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11月22日は「いい夫婦の日」~憲法と民法から見る夫婦円満「11」のヒント

竹内豊行政書士
11月22日は「いい夫婦の日」です。夫婦円満「11」のヒントをご紹介します。(写真:アフロ)

11月22日は「いい夫婦の日」です。

11月22日の「いい夫婦の日」に、タレントの壇蜜さんが、婚姻届を届け出したニュースが報じられました。お相手は、「東京都北区赤羽」「ウヒョッ!東京都北区赤羽」などで知られる漫画家・清野とおるさんです(「壇蜜が結婚…お相手は漫画家・清野とおるさん、TV共演きっかけ『いい夫婦の日』婚姻届提出」)。

さて、「いい夫婦の日」の誕生は、1985年に政府の経済対策会議で、ゆとりの創造月間として11月が提唱されたことに始まります。

これを受けて、1988年に財団法人余暇開発センター(現、公益財団法人日本生産性本部)が、夫婦で余暇を楽しむゆとりあるライフスタイルを提案。そして、11月22日が「いい・ふうふ」と読めることから、この日を「いい夫婦の日」としました。

このように、「いい夫婦の日」は、国が余暇の推進を目的として始めたものです。

そのため、キャッチコピーが「『いい夫婦の日』は、『ふたりの時間』を大切にする日です。」となっており、「余暇」の大切さをアピールする内容になっています。

そして今では、「いい夫婦の日」は、官民一体となったキャンペーンが繰り広げられています。その中でも、「いい夫婦パートナー・オブ・ザ・イヤー」の注目度は高いようです。

20回目を迎える本年の「いい夫婦 パートナー・オブ・ザ・イヤー2019」は、高橋英樹高橋美恵子ご夫婦と東貴博安めぐみご夫婦に加え、魚介料理の名店「高はし」を営む高橋良和、高橋桃重ご夫婦に決定しました(2018年度は、陣内孝則・陣内恵理子、庄司智春・藤本美貴ご夫妻、2017年度は西川きよし・西川ヘレンご夫妻、中山秀征・白城あやかご夫妻)。

ちなみに、2006年は船越英一郎・松居一代ご夫妻、2011年には高橋ジョージ・三船美佳元ご夫妻が選ばれています。両ご夫妻は残念ながら離婚されました。「いい夫婦」を維持するのはなかなか難しいようです。

さて、今回は、「いい夫婦の日」にちなんで、憲法と民法が夫婦についてどのように定めているか見てみます。「いい夫婦」を継続するヒントが潜んでいるかもしれません。

では、まずは憲法から見てみましょう。

結婚とは~憲法が定める「3つ」の結婚観

憲法とはその国のあり方を書いたものです。さらに言うと、その国の目指すべき姿がそこに書かれています。では、憲法が結婚のあるべき姿をどのように定めているか見てみましょう。憲法は24条で次のように結婚(婚姻)観を唱えています。

憲法24条(家族生活における個人の尊厳と両性の平等)

婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。

このように、憲法は、結婚について次の3つを定めています。

1.結婚は「両性の合意」によってのみ成立する。

結婚が両性の合意のみに基づいて成立することを要求しています。結婚をする人に自由な独立した人格を認めて、結婚はそれを基礎とする一種の契約であるという結婚観を表明しています。

なお、社会には、異性ではなく同性を愛する人々ももちろんいます。同性婚承認年代順に、次の各国が同性婚を承認しています。

オランダ(2001年、世界で初めて)、ベルギー、スペイン、カナダ、南アフリカ、ノルウェー、スウェーデン、ポルトガル、アイスランド、アルゼンチン、メキシコ、デンマーク、ブラジル、フランス、ウルグアイ、ニュージーランド、英国、ルクセンブルク、米国、アイルランド、コロンビア、フィンランド、マルタ、ドイツ、オーストラリア

そして、台湾の立法院(国会)は17日、同性間の結婚の権利を保障する特別法を可決して、欧米が先行する同性婚の合法化がアジアで初めて実現しました。

現在日本では同性婚を認めていませんが、渋谷区が2015年3月に初めて、同性カップルに公的な証明書(パートナーシップ証明書)を発行する制度を開始し、その後、この制度は拡がっています。

2.夫と妻は同等の権利を基本として、相互の協力によって結婚生活を維持しなければならない。

夫は外で仕事、妻は家で家事・育児といった伝統的な男女の性別役割分担といったような性差別を否定して、夫婦の法的地位の平等と同権を保障しています。

男性が育児に積極的に参加する「イクメン」や夫婦で家事を分担し合う「家事シェア」という言葉もこの精神の表れと考えられます。

社会問題になっている夫婦間のモラル・ハラスメントやドメスティック・バイオレンスは憲法の精神に当然に反する行為です。

3.一夫一婦制~パートナー関係の独占排他性

これは、前述の「1」と「2」の2つの結果として、「一夫一婦制」、つまり、パートナー関係の独占排他性が導き出されます。

過去には、一夫多妻制や妻妾制度なども存在していましたが、現段階では、同時に複数の者と婚姻関係を持つことは公認されていません。一夫一婦に反する行動、すなわち「不倫」は憲法の精神に反する行為といえます。

民法が規定する夫婦の「7つ」の権利・義務

そして、憲法が唱える結婚観を受けて、民法は夫婦に次の7つの権利と義務を規定しています。

1.夫婦同氏(姓)(民法750条)

夫婦は、結婚の際に夫または妻の氏(法律では「姓」や「苗字」を「氏」と呼びます。)のどちらかを夫婦の氏として選択しなければなりません(民法750条)。

750条(夫婦の氏)

夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。

※夫婦同氏について詳しくは、 結婚について知っておきたい法知識~その1「夫婦同姓」をご覧ください。

また、近年は選択的夫婦別制度の論議が活発になっています。

※選択的夫婦別姓制度について詳しくは、

「選択的夫婦別姓制度」で知っておきたい法知識~明日「第2次夫婦別姓訴訟」の判決下る

「夫婦別姓」を求めてついに提訴も~夫と妻、どちらの姓にしますか?

