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いつ退任しても不思議ではない鬼木監督。狭き門を戦う大岩監督。サッカーは監督で決まる

杉山茂樹スポーツライター
大岩剛監督(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

「日本人監督の中では実績ナンバーワン」とは、2018年ロシアW杯後、田嶋幸三前会長が森保一を代表監督に招聘した理由について述べた台詞だ。

 2012年優勝、2013年優勝、2014年8位、2015年優勝、2016年6位。2017年は一転、シーズン中盤まで采配を振るも降格圏を脱せず、そこで解任の憂き目に遭う。これが、森保監督のサンフレッチ広島時代の成績だ。田嶋前会長はこの5シーズン半の実績を高く評価したわけだ。

 広島は2017年シーズン、15位で終了。辛うじてJ2降格を免れたわけだが、森保監督がシーズンの最後まで続投していたら翌年、代表監督に就任することはなかっただろう。いいタイミングで辞めた。辞め時がよかった。監督としてのキャリアに傷がつくことはなかった。いま振り返ればそういう話になる。就任期間5年半の間に3度Jリーグを制した事実の前に、6シーズン目の不成績は不問に付されることになった。

 そんな森保監督の任期にも限りがある。次のW杯が終われば代表監督の座はそれ以外の人の手に渡る。

 代表監督の重要性についてはいまさら語るまでもないが、これまでをみていると、2年と3ヶ月後(2026年8月前後)に控える監督交代がいまから心配になる。再び「日本人監督の中では実績ナンバーワン」では弱すぎる。アバウトで雑だ。もっとサッカーの中身についてキチンと語らないと、日本のサッカーは進歩しない。代表監督の決定までの経緯に、日本のサッカーのレベルを見て取ることができるといっても過言ではない。

 決定権は誰にあるのか。任命責任は誰にあるのか。その点がまずハッキリしない。「日本人監督の中では実績ナンバーワン」と述べた田嶋前会長にもはや影響力はない。技術委員長もこの間3人(関塚隆、反町康治、影山雅永)交代している。

 ナショナルチームダイレクターにどのような権限があるのか定かではないが、この職もこれまで2人(関塚、山本昌邦)交代している。在位5年9ヶ月を数える森保監督が一番の古株になっている。任命責任者不在。続投に協会の体制が追いついていない。組織として異常な状態と言わざるを得ない。

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スポーツライター

スポーツライター、スタジアム評論家。静岡県出身。大学卒業後、取材活動をスタート。得意分野はサッカーで、FIFAW杯取材は、プレスパス所有者として2022年カタール大会で11回連続となる。五輪も夏冬併せ9度取材。モットーは「サッカーらしさ」の追求。著書に「ドーハ以後」(文藝春秋)、「4−2−3−1」「バルサ対マンU」(光文社)、「3−4−3」(集英社)、日本サッカー偏差値52(じっぴコンパクト新書)、「『負け』に向き合う勇気」(星海社新書)、「監督図鑑」(廣済堂出版)など。最新刊は、SOCCER GAME EVIDENCE 「36.4%のゴールはサイドから生まれる」(実業之日本社)

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