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「選択的夫婦別姓」に賛成?反対?~「賛成」は過去最高42%

竹内豊行政書士
世論調査で別姓賛成派の割合が過去最高を記録しました。(ペイレスイメージズ/アフロ)

内閣府は2月10日に、「家族の法制に関する世論調査」の結果を発表しました。

調査は1996年から約5年ごとに実施(今回で5回目)。実施期間は、昨年11月~12月。全国の18歳以上の男女5000人に個別面接方式で行われました(前回までは20歳以上が対象、回答率は59.0%)。

この世論調査で注目されるのが、「選択的夫婦別姓制度」導入賛成派が過去最高を記録したことです。この制度は「姓」という国民一人ひとりが関わる問題です。

そこで、今回は「選択的夫婦別姓制度」に関する調査結果をまとめてみました。もはや、「選択的夫婦別姓制度」は避けてはならない課題です。「姓」を考えるきっかけになると思います。

賛成派の割合過去最高

「選択的夫婦別姓制度の導入に向けて民法を改正すべきか」との問いに、「改めて(法改正して)も構わない」とする賛成派が42.5%(前回2012年度調査から7.0ポイント増)、一方反対派は29.3%(同7.1ポイント減)と別姓賛成派の割合が過去最高を記録しました。

法務省民事局の担当者は「名字に対する受け止めの多様化や女性の社会活躍が影響した可能性がある」と分析しています(東京新聞)。

夫婦別姓制度には賛成。しかし、選択するかは別

賛成派に、法改正をした際に、「夫婦別姓になったら結婚前の姓を選択するか(別姓とするか)」と尋ねたところ、「希望しない」は47.4%、「希望する」は19.8%であった。

夫婦別姓への法改正は賛成するが、実際に別姓にしようと考えている人は2割程度に止まっています。夫婦別姓の必要性は認めるが、自分自身に置き換えると、必要性を感じないという人が多いようです。

世代間の意識の違い浮き彫り

世代別で見ると、60歳代までは賛成派が上回った。一方、70歳以上は、賛成派28.1%、反対派が52.3%と反対派が過半数を占めました。

「姓」に対する考えは家族観に大きく影響を受けます。したがって、世代間の意識が異なるのは当然の結果と言えます。

夫婦別姓には反対。しかし「通称」の使用は賛成

「夫婦は同姓を名乗るべきだが、結婚前の姓を通称として使用できるように法改正してもよい」という「中間派」は24.4%。

夫婦別姓には反対。しかし、女性の社会進出という社会的要請等を考えると夫婦別姓は合理性がある。そこで、「通称」であれば夫婦別姓を容認するという「中間派」も4割程度存在しています。

結婚で名字が変わる喜び多数

「結婚で名字が変わる場合、どんな感じを持つか」との設問(複数回答)に対しては、割合が高い順に、

「新たな人生が始まるような喜びを感じる」が41.9%

「相手と一体となったような喜びを感じる」31.0%

「何も感じない」23.0%

「違和感を持つ」22.7%が続きました。

夫婦別姓制度賛成派が過去最高を記録する一方、「姓が変わる」こと、つまり「夫婦が同姓になること」に「喜びを感じる」人がかなりの割合いることが分かりました。「制度」と「感情」は別物ということでしょうか。

一人っ子の「切実」な事情

兄弟姉妹の有無別でみると、一人っ子は兄弟姉妹を持つ者と比べると、別姓を希望する割合が高い結果が出ました。

一人っ子が結婚して姓を変えると、代々引き継いできた姓が途絶えてしまうことがあります(その当事者のほとんどが「女性の一人っ子」)。

そのことに罪悪感にさいなまれて結婚に躊躇したり親族からのプレッシャーを受けるなど、一人っ子が別姓を望む「切実な事情」が垣間見られます。

政府の見解

朝日新聞によると、政府は、今回の世論調査の結果を「国民の意見が大きく分かれている」として制度の導入には慎重な姿勢のようです(朝日新聞)。

今後「選択的夫婦別姓制度」を望む声は、女性の加速する社会進出や社会的要請などを背景に一層高まると予想されます。一方、姓は国民感情や生活に直結する問題です。また、政府の見解のように慎重論も根強いのも事実です。

より快適で公正な社会を実現するためにも、選択的夫婦別姓制度の議論はもはや避けては通れない段階に来ています。まずは、国民一人ひとりが「当事者意識」を持って姓に対して考えてみることが大切だと思います。

行政書士

1965年東京生まれ。中央大学法学部卒業後、西武百貨店入社。2001年行政書士登録。専門は遺言作成と相続手続。著書に『[穴埋め式]遺言書かんたん作成術』(日本実業出版社)『行政書士のための遺言・相続実務家養成講座』(税務経理協会)等。家族法は結婚、離婚、親子、相続、遺言など、個人と家族に係わる法律を対象としている。家族法を知れば人生の様々な場面で待ち受けている“落し穴”を回避できる。また、たとえ落ちてしまっても、深みにはまらずに這い上がることができる。この連載では実務経験や身近な話題を通して、“落し穴”に陥ることなく人生を乗り切る家族法の知識を、予防法務の観点に立って紹介する。

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