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打倒ドイツ。大番狂わせを起こすには2010年の岡田ジャパンのような特別な作戦が必要不可欠である

杉山茂樹スポーツライター
写真:Shigeki SUGIYAMA

「目標はW杯ベスト8」。森保監督は日本代表監督就任会見でそう述べた。それを受けて筆者は「可能性はある。だが、その可能性は別の監督で臨んだ方がより高まる」と考えた。本大会のグループリーグ分け抽選で、日本がドイツ、コスタリカ、スペインと同じ組を戦う結果になっても、その考えに変わりはない。思いはますます強まっている。

 森保監督は依然としてベスト8を口にしているが、そのためには、ドイツかスペインのどちらかを倒す必要がある。世界をアッと驚かす番狂わせを起こさなくてはならない。打倒ドイツ、打倒スペインに向けた秘策を練る必要がある。カタールW杯に臨む日本代表監督は、アイディア豊富な策士でなければならないのだ。その匂いが森保監督にするかと問われれば、相変わらずノーと答える他ない。そこでベスト8入りを誓われても、ヘッドアップするな、目の前の試合に集中せよ、大相撲で言えば「1日一番」だと指摘したくなる。

 ドイツ戦が初戦で、スペイン戦は3戦目だ。ドイツ戦の勝利なくして、スペイン戦はない。ベスト8は言うに及ばず、である。カギはドイツ戦。全力を傾けるべきはこの初戦なのだ。

 ところが、森保ジャパンは9月にドイツ(デュッセルドルフ)で親善試合を2試合(アメリカ戦、エクアドル戦)行い、日本の姿を「敵地」で曝け出している。従来の4-3-3ではなく、フランクフルト所属の鎌田大地を1トップ下に据える4-2-3-1で戦い、そこに一定の方向性を見いだしたばかりなのだ。

 頭をよぎるのは2006年ドイツW杯。ジーコジャパンが大会直前にレバークーゼンでドイツ代表と行ったスパーリングマッチだ。4-2-2-2と3-4-1-2という2つの選択肢を持っていたジーコジャパンが、このドイツ戦で使用したのは3-4-1-2で、ジーコはこの試合後、あろうことかW杯初戦対オーストラリア戦に臨むスタメンを発表してしまったのだ。

 その顔ぶれを見れば、使用する布陣が3-4-1-2であることはバレバレだった。日本代表監督ジーコはオーストラリアの監督、フース・ヒディンクに、日本の不利益になる情報を自らの口でプレゼントすることになった。結果は推して知るべしである。

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スポーツライター

スポーツライター、スタジアム評論家。静岡県出身。大学卒業後、取材活動をスタート。得意分野はサッカーで、FIFAW杯取材は、プレスパス所有者として2022年カタール大会で11回連続となる。五輪も夏冬併せ9度取材。モットーは「サッカーらしさ」の追求。著書に「ドーハ以後」(文藝春秋)、「4−2−3−1」「バルサ対マンU」(光文社)、「3−4−3」(集英社)、日本サッカー偏差値52(じっぴコンパクト新書)、「『負け』に向き合う勇気」(星海社新書)、「監督図鑑」(廣済堂出版)など。最新刊は、SOCCER GAME EVIDENCE 「36.4%のゴールはサイドから生まれる」(実業之日本社)

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