新型コロナ禍の2020年1~4月、中国公船の尖閣諸島接近は過去最多

西太平洋での軍事演習に参加する中国海軍の空母「遼寧」(2018年4月18日撮影)(写真:ロイター/アフロ)

2020年1~4月の中国公船による尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺の領海侵入とその外側にある接続水域内で確認された隻数は合わせて409隻となり、2012年9月の統計開始以来、同期比で過去最多となった。海上保安庁のデータで分かった。

世界各国が新型コロナウイルスの感染対応に追われるなか、中国はその間隙を縫うようにして、東シナ海や南シナ海、西太平洋に進出し、軍事的な存在感をぐっと強めている。

海上保安庁のデータによると、1~4月の中国公船による尖閣諸島接近は前年同期比では22%増えた。409隻の内訳は28隻が領海(沿岸から約22キロ)への侵入、381隻が接続水域(領海の外側約22キロ)内での確認となっている。4月30日も接続水域で中国海警局の船4隻が航行しているのを海上保安庁の巡視船が確認し、17日連続の尖閣接近となった。日本の海上保安庁に相当する中国の海警局は、軍の指揮下にある武装警察の傘下に置かれている。

●中国空母が初めて宮古海峡を往復

11日には、中国の空母「遼寧」とミサイル駆逐艦など計6隻が沖縄本島と宮古島の間の宮古海峡を南下して東シナ海から太平洋に向かったのを海上自衛隊の艦艇や航空機が確認。28日にはこれらの6隻が同じ宮古海峡を逆に北上し、東シナ海に戻った。防衛省統合幕僚監部によると、中国の空母が宮古海峡を通過したのはこれが5回目で、その往復が確認されたのは初めてとなった。

また、16日には南シナ海で中国の海洋調査船「海洋地質8号」が中国海警局の船1隻にエスコートされながら、マレーシアのボーリング船「ウエストカペラ」に接近し、緊張が高まった。海域はマレーシアの排他的経済水域(EEZ)だった。両国の外交問題に発展した。

これを受け、アメリカ軍とオーストラリア軍は翌週、ウエストカペラが操業する近くの海域で合同訓練を実施した。アメリカ海軍の巡洋艦バンカーヒルと強襲揚陸艦アメリカ、駆逐艦バリーの米艦船3隻と豪州海軍のフリゲート艦パラマッタが参加した。中国への強いけん制だった。

このほか、中国は19日に一方的に西沙諸島と南沙諸島に行政区を確立した。中国は南シナ海を内海化するためにも、これらの諸島の実効支配に加えて行政区の設置を図ったとみられる。セオドア・ルーズベルトや横須賀を母港とするロナルド・レーガンなどアメリカ空母4隻で新型コロナの感染が確認され、一部であれ、事実上無力化されるなか、中国が政治的にも一気に攻勢に出た格好となった。

●孫子の兵法「戦わずして勝つ」

中国の「孫子の兵法」で最善の策とされているのが、戦わずに勝つことだ。各国が新型コロナ対策の対応に追われているすきに、じわじわと既成事実を積み重ねる「サラミ戦術」を活かしながら一気に現状変更を行う――。南シナ海での行政区の設置は、その最たる例となった。

しかし、南シナ海での中国の一方的な行政区の設置は、中国と領有権を争うベトナムやフィリピン、マレーシア、ブルネイ、台湾のほか、アメリカといった国々からの強い反発を招いている。特にベトナムはここ一年強の間に、漁船2隻が西沙諸島で中国海警局の船によって衝突され、沈まされており、中国に猛抗議している。

中国は常々、日米両国に南シナ海の問題には介入するなと主張してきたが、日米にとっては、ますますそういう訳にはいかなくなるだろう。

防衛省のシンクタンク、防衛研究所が4月10日に発表した報告書は、中国が第1列島線(沖縄-台湾-フィリピン)はおろか、第2列島線(小笠原諸島-米領グアム-パプアニューギニア)をも越えて、西太平洋全域で軍事力を展開する可能性を示した。そして、「これまでの中国は『第1列島線』を突破し、『第2列島線』にまで進出することを狙う漸進的戦略をとっていたが、今後の太平洋島嶼国との関係如何によってはグアム島を後背から狙う戦略も選択肢に入ることになる」と警鐘を鳴らした。

●キッシンジャー氏「国が豊かになればエネルギーとたんぱく質を求める」

ヘンリー・キッシンジャー元米国務長官はかつて「国が豊かになれば、エネルギーとたんぱく質を求めなくてならなくなる」と述べた。キッシンジャー氏の指摘通り、中国も航空戦力と海上戦力を強化して海洋進出を図り、資源獲得のシーレーン(=エネルギー)と漁場(=たんぱく質)の確保を目指しているとみている。

ヘンリー・キッシンジャー元米国務長官
ヘンリー・キッシンジャー元米国務長官

中国は大陸国家から海洋国家に軸足を移している。日本は米豪英仏等との連携などますます備えが必要だろう。そして、南シナ海の二の舞いを演じないよう、中国による尖閣諸島を含めた東シナ海の内海化にもさらに警戒を強めなくていけないだろう。