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朝倉海が完勝せねばならない「もうひとつ」の理由──。9・19『RIZIN.30』最注目カード予想

近藤隆夫スポーツジャーナリスト
9・19『RIZIN.30』でヤマニハと対戦する朝倉海(写真:RIZIN FF)

「KOか一本で勝つ!」

「(ヤマニハを)脅威には感じていません。過去の試合の映像をいろいろ観た上での印象です。スタミナがそれほどあるとも思わないし、問題はないでしょう。

いま闘い方のバリエーションを増やしているので、パンチの出し方やコンビネーションなど新たな技術を試してみたい。KOか一本で勝ちます」

『RIZIN.30』(9月19日、さいたまスーパーアリーナ)まであと19日と迫った8月31日、東京・トライフォース赤坂において朝倉海が公開練習を行い、その直後に、自信のほどを口にした。

「JAPAN GPバンタム級トーナメント」1回戦(『RIZIN.28』6月13日、東京ドーム)で渡部修斗に初回TKO勝ちを収めた朝倉は、2回戦でボンサイ柔術のアラン・ヒロ・ヤマニハと闘う。

(提供:RIZIN FF)
(提供:RIZIN FF)

公開練習では、11歳年上の友人であり練習仲間の昇侍とのマススパーを披露。小刻みにステップを踏むなど、躍動感のある動きで状態の良さをうかがわせた。

朝倉は今回の「バンタム級トーナメント」優勝候補筆頭。ならば2回戦もアッサリと勝ち上がりたい。だが、相手が勢いのあるボンサイ柔術の選手であることから「まさか!」が起こるかもしれないとの見方もある。

『RIZIN.28』で朝倉未来を絞め落として勝利したクレベル・コイケは言う。

「ヒロは、みんなが思っているよりも強いよ。前回の試合(トーナメント1回戦で倉本一真に判定勝ち)は、かなり緊張していて本来の実力を出せていなかった。普段の練習通りの動きができれば朝倉海に勝てる」

また、ヤマニハもこう話す。

「海は、そんなに強くない。穴がある。その穴が出るまでアタックして勝つ」

公開練習で昇侍(右)とマススパーを行う朝倉海。昇侍は『RIZIN.30』で鈴木千裕と対戦する(写真:RIZIN FF)
公開練習で昇侍(右)とマススパーを行う朝倉海。昇侍は『RIZIN.30』で鈴木千裕と対戦する(写真:RIZIN FF)

公開練習後に「KOか一本で勝つ」とヤマニハ戦について話す朝倉海。その口調は自信に満ちていた(写真:RIZIN FF)
公開練習後に「KOか一本で勝つ」とヤマニハ戦について話す朝倉海。その口調は自信に満ちていた(写真:RIZIN FF)

意識する井上直樹の存在

それでも朝倉は表情に余裕を浮かべる。

「(ヤマニハが)やってくることは想定内。僕の方がスピードで優っているので、速いステップで翻弄したい。自分の打撃だけ当てて被弾しない闘いをイメージしています」

ともに練習を公開した昇侍も言った。

「海選手には、高い身体能力と瞬発力がある。それに(卓越した)勝負勘。特に、ここぞという場面での見極めがズバ抜けている。1ラウンドKOで海選手が勝つでしょう。最終的には破壊力のある右のパンチで決めると思います」

私も朝倉の勝利を予想する。

ボンサイ柔術には勢いがあり、陣営が一丸となって作戦を立て闘いに挑むことだろう。それでも、パワー、スピード、試合運びの巧さ、キャリアのすべてにおいて朝倉が上回っている。ワンランクレベルの違う相手に、ここで負けることはないだろう。「9-1」で朝倉優位と見る。

そして、彼はすでに、その先を見据えているのではないか。

そう、井上直樹の存在である。

「本命・朝倉海、対抗・井上直樹」

これが、大方の見方。しかし、本命と対抗の実力差はほとんどない。いや、井上の方が優位ではないかとの声もある。

この雰囲気を朝倉も感じているはずだ。

大舞台においては、リングとその周囲に漂う空気が勝敗に影響を及ぼすことが多々ある。

『RIZIN.30』で、もし、「井上が金太郎に完勝」「朝倉が苦戦の末の勝利」となれば、本命と対抗が入れ替わることもある。つまり今回、彼はヤマニハ戦で圧勝し、「朝倉海強し」のイメージを作り上げておきたい。それがヤマニハ戦の最大のテーマではないか。

だから朝倉は、こう締めた。

「熱い試合をしたいと思う。勝つだけではなく、勝ち方でも魅せたい!」

秋の大一番『RIZIN.30』で「キラー朝倉」が見られそうだ。

<バンタム級トーナメント、他の3試合>

(提供:RIZIN FF)
(提供:RIZIN FF)

スポーツジャーナリスト

1967年1月26日生まれ、三重県松阪市出身。上智大学文学部在学中から『週刊ゴング』誌の記者となり、その後『ゴング格闘技』編集長を務める。タイ、インドなどアジア諸国を放浪、米国生活を経てスポーツジャーナリストとして独立。プロスポーツから学校体育の現場まで幅広く取材・執筆活動を展開、テレビ、ラジオのコメンテーターとしても活躍している。『グレイシー一族の真実』(文藝春秋)、『プロレスが死んだ日。』(集英社インターナショナル)、『情熱のサイドスロー~小林繁物語~』(竹書房)、『伝説のオリンピックランナー”いだてん”金栗四三』、『柔道の父、体育の父  嘉納治五郎』(ともに汐文社)ほか著書多数。

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