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W杯に臨む森保Jが、中継ぎを惜しげもなくつぎ込む日本シリーズから学ぶこと

杉山茂樹スポーツライター
(写真:なかしまだいすけ/アフロ)

 前回のロシアW杯で、グループリーグの3試合と決勝トーナメント1回戦の計4試合を戦った日本。初戦のコロンビア戦と2戦目のセネガル戦の間隔だけが中4日で、残る2試合は中3日での戦いだった。それが今回のカタールW杯では、少なくともグループリーグの3試合はすべて中3日で行われる。

 西野監督はその1戦目と2戦目を同じスタメンで戦い、3戦目(ポーランド戦)はスタメンを大改造して臨むことになった。1戦目と2戦目のベストメンバー色は鮮明になった。3戦目はそれまでサブとして扱われていた6人を加えた11人で戦った。その6人のサブ色は、4戦目のベルギー戦で、西野監督がスタメンを再び「ベストメンバー」に戻したことで、いっそう鮮明になった。西野監督はベストメンバーとサブをハッキリ分けて戦う采配をした。

 ベルギーに勝利していたら、中3日で行われる第5戦(準々決勝)をどんなスタメンで戦うつもりだったのか。西野さんに今更ながら尋ねたくなる。4たび、ベストメンバーの11人で行くのか。3戦目のようにサブを6人加えた11人で行くのか。はたまた全く新しい11人で臨むのか。ただ、いずれを採用した場合も期待は持てなかった。やりくりは利かなくなっていた。手は詰まっていた。

 しかし、こうなることは2戦目のスタメンを見た瞬間に予想できた。可能な限りベストメンバーで押し通すやり方は、使える選手の絶対数が不足していること、すなわち、選手層の薄さを自ら吹聴するようなもの。上のステージに進むイメージを最初から描いていない、弱小国の戦い方になる。

 しかし、日本はロシアW杯で6回連続出場本大会出場を数えるいわば常連国だ。西野監督も目標をグループリーグ突破としていた。4試合を戦うつもりで臨んでいた。にもかかわらず、当たって砕けろと言わんばかりの采配に出た。先を見越した戦いをすることができなかった。

 ベルギー戦で逆転負けを許した理由について様々な見方があるが、筆者は精神論に頼るサッカーの限界だと見る。日本のスポーツの悪しき伝統を見た気がした。西野監督の選手起用は、甲子園の高校野球に通底する1戦必勝の、敗れれば明日がないトーナメント戦の文化に基づいていた。

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スポーツライター

スポーツライター、スタジアム評論家。静岡県出身。大学卒業後、取材活動をスタート。得意分野はサッカーで、FIFAW杯取材は、プレスパス所有者として2022年カタール大会で11回連続となる。五輪も夏冬併せ9度取材。モットーは「サッカーらしさ」の追求。著書に「ドーハ以後」(文藝春秋)、「4−2−3−1」「バルサ対マンU」(光文社)、「3−4−3」(集英社)、日本サッカー偏差値52(じっぴコンパクト新書)、「『負け』に向き合う勇気」(星海社新書)、「監督図鑑」(廣済堂出版)など。最新刊は、SOCCER GAME EVIDENCE 「36.4%のゴールはサイドから生まれる」(実業之日本社)

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