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朝倉未来は何を思った?ハワイでの記者会見は、またもやメイウェザーの独演会に!9・25『超RIZIN』

近藤隆夫スポーツジャーナリスト
会見後のメイウェザーと朝倉(写真:AbemaTV,Inc/RIZIN FF)

質問はメイウェザーに集中

「アサクラは日本では最高の選手と聞いているが、私も米国の最高の選手だ。ファイターのことはみんな尊敬しているし、最高レベルで闘えることを嬉しく思っている」

「観る人の予測がつかないことが起こるのが試合。私は、自分のスキルを信じて闘うだけだ。相手は、メイウェザーと闘うとなると意識が違ってくる。これまでの相手と同じように(朝倉も)過度に緊張していることだろう」

「トレーニングはしている。トレーナーもここ(ハワイ)に一緒に来ているくらいだ。現役の頃と比べれば量は減っているが、それでもコンディションを整えるには十分なことをやっている」

「テンシン(那須川天心)もアサクラも素晴らしいファイター。だが、テンシンは私を見縊っていたのではないかと思う。今回は、もっとファンの期待に応えられるような互いのスキルを試せる闘いにしたい。それに将来的には、ここハワイでもリングに上がりたい」

ワイキキビーチの青空の下で話し続けるメイウェザー。左は『RIZIN.38』で萩原京平と対戦する鈴木千裕(写真:AbemaTV,Inc/RIZIN FF)
ワイキキビーチの青空の下で話し続けるメイウェザー。左は『RIZIN.38』で萩原京平と対戦する鈴木千裕(写真:AbemaTV,Inc/RIZIN FF)

8月30日(日本時間31日)、米国ハワイ・ワイキキビーチでの記者会見は3部制で行われた。

第1部で「来年にRIZINハワイ大会開催」を発表、第2部では9月25日(さいたまスーパーアリーナ)『超(スーパー)RIZIN』『RIZIN.38』の追加対戦カード5試合がリリースされた。

そして第3部にサングラスをかけた朝倉未来(トライフォース赤坂)と、赤いキャップをかぶったフロイド・メイウェザー・ジュニア(米国)が登場。互いに試合への意気込みを話した後、現地メディアとの質疑応答に移る。ここから長時間、メイウェザーの喋りが続いた。まさに独演会だ。

記者からの質問もメイウェザーに集中した。

「どんな試合になると思うか?」「那須川天心戦と同じような結果にするつもりか?」「練習はできているのか?」等々。

結局、最後まで朝倉に質問が飛ぶことはなかった。

日本国内での朝倉未来の知名度は高い。

しかし、海外ではほとんど知られていない。プロボクシング5階級制覇の実績を誇るメイウェザーとは知名度において大きな開きがある。現地メディアが注目しているのはメイウェザーがリングに上がることであって、朝倉はその対戦相手に過ぎないのだろう。

「俺と喧嘩する勇気があるのか」

また、会見の途中で何故か平本蓮(ルーファスポーツ)が登場した。

「今日は通訳として来ました。メイウェザーさんの言葉を私が日本語で伝えます」

そう話すと、メイウェザーが両手で覆った口元に耳を向ける。そしてマイクに向かう。

「お前は、俺くらい稼いでから調子に乗れ!そうメイウェザーさんが言っています」

「ダサい服のブランド出しているんじゃねえ! TMTを見習え! とメイウェザーさんが言っています」

「エキシビションマッチだけど、俺のパンチで朝倉未来の鼻はナスみたいに膨れ上がる。そうメイウェザーさんは言っていました」

「俺のパンチと朝倉のパンチは、ジェット機とハエくらい違うので試合を楽しみにしていてください、とメイウェザーさんは言っています」

もちろん、メイウェザーの言葉ではないだろう。朝倉を挑発する演出、『平本劇場』だ。

(くだらない)

そう言わんばかりに、朝倉は憮然とした表情を浮かべていた。

会見の終わりに朝倉が口を開いた。

「(メイウェザーは)話が長い。もっとまとめて話せないのか」

そして、メイウェザーの前にあるテーブル上を指差して続ける。

「プレゼントします。そのグローブで闘う自信があなたにあるなら、試合をそれで行いましょう」

壇上に上がる時、朝倉はオープンフィンガー・グローブを持参。それをメイウェザーが座る椅子の前にあるテーブル上に置いていた。オープンフィンガー・グローブマッチへの誘いだ。

メイウェザーは答えた。

「RIZINが私にMMAをやれと言うなら、それだけのギャラを支払う必要がある。今回はボクシングの試合(エキシビションマッチ)だ。もちろん、ボクシンググローブで闘う」

憮然とした表情でメイウェザーの話を聞いていた朝倉未来。会見の最後に「オープンフィンガー・グローブで闘う勇気はあるか」と迫ったが…(写真:AbemaTV,Inc/RIZIN FF)
憮然とした表情でメイウェザーの話を聞いていた朝倉未来。会見の最後に「オープンフィンガー・グローブで闘う勇気はあるか」と迫ったが…(写真:AbemaTV,Inc/RIZIN FF)

この返答は、朝倉も想定していたはず。

「ボクシングじゃなく、喧嘩を俺とやる勇気はないだろう」と挑発してみたのだろう。

今回の会見は、朝倉にとって気分の良いものではなかったはずだ。

世界的知名度で、大きな開きがあることを再アピールされてしまった。だがこれも、想定内。さらに闘志を燃やしたと見る。

勝負は9月25日、さいたまスーパーアリーナのリングだ。ここでメイウェザーをぶっ倒すことができれば、世界が震撼する。

前回のコラムでも書いたが、朝倉の作戦は一つだ。

それを本番で遂行できるか否か。それが、すべてである。

決戦まで1カ月を切った。ワクワク感を胸に宿して刻を待ちたい─。

また、この日の会見第2部で発表された『超RIZIN』『RIZIN.38』の追加対戦カードは、次の5試合。

(提供:RIZINN FF)
(提供:RIZINN FF)

さらなる追加対戦カードは、9月6日に予定されている都内での記者会見で発表される。

スポーツジャーナリスト

1967年1月26日生まれ、三重県松阪市出身。上智大学文学部在学中から『週刊ゴング』誌の記者となり、その後『ゴング格闘技』編集長を務める。タイ、インドなどアジア諸国を放浪、米国生活を経てスポーツジャーナリストとして独立。プロスポーツから学校体育の現場まで幅広く取材・執筆活動を展開、テレビ、ラジオのコメンテーターとしても活躍している。『グレイシー一族の真実』(文藝春秋)、『プロレスが死んだ日。』(集英社インターナショナル)、『情熱のサイドスロー~小林繁物語~』(竹書房)、『伝説のオリンピックランナー”いだてん”金栗四三』、『柔道の父、体育の父  嘉納治五郎』(ともに汐文社)ほか著書多数。

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