日本が開発するレールガンと高出力レーザー、共通の課題と大きな違いとは?
防衛装備庁は、14日から15日まで都内で開催した「技術シンポジウム2023」で、従来の戦闘を一変する「ゲーム・チェンジャー」として注目を集める「レールガン」と「高出力レーザーシステム」の2つの研究成果を発表した。
レールガンは従来の火薬を使わずに電気のエネルギーを利用して極超高速の弾丸を発射する。防衛装備庁のこれまでの実験では、全長6メートル、口径40ミリの砲身から発射された弾丸は、極超音速となるマッハ7近くの秒速2297メートルを記録し、従来火砲の中で高速な戦車砲の秒速約1750メートルを上回った。連射も可能で、通常の迎撃ミサイルよりコストを低く抑えられる。特に中国や北朝鮮、ロシアが開発する極超音速兵器に対抗する次世代の迎撃兵器として期待が高まっている。
一方、高出力レーザーシステムは文字通り、高出力のレーザー光を高速で動く目標標的に照射し、瞬時にダメージを与える装置だ。電源が供給される限り、撃ち続けられる「弾切れ」がないことと、迎撃にかかるのは電気代だけであることが大きなメリットとなっている。防衛装備庁は、高出力レーザーをドローンや迫撃砲弾の撃破のほか、将来的にはミサイルを迎撃する装備システムとして研究開発を推し進めている。
●共通の課題は「電源設備の小型化」
レールガンと高出力レーザーシステムの共通の課題となっているのが電源設備の小型化だ。両装備システムはともに大量の電力を必要とするため、大容量の電源装置が欠かせない。艦艇などへの搭載に向けてはその小型化が課題となっている。
防衛装備庁によると、レールガンの電源部の仕様は充電エネルギーが5メガジュール、充電電圧が8.5kVの高電圧に及び、試作装置は20フィートコンテナ(長さ約6メートル、幅約2.4メートル、高さ約2.6メートル)4台分の大きさに達したという。
一方のレーザーシステム試作装置(川崎重工製)は総出力が100キロワットで、試作装置は40フィートコンテナ(長さ約12メートル、幅2.4メートル、高さ2.4メートル)2台分の大きさになったという。
つまり、両装備システムの大きさはほぼ同じで、依然大型化している。装備の小型化を図るためには電源設備の小型が必要となる。
ともに電源の小型化が求められる中、はたして同じ電源を使うことはできないのか。
防衛装備庁担当者は「まったく同じ電源装置を使うことはないとしても、電源小型化の技術は共通して活用できる」と話した。
●レールガンと高出力レーザーシステムの大きな違い
「技術シンポジウム2023」では「将来的にレールガンと高出力レーザーシステムをどのように使い分けるのか。どのような比較ができるのか」との質問が会場から出た。
これに対し、防衛装備庁担当者は、レールガンの利点について、高出力レーザーと違って、弾が物体であり、物を壊すことをしっかり最後までできると指摘し、「信頼できるレベルで物を壊すことができる」と述べた。さらにレールガンは天候などによる影響もあまりないと説明した。レーザーは光であるため、雲を透過しないなど天候の影響を受けやすい。
一方、高出力レーザーの利点としては、レーザーの出力がどれくらいかにもよるが、一般的に必要となる電源エネルギー量は比較的少なく、システムとして小さくなる点を挙げた。
いずれにせよ、防衛装備庁はそれぞれの特徴を生かした運用を構想しつつ、早期装備化に向けて研究開発を加速していく方針だ。
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