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結婚について知っておきたい法知識~その2「同居義務」

竹内豊行政書士
結婚をすると「同居」義務が課せられます。(写真:アフロ)

お付き合いをされている大好きなパートナーと結婚をすると、法律上、いくつか義務が生じます。その中でも、たとえば民法752条は次のように義務を規定しています。

民法752条(同居、協力及び扶助の義務)

夫婦は同居し、お互いに協力し扶助しなければならない。

このように、結婚をすると、夫婦相互に同居、協力、扶助の3つの義務が課せられます。今回は「同居」義務について見てみましょう。

同居義務は、結婚の成立、つまり役所に婚姻届を届出た時から発生し、結婚の解消まで存続します。この同居とは、夫婦としての同居であって、単なる場所的な意味ではありません。同じ屋根の下でも、たとえば障壁を設けて生活を別にするのは同居ではありません。

しかし、夫婦の具体的事情は千差万別です。夫婦の事情に因って、お互い話し合った上で同居する・しない、同居の開始日(たとえば、建設中の新居が完成してから同居する等)を決めても構いません。

つまり、民法752条は、夫婦はその性格上同居することを原則とする。しかし、同居するかどうかは、夫婦間の協議で決めることができる。そして、「お互いに同居する」と合意した場合は、正当な理由がない限り同居の義務を負うと考えるべきでしょう。正当な理由とは、たとえば転勤等の職業上の理由、病気による入院等による一時的な別居が挙げられます。

正当な理由なくして同居を拒否した場合、他方は相手に対して家庭裁判所に同居を命ずる審判を求めることができます。

しかし、実際のところ同居という作為義務は直接強制にも間接強制にもなじまないため、これを強制する手立ては実際のところありません。このような場合は、同居義務違反として離婚原因(民法770条1項2号「配偶者からの悪意の遺棄」)となり、離婚慰謝料の理由となる可能性があります。

なお、婚姻生活が破綻したり離婚訴訟が継続中で夫婦の信頼関係が奪われたりして、円満な夫婦生活が期待できないような場合には、一方の同居請求に対して同居を拒むことができます。

さて、一般的に婚約をすると「同居する場」として二人の住まいを探します。そこで、お互いの価値観が衝突することもままあります。それがきっかけで婚約解消ということもあり得ます。

そのような残念な事態を避けるためにも、お付き合いされている方と一度「理想の住まい」について話し合ってみてはいかがでしょうか。具体的には、「戸建てかマンションか」「都心か郊外か」、ペットといっしょに住むなどの「譲歩できない条件」などです。きっとお互いのことをよりよく知るきっかけになるはずです。

行政書士

1965年東京生まれ。中央大学法学部卒業後、西武百貨店入社。2001年行政書士登録。専門は遺言作成と相続手続。著書に『[穴埋め式]遺言書かんたん作成術』(日本実業出版社)『行政書士のための遺言・相続実務家養成講座』(税務経理協会)等。家族法は結婚、離婚、親子、相続、遺言など、個人と家族に係わる法律を対象としている。家族法を知れば人生の様々な場面で待ち受けている“落し穴”を回避できる。また、たとえ落ちてしまっても、深みにはまらずに這い上がることができる。この連載では実務経験や身近な話題を通して、“落し穴”に陥ることなく人生を乗り切る家族法の知識を、予防法務の観点に立って紹介する。

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