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出ない杭は打たれない?森保監督解任論が出ない日本サッカーを取り巻く構造

杉山茂樹スポーツライター
(写真:ロイター/アフロ)

 イラク戦。その1-2の敗戦には、様々な要素が絡んでいることは言うまでもない。目立つのは、あの選手がもう少しこうしていれば失点は防げた等々、敗因を失点シーンに絡んだ選手個々に求めようとする声だ。サッカーの本質から外れた、言うならば今日的な反応だなと思う。

 サッカーは流れのスポーツだ。失点の原因を探ろうとしたとき、遡るべきは1プレー前なのか、2プレー前なのか、さらにその前になるのか。糸を慎重にたぐっていく必要がある。

 わかりやすいのは1プレー前、2プレー前だ。今日ダイジェスト映像が簡単に手に入ることも輪をかける。プレーに関与した個人名も浮上する。ともするとそれはエラーに見える。野球で言えば失策だ。投球ミス、走塁ミス……。スポーツネットの見出しに競技の垣根はない。流れのスポーツであるサッカーと野球は本質的に180度異なるにもかかわらず、似た言い回しで語られがちだ。

 サッカーらしさとは何か。サッカー(ある競技)を他の競技のコンセプトで語るなーーとは、何を隠そう筆者がライターとしてこだわっているポイントだ。その垣根を取っ払った表現の方が、訴求力が高い場合がある。万人受けしやすい。今風に言えばページビューは伸びやすい。だがそれではサッカーの魅力は伝わらない。

 森保監督は、目指すサッカーの中身について積極的に語ろうとしない。日本人監督はその傾向が概して強いが、森保監督の場合はなおさらだ。代表監督の座に就いて5年半が経過。口にしたことは数えるほどだ。

「よい守備からよい攻撃へ」は、その貴重な一言になる。抽象的ではあるが象徴的な言い回しだ。

 その逆、すなわち「よい攻撃からよい守備へ」とは言わないところに森保色が滲み出る。よい守備が、よい攻撃を重要度で上回っていることがわかる。

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スポーツライター

スポーツライター、スタジアム評論家。静岡県出身。大学卒業後、取材活動をスタート。得意分野はサッカーで、FIFAW杯取材は、プレスパス所有者として2022年カタール大会で11回連続となる。五輪も夏冬併せ9度取材。モットーは「サッカーらしさ」の追求。著書に「ドーハ以後」(文藝春秋)、「4−2−3−1」「バルサ対マンU」(光文社)、「3−4−3」(集英社)、日本サッカー偏差値52(じっぴコンパクト新書)、「『負け』に向き合う勇気」(星海社新書)、「監督図鑑」(廣済堂出版)など。最新刊は、SOCCER GAME EVIDENCE 「36.4%のゴールはサイドから生まれる」(実業之日本社)

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