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朝倉未来は「99%クレベルが勝つ」。それでも”自然体”鈴木千裕が奇跡を起こすか?『RIZIN.43』

近藤隆夫スポーツジャーナリスト
『RIZIN.43』でクレベル・コイケに挑む鈴木千裕(写真:RIZIN FF)

実績で王者クレベルが圧倒

「勝負論があると言われていますけど、(二人の間には)結構な差がある。クレベル・コイケが、普通に一本勝ちすると思います。鈴木選手は凄く勢いがある。打撃力があって、腰も結構重い。でも、鈴木選手は行けないでしょう。クレベルと対面したら、ガンガン前へは出られない」

「何かあるのよ、クレベルって。蛇が睨んでくるみたいな。対面した者にしかわからない、独特なものがあるんだよ。打撃は弱そうだし、(クレベルが)ビビッて下がっているように見える。でも(対峙すると)狙われている感じがある。その辺を(鈴木選手は)わかっていないと思う。遅くても2ラウンドまでに決めるでしょう。99%クレベルが勝つ」

6月24日、北海道・真駒内セキスイハイムアイスアリーナ『RIZIN.43』で行われる「RIZINフェザー級タイトルマッチ」王者クレベル・コイケ(ブラジル/ボンサイ柔術)vs.鈴木千裕(クロスポイント吉祥寺)。この一戦の勝敗予想を朝倉未来(トライフォース赤坂)が自身のYouTubeチャンネルで行い、上記のように話していた。

「クレベル圧倒的優位」

この見立ては、大方の予想と同じである。それは、両者の実績が違い過ぎるから。

クレベル、31勝(29KO&一本)6敗1分け。

鈴木、10勝(5KO&一本)3敗。

数字以上に闘ってきた相手のレベルも異なる。

クレベルは、朝倉未来、牛久絢太郎(K-Clann)、カイル・アグォン(米国)、佐々木憂流迦(セラ・ロンゴ・ファイトチーム)といったRIZINフェザー級トップ戦線で闘う者たちを撃破している。対して鈴木は現在5連勝中だが、まだ上位陣とは顔を合わせていない。

試合展開もシンプルなものになろう。

挑戦者である鈴木はキックボクシング(KNOCK OUT-BLACKスーパーライト級)王者、一撃で相手を倒すパンチ力を有している。一方の王者クレベルはブラジリアン柔術のエキスパート。これまでにRIZINであげた7勝は、すべてサブミッションでの一本勝ちだ。つまり、鈴木が倒すか、クレベルが関節技を決めるかの勝負になる。そしてMMA(総合格闘技)ファイターとしての力量は、クレベルが一枚も二枚も上と評されている。

昨年大晦日、ベラトールとの対抗戦ではパトリシオ・ピットブルに判定で敗れるも、それ以前はRIZINで7連勝。フェザー級のベルトを保持しているクレベル・コイケ(写真:RIZIN FF)
昨年大晦日、ベラトールとの対抗戦ではパトリシオ・ピットブルに判定で敗れるも、それ以前はRIZINで7連勝。フェザー級のベルトを保持しているクレベル・コイケ(写真:RIZIN FF)

「パワーの前にテクニックは無意味」

6月15日午後、所属ジムであるクロスポイント吉祥寺で鈴木千裕が練習を公開した。その後、集まったメディアに対しクレベル戦に向け彼は次のようにコメントしている。

「KOしてチャンピオンになりたい」

そう切り出して続ける。

「(展開は)一方的に引き込まれるか、一方的に打撃で倒すかのどちらかになる。もちろん打撃の展開に持っていきたい。

今回の試合を難しくは考えていません。近づいたら思いっ切り(パンチを)当てて、(組みついて)来たら思いっきり剥がせばいい。それ以外ないんじゃないですか。

ぶっちゃけ力ですね、寝技は。フィジカルだと思います。腕十字とか三角(絞め)が来ても、思いっきり持ち上げて『バーン』ってやったら外れるじゃないですか。ボブ・サップが言ってたんですよ、『パワーの前にテクニックは無意味だ』って。同意です」

「みんな固く考え過ぎ。『テイクダウンされたらどうする?』とか言うけど、倒されなければいい話だし、倒されても立ち上がればいい。テクニックで対応してやろうとか余計なことを考えるからやられちゃうんですよ。

パワーもテクニックの一つだと自分は思っていて、そういうアドバンテージは自分にある。テクニックとしてのパワーを使って勝負します」

「寝技はパワーで防げる。俺は負けない、戦法にも迷いはない」。6月15日、クロスポイント吉祥寺で行われた公開練習後にクレベル戦に向け自信を漂わせた鈴木千裕(写真:RIZIN FF)
「寝技はパワーで防げる。俺は負けない、戦法にも迷いはない」。6月15日、クロスポイント吉祥寺で行われた公開練習後にクレベル戦に向け自信を漂わせた鈴木千裕(写真:RIZIN FF)

鈴木は、あくまでも強気である。そして”自然体”だ。

グラウンドの展開に持ち込まれ抑え込まれたなら、勝ち目がないことをよく理解している。だから、その前に決着をつけることに集中する。

「(関節技を)決められることもあると思う。でもそこは恐れずに漢として一発勝負ですよ。やられるんだったら豪快にやられて、やるんだったら豪快にやる。そういう闘いを僕はします!」

朝倉は「(クレベルと対峙したら)前に出れないんじゃないか」と予想。

だが鈴木は「負けを恐れず打って出る」と宣言した。

果たして、どうなる?

私の予想も、朝倉、そして大方のファンと同じで「クレベル優位」。それでも、鈴木の「迷いのなさ」は頼もしく、クレベルの寝技を恐れて何もできぬまま試合を終えるようなことはないと見たい。

鈴木千裕は、一撃に賭ける。

北の大地で、奇跡は起こるのか─。

<『RIZIN.34』全対戦カード>

(提供:RIZIN FF)
(提供:RIZIN FF)

スポーツジャーナリスト

1967年1月26日生まれ、三重県松阪市出身。上智大学文学部在学中から『週刊ゴング』誌の記者となり、その後『ゴング格闘技』編集長を務める。タイ、インドなどアジア諸国を放浪、米国生活を経てスポーツジャーナリストとして独立。プロスポーツから学校体育の現場まで幅広く取材・執筆活動を展開、テレビ、ラジオのコメンテーターとしても活躍している。『グレイシー一族の真実』(文藝春秋)、『プロレスが死んだ日。』(集英社インターナショナル)、『情熱のサイドスロー~小林繁物語~』(竹書房)、『伝説のオリンピックランナー”いだてん”金栗四三』、『柔道の父、体育の父  嘉納治五郎』(ともに汐文社)ほか著書多数。

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