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東京都から国へ: カジノを含んだ統合型リゾート整備推進に関する要望

木曽崇国際カジノ研究所・所長

さて、毎年恒例となっている東京都による「国の施策及び予算に対する提案要求」が今月18日に発表されました。本要望は、毎年2回、春と秋に東京都から国の各省庁に対して送付されるものですが、この度、その要望事項の中の新規要求項目として「統合型リゾート(IR)の整備推進」という項目が加えられることとなりました。

以下、発表資料より該当箇所を抜粋。

7 統合型リゾート(IR)の整備推進

(提案要求先 内閣府)

(都所管局 産業労働局・知事本局・港湾局)

カジノを含む統合型リゾート(IR)の整備推進のために必要な法整備を早期に行なうこと。

<現状・課題>

都では、外国人旅行者の増加、都内産業のビジネス機会やイノベーションの創出などを図るため、MICE誘致を積極的に推進してきた。本年5月に改定した「東京都観光産業振興プラン」においても、東京の観光産業振興を測るため重要な戦略の一つに「MICE誘致の推進」を位置づけており、東京の持つ強みを活かした、より積極的なMICE誘致を展開していく必要がある。

一方、アジア諸国においては、シンガポールや韓国などが、MICE施設だけではなく、ホテルやエンターテイメント施設、ショッピングモール、カジノ施設等を含む統合型リゾート(IR)を整備するなど、官民一体となった示唆s区を展開し、MICE受入数を順調に伸ばしている。

先行する各国との競争を勝ち抜くためには、国を挙げたさらなる取り組みが必要である。

IRは、国際観光拠点として有力な観光資源であり、新たなゲーミング産業としてのカジノを他の施設と複合的に整備することは、東京の魅力を更に高めるものであり、また経済波及効果や雇用創出効果等が大いに期待できることから、わが国においてもその整備を推進していく必要がある。

しかし、現行法では、カジノは刑法の賭博及び富くじに関する罪で規制されていることから、国民の懸念を払拭し、カジノを含むIRの整備が可能となるように法整備を行なう必要がある。

<具体的要求内容>

IRの整備を実現するために、所管省庁を定め、必要な法整備を早期に行なうこと。なお、法整備に当たっては、以下の点について、留意すること。

1. 地域の実情に即したIRの整備・運営を可能にする仕組とするなど、地方自治体の意向を十分踏まえること。

2. 不正防止、組織暴力対策、マネーロンダリング対策、青少年への悪影響の防止、ギャンブル依存者対策など制度化し、カジノ導入に伴い国民が抱く懸念を払拭するように努めること。

3. IRの運営に欠かせない専門的な知識や技術を有する人材を確保するため、人材育成などの制度を設けること。

出所:http://www.chijihon.metro.tokyo.jp/kouiki/teian/teian_26/26.pdf

この種の要望は本来ならば全国知事会あたりから要望提出されるのが最も効果的なのですが、知事会はカジノに関してはもはや機能不全に為っているむきもあり、このように個別の都道府県から送付する形以外には今のところなさそう。全国でカジノ誘致意向を表明されている都道府県には、ぜひ同様のアプローチをお願いし、推進の力へと変えてゆきたいところです。

一方、東京都は「不正防止、組織暴力対策、マネーロンダリング対策、青少年への悪影響の防止、ギャンブル依存者対策など制度化し、カジノ導入に伴い国民が抱く懸念を払拭するように努めること」などと国に対して要望しておりますが、このうち特に「青少年への悪影響の防止、ギャンブル依存者対策」あたりに関しては、自治体側においても対処が必要。というか、そういう面倒くさそうなところを、国任せにしてはなりません。

これは以前から申し上げておるところですが「カジノが有る/無し」を問わず我が国にはすでに沢山の賭博、もしくはそれに類するモノが存在しているわけで、これらはたった今必要な施策です。特に現在早急に求められているのは、それらに対する「リスク教育」であり、これには当然、文部科学省から学習指導要領を変えさせるというアプローチも可能ですが、一方で都道府県ごとの教育指導計画の中にそれを盛り込むというアプローチも可能です。カジノ誘致を推進している地域は、少なくとも全国に先駆けて「依存症教育の先進地域」を目指すべき。これは、私の持論で有ります。詳細に関しては、以前別の記事に書いたことがありますので、そちらも合わせてご覧下さい。

カジノ誘致の前に「賭博のリスク教育」の拡充を

http://blog.livedoor.jp/takashikiso_casino/archives/7888073.html

国際カジノ研究所・所長

日本で数少ないカジノの専門研究者。ネバダ大学ラスベガス校ホテル経営学部卒(カジノ経営学専攻)。米国大手カジノ事業者グループでの内部監査職を経て、帰国。2004年、エンタテインメントビジネス総合研究所へ入社し、翌2005年には早稲田大学アミューズメント総合研究所へ一部出向。2011年に国際カジノ研究所を設立し、所長へ就任。9月26日に新刊「日本版カジノのすべて」を発売。

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