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「後日装備」となっているもがみ型護衛艦のVLS、いつになったら装備されるのか?酒井海上幕僚長に聞いた

高橋浩祐米外交・安全保障専門オンライン誌「ディプロマット」東京特派員
3月6日に記者会見した海上自衛隊トップの酒井良海上幕僚長(筆者撮影)

「後日装備」となっている海上自衛隊のもがみ型護衛艦の垂直ミサイル発射システム(VLS)はいったいいつになったら装備されるのかーー。海上自衛隊トップの酒井良海上幕僚長は3月6日の記者会見で、この質問に答えた。

●これまでのもがみ型全艦がVLS「後日装備」

もがみ型護衛艦は年2隻というハイペースで建造が進められ、令和5(2023)年度計画艦までの計12隻で建造を終える予定だ。しかし、2022年4月に就役した1番艦もがみから、昨年11月に進水した8番艦ゆうべつにいたるまで、これまですべての艦のVLSが「後日装備」となってきた。

このため、海自艦艇を専門に扱うYouTubeチャンネルでも「もがみ型には本当にVLSは搭載されるの?」といった動画が流れるまでに至っている。

また、オーストラリア政府が同国海軍の水上戦闘艦隊の見直しの中で、次期フリゲートの候補としてもがみ型護衛艦を選んだことに関連し、内外の軍事評論家からは、もがみ型にVLSが依然装備されていないことから、その対空能力や防空能力を疑問視する声も上がっている。例えば、以下のような投稿がつい最近でもX(旧Twitter)で見られた。

オーストラリア政府が同国海軍の次期フリゲート候補に海自もがみ型護衛艦を選んだことに関連し、もがみ型護衛艦にVLSが装備されておらず、その対空能力の欠如を指摘するSNS投稿(筆者が画面をキャプチャー)
オーストラリア政府が同国海軍の次期フリゲート候補に海自もがみ型護衛艦を選んだことに関連し、もがみ型護衛艦にVLSが装備されておらず、その対空能力の欠如を指摘するSNS投稿(筆者が画面をキャプチャー)

筆者は6日の酒井海幕長の会見で、こうした内外の疑念の声を紹介し、VLS装備の是非や実施の時期について改めて質問した。これに対し、酒井海幕長の答えはこうだった。

もがみ型護衛艦のVLS装備は後日装備ということで建造を進めてきた。後日装備ということは文字通り、将来的に装備、整備するということだ。将来的に適切な時期に装備を予定しており、これは決して何らかの理由によって遅れているというものではない。
もがみ型のVLS装置については令和5年度予算において既に調達済みだ。その装備については部隊運用に影響を及ぼさないことを考慮し、適切な時期に確実に実施していく。当初計画通りの防空、対空能力を備えた艦艇になると認識している。

酒井海幕長は具体的なVLS装備の時期は明言しなかったものの、確実に装備を実施していく方針を強調した。そして、酒井海幕長の回答の中にあるように、防衛省は実際に令和5年度予算にもがみ型護衛艦10隻分のVLS MK41などの整備費用として787億円を計上した。

防衛省の「令和5年度予算の概要」より当該箇所を筆者がキャプチャー
防衛省の「令和5年度予算の概要」より当該箇所を筆者がキャプチャー

ただし、こうした事実は特に海外には周知されておらず、前述の海外識者のような間違ったSNS投稿が見られるまでに及んでいる。せっかくオーストラリア政府がもがみ型護衛艦に関心を寄せている中、こうした周知の徹底不足は日本の国益を損ないかねない。防衛省や自衛隊には、日本語のみならず、英語を筆頭にマルチ言語での対外発信を一層強化してほしいものだ。

なお、防衛省の昨年8月の説明によると、VLSが後日装備ではなく、竣工時から設置されているのは令和5年度計画艦のもがみ型11番艦、12番艦からとなっている。

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米外交・安全保障専門オンライン誌「ディプロマット」東京特派員

英軍事週刊誌「ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー」前東京特派員。コリアタウンがある川崎市川崎区桜本の出身。令和元年度内閣府主催「世界青年の船」日本ナショナルリーダー。米ボルチモア市民栄誉賞受賞。ハフポスト日本版元編集長。元日経CNBCコメンテーター。1993年慶応大学経済学部卒、2004年米コロンビア大学大学院ジャーナリズムスクールとSIPA(国際公共政策大学院)を修了。朝日新聞やアジアタイムズ、ブルームバーグで記者を務める。NK NewsやNikkei Asia、Naval News、東洋経済、週刊文春、論座、英紙ガーディアン、シンガポール紙ストレーツ・タイムズ等に記事掲載。

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