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朝倉優位は本当か── 何が起きても不思議ではない『RIZIN.23』最注目カードの「2つのポイント」

近藤隆夫スポーツジャーナリスト
8月4日、トライフォース赤坂で公開練習を行った朝倉海(写真:RIZIN FF)

待ちに待った『RIZIN』再開

「ようやく辿り着きました。(試合が近づいて)ワクワクしています。早く闘いたい。チャンスがあったら決めにいきますし、試合が短くても長くても僕が勝ちます。命を燃やして闘います」(扇久保博正)

「調整も上手くいき完全に仕上がりました。(扇久保の)試合の映像も見尽くして研究はバッチリ。プレッシャーも、まったく感じていません。本気の闘いをRIZINのリングで見せます」(朝倉海)

総合格闘技「RIZIN」が約半年ぶりに再開される。

8月9日(日)に『RIZIN.22』、そして翌10日(祝)には『RIZIN.23』が行われるのだ。

会場はいずれも、横浜みなとみらいに新設された「ぴあアリーナMM」。

今回は、海外選手を招聘できる状況にない。そのため、全試合日本人対決となるが実に興味深いカードが揃っている。

2日間の全対戦カードは以下の通りだ。

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最注目カードは、『RIZIN.23』のメインエベントとなる朝倉海vs.扇久保博正だろう。

この一戦は、RIZINバンタム級タイトルマッチとして行われる。

本来なら同タイトルマッチは、4月の横浜アリーナ大会で当時王者であったマネル・ケイプ(アンゴラ)と挑戦者・扇久保の間で争われるはずだった。

しかし、新型コロナウィルス感染拡大の影響で大会は中止に追い込まれる。直後にケイプがアメリカのメジャー団体UFCと電撃契約、RIZINのリングから去った。

そのため今回、扇久保と朝倉が空位となった王座をかけて闘うことになったのだ。

さて、異なるタイプのファイターの対決、勝つのはどっちか?

戦前の予想は、「朝倉優位」と見る向きが多いようだ。

両雄はともに、昨年の大晦日以来の試合となる。

大晦日の『RIZIN.20』で扇久保は、パンクラス認定バンタム級前王者の石渡伸太郎に判定勝利、一方の朝倉はケイプにKOで敗れた。

だが、朝倉の勢いは止まっていない。なにしろ昨年8月、ドルフィンズアリーナ(愛知県体育館)での『RIZIN.18』で無敵を誇っていた堀口恭司をKOで破ったインパクトは絶大。破壊力とスピード溢れる闘いぶりがファンの脳裏から焼きついて離れない。

私も朝倉が勝つ可能性が高いように思う。

総合格闘技選手としてのバランスの良さ、総合力においては扇久保が勝っているかもしれない。

しかし、フィジカルの強さ、瞬発的な戦闘能力では朝倉が上だ。

7月29日、パラエストラ松戸において練習を公開した直後の扇久保博正。表情に自信を漲らせていた(写真:RIZIN FF)
7月29日、パラエストラ松戸において練習を公開した直後の扇久保博正。表情に自信を漲らせていた(写真:RIZIN FF)

勝敗を分ける2つのポイント

この試合のポイントは2つある。

一つ目は、開始直後の朝倉の打撃による猛攻を扇久保が捌けるか否か。

1ラウンドの早い段階で、朝倉が得意な打撃を駆使し仕掛ける可能性が高い。

堀口戦と同様のパターンだ。いきなりスリリングな展開。ラッシュをかけた朝倉の強打が一発でもクリーンヒットしたならば短時間決着となるであろう。だが逆に、ここでの猛攻を扇久保がダメージを負うことなく捌き切れば展開は大きく変わる。スタミナに自信を持つ扇久保が試合の主導権を握ることになるかもしれない。

二つ目は、スタンドでの闘いにこだわる朝倉から、扇久保がテイクダウンを奪えるかどうか。

扇久保のテイクダウン技術の高さは、これまでの試合で十分に証明されている。それが腰の強い朝倉に通用するのかが大きな見所だ。

タックルをことごとく切られスタンドの展開が続けば朝倉のペースで試合は進むだろう。逆にグラウンド戦に持ち込めたなら扇久保の持ち味が活きる。グラウンドでの削り合いでは扇久保に一日の長があると見る。決めには至らなくても攻防を制する可能性は十分にあろう。

久しぶりの待ちに待ったRIZIN。そして珠玉の日本人対決。

堀口に2度敗れている扇久保と、その堀口を倒している朝倉の対峙。

私は、勢いを買って「朝倉優位」と予想するが何が起こっても不思議ではない。

そして今年の大晦日、この一戦の勝者は怪我から復帰する堀口恭司を迎え撃つことになろう。

スポーツジャーナリスト

1967年1月26日生まれ、三重県松阪市出身。上智大学文学部在学中から『週刊ゴング』誌の記者となり、その後『ゴング格闘技』編集長を務める。タイ、インドなどアジア諸国を放浪、米国生活を経てスポーツジャーナリストとして独立。プロスポーツから学校体育の現場まで幅広く取材・執筆活動を展開、テレビ、ラジオのコメンテーターとしても活躍している。『グレイシー一族の真実』(文藝春秋)、『プロレスが死んだ日。』(集英社インターナショナル)、『情熱のサイドスロー~小林繁物語~』(竹書房)、『伝説のオリンピックランナー”いだてん”金栗四三』、『柔道の父、体育の父  嘉納治五郎』(ともに汐文社)ほか著書多数。

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