上の夫婦なら、配偶者が生前贈与や遺言で譲り受けた住居は「遺産とみなさない」という意思表示があったとして、遺産分割の計算対象から除外するなど、婚姻20年以上の夫婦に優遇策を設けました。

さらに、相続の不公平感の是正を目的として、相続権のない6親等以内の親族(いとこの孫ら)以内の血族と、3親等(めいやおい)以内の配偶者が介護などに尽力した場合、相続人に金銭を請求できる制度を設けました。 これにより、たとえば、義父を介護してきた「息子の妻」などが請求できるようになります。

ただし、以上の制度は事実婚や内縁など、戸籍上の夫婦でない人は対象外です。

「遺言書」が事実婚のパートナーを守る

このように、事実婚を選択した場合、お互いに相続権は発生しません。事実婚で共同生活を行っていけば、お互いの協力によって財産を築くことも当然あるでしょう。それにもかかわらず相続権がまったくないというのも理不尽のように感じます。

ただし、法は相続人以外の人に遺産を引き継ぐ術を用意しています。それが「遺言」です。

ご紹介したように、婚姻関係にある夫婦と比べて事実婚を選択したパートナーは法的保護がどうしても脆弱です。

大切なパートナーを守る盾として、また愛情の証しとして、事実婚を選択する場合は、指輪といっしょに次のような遺言書をお互いに交わしてみてはいかがでしょうか。

遺言者〇〇 〇〇は、私の全ての財産を△△ △△に遺贈する。

2023年8月26日 〇〇 〇〇 印

遺言者△△ △△は。私の全ての財産を〇〇 〇〇に遺贈する。

2023年8月26日 △△ △△ 印

別れてしまったら・・・

なお、残念ながら別れてしまった場合は残した遺言書はどうなってしまうのでしょうか。死後に遺言の通り別れたパートナーに財産が渡ってしまったら不都合が起きてしまうでしょう。しかし、ご安心ください。次のような遺言書を残せば作成した遺言を撤回することができます。念のため。

遺言者〇〇 〇〇は、本日以前に作成した遺言のすべてを撤回する。

20××年×月×日 〇〇 〇〇 印

行政書士

1965年東京生まれ。中央大学法学部卒業後、西武百貨店入社。2001年行政書士登録。専門は遺言作成と相続手続。著書に『[穴埋め式]遺言書かんたん作成術』(日本実業出版社)『行政書士のための遺言・相続実務家養成講座』(税務経理協会)等。家族法は結婚、離婚、親子、相続、遺言など、個人と家族に係わる法律を対象としている。家族法を知れば人生の様々な場面で待ち受けている“落し穴”を回避できる。また、たとえ落ちてしまっても、深みにはまらずに這い上がることができる。この連載では実務経験や身近な話題を通して、“落し穴”に陥ることなく人生を乗り切る家族法の知識を、予防法務の観点に立って紹介する。

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