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「世界初のレールガン洋上射撃試験」について防衛装備庁に聞いた

高橋浩祐米外交・安全保障専門オンライン誌「ディプロマット」東京特派員
防衛装備庁は海自艦艇にレールガンを搭載し、世界初の洋上射撃試験を実施(同庁動画)

防衛装備庁は10月17日、火薬を使わずに電磁気の力で超高速の砲弾を発射する次世代兵器「レールガン」の洋上射撃試験を実施したと発表した。

防衛装備庁はSNSのX(旧ツイッター)への動画付きの投稿で「海上自衛隊との連携により艦艇にレールガンを搭載し、世界初となるレールガンの洋上射撃試験を実施」とアピール。「従来の火砲を凌駕する高速度の弾丸で、空や海上の脅威から艦艇を守るため、レールガンの早期実用化を推進しています」と述べた。

今回の「世界初のレールガン洋上射撃試験」について、筆者は防衛装備庁に文書で質問した。同庁は海自艦艇を使って今回の洋上射撃試験を実施したことを認めたものの、具体的な艦名は明かさなかった。

同庁との一問一答は以下の通り。

――今回のレールガンの洋上射撃試験は、どの艦艇で実施したのか。

「今回の洋上射撃試験は海上自衛隊の艦艇を使用しています」

――今回のレールガンの洋上射撃試験を防衛装備庁としては成功と考えているのか。

「洋上射撃試験では、搭載艦との適合性の確認や艦載によるレールガンへの影響に関するデータを取得することができ、所望の成果が得られたと考えています」

――このレールガンのプロジェクトの今後はどのようなものになっているのか。

「令和4(2022)年度より、レールガンの実用化に向けて重要となる連射性能、飛しょう時の安定性など、早期の実用化に向けて必要な技術全体の確立を目指す研究を実施しています。

並行して、レールガンを艦載して、実際に洋上射撃を行うなど更なる実用化に向けた実証試験を進めております。

防衛省としては、我が国の防衛力強化を加速させるため、レールガンの早期実用化に向けて着実に取り組んでいく考えです」

●防衛省、2016年度からレールガンの研究開始

防衛省は2016年度から2022年度まで予算10億円を投じてレールガンの基礎研究となる「電磁加速システムの研究」を実施した。これまでの実験では、全長6メートル、口径40ミリの砲身から発射された弾丸は、極超音速となるマッハ7近くの秒速2297メートルを記録した。連射も可能で、通常の迎撃ミサイルよりコストを抑えられる。特に中国や北朝鮮、ロシアが開発するマッハ5超の「極超音速兵器」に対する迎撃兵器として期待が高まっている。ただし、大量の電力を必要とするため、大容量の電源装置が欠かせず、艦艇などへの搭載に向けてはその小型化が課題となっている。

防衛省は将来レールガンの研究費として2022年度に65億円、2023年度に160億円をそれぞれ計上した。今夏の2024年度概算要求では238億円を求めた。

防衛省は、レールガンとともに、ドローンを撃墜する高出力レーザーや高出力マイクロ波をゲームチェンジャーとなり得る最先端技術兵器として研究開発を進めている。

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米外交・安全保障専門オンライン誌「ディプロマット」東京特派員

英軍事週刊誌「ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー」前東京特派員。コリアタウンがある川崎市川崎区桜本の出身。令和元年度内閣府主催「世界青年の船」日本ナショナルリーダー。米ボルチモア市民栄誉賞受賞。ハフポスト日本版元編集長。元日経CNBCコメンテーター。1993年慶応大学経済学部卒、2004年米コロンビア大学大学院ジャーナリズムスクールとSIPA(国際公共政策大学院)を修了。朝日新聞やアジアタイムズ、ブルームバーグで記者を務める。NK NewsやNikkei Asia、Naval News、東洋経済、週刊文春、論座、英紙ガーディアン、シンガポール紙ストレーツ・タイムズ等に記事掲載。

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