「選択的夫婦別姓」に賛成?反対?~「賛成」は過去最高42%

日本でも「夫婦別姓」の時があった!~選択的夫婦別姓制度を考えるヒント

をご覧ください。

2.同居協力扶助義務(民法752条)

夫婦は同居し、互いに協力し扶助し合わなくてはいけません。 結婚共同生活を維持するための基本的な義務とされています。

752条(同居、協力及び扶助の義務)

夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。

※同居義務について詳しくは、結婚について知っておきたい法知識~その2「同居義務」を、また、協力及び扶助の義務については、結婚について知っておきたい法知識~その3「協力義務」「扶助義務」をご参照ください。

3.貞操義務

民法には貞操義務を規定する条文はありませんが、重婚が禁止され、同居協力義務が規定され、不貞行為、すなわち、配偶者である夫または妻以外の人と性的関係を持つことが離婚原因になることから(民法770条1項1号)、夫婦は貞操義務を負うとされます。

※貞操義務について詳しくは、結婚について知っておきたい法知識~その4「貞操義務」をご覧ください。

4.夫婦間の契約取消権(民法754条)

夫婦は結婚期間中に締結した夫婦間の契約を、結婚期間中はいつでも、何の理由もなしに一方的に取消すことができます(ただし、第三者の権利を害することはできません)。

754条(夫婦間の契約の取消権)

夫婦間でした契約は、婚姻中、いつでも、夫婦の一方からこれを取り消すことができる。ただし、第三者の権利を害することはできない。

※夫婦間の契約の取消権について詳しくは、結婚について知っておきたい法知識 その10~夫婦間の約束は破ってもOK!?をご覧ください。

5.姻族関係の発生(民法725条)

民法は、「6親等内の血族」、「配偶者」および「3親等内の姻族」を「親族」としています(民法725条)。

725条(親族の範囲)

次に掲げる者は、親族とする。

一 六親等内の血族

二 配偶者

三 三親等内の姻族

血族とは、血統のつながった者をいいます。これに対して姻族とは、配偶者(夫または妻)の血族のことをいいます。たとえば、配偶者の父母・兄弟姉妹・甥姪は姻族になります。

なお、姻族関係終了届を届出することによって、亡くなった配偶者の血族と縁を切る効果が発生します。 姻族関係終了届は、通称死後離婚と呼ばれています。

※死後離婚について詳しくは、急増する「死後離婚」 5年で220%増!急増する「死後離婚」をご覧ください。

6.子が嫡出子となる(民法772条)

婚姻関係にある夫婦から生まれた子、つまり夫の子となります。

772条(嫡出の推定)

1.妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。

2.婚姻の成立の日から二百日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から三百日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する。

7.配偶者の相続権が認められる(民法890条)

配偶者は、常に相続人となります。その法定相続分は2分の1になります。

890条(配偶者の相続権)

被相続人の配偶者は、常に相続人となる。この場合において、第887条又は前条の規定により相続人となるべき者があるときは、その者と同順位とする。

などがあります。

また、改正相続法により、残された配偶者(主に夫に先立たれた妻を想定)がその後の生活に支障を来さないようにするための方策が規定されました。

※残された配偶者の保護に関して、詳しくは、ガラッと変わった 相続法ここに注意!vol.5~妻が多く遺産を取得できる「持戻し免除の推定規定」相続がガラッと変わる!2019 vol.2~残された配偶者の居住権を保護する権利の創設をご覧ください。

以上、夫婦に関して憲法の結婚観を3つ、民法が結婚に関して規定する条文を7つご紹介しました。ご紹介した中で、よりよい夫婦関係を築くためのヒントを見つけた方は、「いい夫婦の日」をきっかけに実践してみてはいかがでしょうか。

最後に、「いい夫婦 パートナー・オブ・ザ・イヤー2019」に選出された高橋英樹、高橋美恵子ご夫婦と東貴博、安めぐみご夫婦の夫婦円満の秘訣をご紹介します。

高橋英樹さん「会話。相手の気持ちを考えること。」

高橋美恵子さん「お互いに常に“ありがとう”の気持ちで、互いを気遣っていること。」

東貴博さん「思った事をすぐに言わない。3日寝かせると腹が立つこともおさまる。」

安めぐみさん「程よい距離。なるべく良いところを探す。」

いずれも言い得て妙だと思いますが、私は東貴博さんの言葉が心に響きました。さっそく実行したいと思います。さて、皆さんはいかがですか。

参考・引用:「いい夫婦 パートナー・オブ・ザ・イヤー2019」ホームページ

行政書士

1965年東京生まれ。中央大学法学部卒業後、西武百貨店入社。2001年行政書士登録。専門は遺言作成と相続手続。著書に『[穴埋め式]遺言書かんたん作成術』(日本実業出版社)『行政書士のための遺言・相続実務家養成講座』(税務経理協会)等。家族法は結婚、離婚、親子、相続、遺言など、個人と家族に係わる法律を対象としている。家族法を知れば人生の様々な場面で待ち受けている“落し穴”を回避できる。また、たとえ落ちてしまっても、深みにはまらずに這い上がることができる。この連載では実務経験や身近な話題を通して、“落し穴”に陥ることなく人生を乗り切る家族法の知識を、予防法務の観点に立って紹介する。

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