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「堅守速攻」イコール「守備的サッカー」ではない

杉山茂樹スポーツライター

攻撃的サッカーとは何か。改めて整理すれば、以下の通りになる。

1)ボールを奪う位置が高い。

2)中盤のエリア(パスが回りそうなエリア)が広い。

3)攻撃のルートが多彩。

4)パスコースが多い。

5)ボール支配率が高い。

6)最終ラインの位置が高い。

7)使用する布陣そのものが攻撃的。

個人の能力に関わる要素も加えれば、サイドバックが攻撃参加する機会の多さや、最終ラインの選手の高いフィード能力も不可欠な要素になる。

だが、これらの要素は単体では存在しにくい。他の要素と密接に絡み合っている。ザックジャパンの「路線」は攻撃的だった。支配率に拘るサッカーをしたと言われる。しかし、支配率を上げようとするなら、攻撃的サッカーに不可欠なその他の要素も、同時に満たしている必要がある。

中盤のエリアが狭ければ、パスの難易度は上昇する。ボール支配率にも影響が出る。ザックジャパンのサッカーがそれだった。それぞれの要素は関連しあっている。他もそれなりの設定になっていなければ、ボール支配率は上がらない。支配率は相乗効果によってもたらされる結果的なものなのだ。

言い換えれば、支配率が多少下がっても、他の要素が満たされていれば、攻撃的サッカーの範疇から逸脱することはない。

しかし、世の中には、高いボール支配率こそが攻撃的サッカーの証と捉えているようなムードを感じる。ブラジルW杯での惨敗劇を受けて、引いて守ってカウンターという意味での「堅守速攻」こそが、日本のあるべき姿だと言い出す人も

目立つようになっている。

ボール支配率に拘るサッカーか、堅守速攻か。このような二者択一論になっているわけだ。しかし、これはまさに白か黒かの極端すぎる話だ。

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スポーツライター

スポーツライター、スタジアム評論家。静岡県出身。大学卒業後、取材活動をスタート。得意分野はサッカーで、FIFAW杯取材は、プレスパス所有者として2022年カタール大会で11回連続となる。五輪も夏冬併せ9度取材。モットーは「サッカーらしさ」の追求。著書に「ドーハ以後」(文藝春秋)、「4−2−3−1」「バルサ対マンU」(光文社)、「3−4−3」(集英社)、日本サッカー偏差値52(じっぴコンパクト新書)、「『負け』に向き合う勇気」(星海社新書)、「監督図鑑」(廣済堂出版)など。最新刊は、SOCCER GAME EVIDENCE 「36.4%のゴールはサイドから生まれる」(実業之日本社)

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