Yahoo!ニュース

「中国が世界最大の海軍を保有」米国防総省が指摘

高橋浩祐米外交・安全保障専門オンライン誌「ディプロマット」東京特派員
中国海軍の094型原子力潜水艦(写真:ロイター/アフロ)

「中国は現在、世界最大の海軍を保有している」「中国軍の目的は2049年末までに世界一流の軍隊になることである」――。

米国防総省(ペンタゴン)は9月1日に発表した、中国の軍事力についての年次報告書「2020 China Military Power Report」の中で、こう指摘した。

200ページにわたる同報告書の中で、ペンタゴンは中国海軍が現在、130隻以上の水上戦闘艦を含む約350隻の艦艇を保有していることを指摘し、米海軍の約293隻を上回っていると述べた。

●中国、戦略ミサイル原子力潜水艦(SSBN)4隻を運用

報告書はこのほか、中国海軍が核弾頭搭載の弾道ミサイルで攻撃できる094型原子力潜水艦(SSBN)(晋級)4隻をすでに運用し、新たに2隻が各種装備などを船体に取り付ける艤装(ぎそう)中と指摘した。この094型原子力潜水艦は、最大射程7500キロの潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)「巨浪2(JL2)」を12発搭載でき、中国南部の海南島の亜竜湾海軍基地に配備されている。

報告書は中国海軍が2030年までに094型と、現在開発中の最新の096型原子力潜水艦(唐級)を合わせてSSBN8隻を保有する可能性があると指摘した。

また、報告書は、中国が攻撃型原子力潜水艦(SSN)を6隻、攻撃型ディーゼル潜水艦(SS)を50隻それぞれ保有運用していると指摘している。そして、2020年代を通じて、65隻から70隻の潜水艦を維持すると予測している。

中国の空母については、中国海軍が現在、旧ソ連製を改修した「遼寧」と中国初の国産空母「山東」の2隻を運用している事実を指摘。国産空母2隻目が2023年までに中国海軍に引き渡され、2024年までに運用を開始するとの見通しを示した。中国はさらに国産空母3隻目を建造中で、4隻目は計画保留中とみられている。

●「中国の核弾頭保有数、今後10年間で倍増」

また、報告書は、中国の核弾頭保有数が今後10年間で、現在の200個程度から少なくとも倍増するとの見通しも示した。

報告書はさらに、中国が射程500キロから5500キロの地上発射弾道ミサイル(GLBM)と地上発射巡航ミサイル(GLCM)を1250発以上保有していると指摘した。これに対し、アメリカは射程70キロから300キロの一種類の通常弾頭型GLBMを配備し、GLCMは保有していないと述べた。

ミサイル防衛については、中国がロシア製の地対空ミサイルS-300やS-400、さらには国産システムを含め、世界最大規模の先端的な長射程の統合防空システムを保有していると指摘した。

中国の習近平国家主席(写真:ロイター/アフロ)
中国の習近平国家主席(写真:ロイター/アフロ)

中国の習近平国家主席は2049年の建国100周年に向け、「中華民族の偉大な復興」という「中国の夢」(チャイナドリーム)を提唱している。習氏は、中国が2049年までにアメリカ軍に匹敵あるいはそれを上回る「世界一流の軍隊」を保有するとの目標を2017年に初めて打ち出した。

●中国の公表国防費は日本の防衛予算の3倍以上

報告書は、中国の2019年の公表国防費が1740億ドル(約18兆5000億円)に達し、日本の防衛予算の3倍以上に及んでいることを示している。

インド太平洋地域の主要国の国防費(出所:2020 China Military Power Report)
インド太平洋地域の主要国の国防費(出所:2020 China Military Power Report)

また、報告書は中国と台湾との戦力比較の表も掲載している。

中国と台湾の戦力比較表(出所:2020 China Military Power Report)
中国と台湾の戦力比較表(出所:2020 China Military Power Report)
中国と台湾の戦力比較と中国のミサイル戦力についての表(出所:2020 China Military Power Report)
中国と台湾の戦力比較と中国のミサイル戦力についての表(出所:2020 China Military Power Report)

(関連記事)

「日本はもはや中国にとって大きな脅威ではない」中国の環球時報が社説で論評

中国海軍、最新の原子力潜水艦を就役

アメリカ海洋覇権に陰りか。海軍幹部が将来目標の355隻体制の実現困難認める

世界初のリチウムイオン電池搭載の新潜水艦「おうりゅう」が海上自衛隊に引き渡し

リチウムイオン電池搭載の海上自衛隊の最新鋭潜水艦「とうりゅう」が進水。韓国も同種の潜水艦を開発中

護衛艦「いずも」、正真正銘の空母へ。F35Bの発着艦に必要な改修費31億円を計上

新型コロナ禍の2020年1~4月、中国公船の尖閣諸島接近は過去最多

コロナ禍の1~8月、中国公船の尖閣接近は過去最多――日本は中国にレッドラインを示さなくてもいいのか

米外交・安全保障専門オンライン誌「ディプロマット」東京特派員

英軍事週刊誌「ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー」前東京特派員。コリアタウンがある川崎市川崎区桜本の出身。令和元年度内閣府主催「世界青年の船」日本ナショナルリーダー。米ボルチモア市民栄誉賞受賞。ハフポスト日本版元編集長。元日経CNBCコメンテーター。1993年慶応大学経済学部卒、2004年米コロンビア大学大学院ジャーナリズムスクールとSIPA(国際公共政策大学院)を修了。朝日新聞やアジアタイムズ、ブルームバーグで記者を務める。NK NewsやNikkei Asia、Naval News、東洋経済、週刊文春、論座、英紙ガーディアン、シンガポール紙ストレーツ・タイムズ等に記事掲載。

高橋浩祐の最近の記事