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ビリー・ジョー・ソーンダース、祖国のライバルと12月4日に防衛戦

林壮一ノンフィクションライター
WBOスーパーミドル級王者はブランク明けの試合に38歳の同国籍ファイターを選んだ(写真:ロイター/アフロ)

 29戦全勝14KOのビリー・ジョー・ソーンダース(31)が、12月4日にWBOスーパーミドル級タイトルの防衛戦を行う。同タイトル2度目の防衛戦となる今回の相手は、同胞のマーティン・マレー(38)。ソーンダースにとって13カ月ぶりの試合となる。

 ソーンダースは、本来なら今年5月2日にサウル・"カネロ"・アルバレスと戦う筈であったが、新型コロナウィルス感染防止策で試合が流れた。

 WBOスーパーミドル級王者は話す。

 「もう1年も試合をしていないから、リングが恋しい。新型コロナウィルスは、様々な形で人類に影響を及ぼしている。ボクシング界もダメージを喰らった。カネロ戦もやりたいけれど海外渡航禁止令などで、この12月には実現しない。フラストレーションが溜まるな。

 マーティンと俺とのファイトは、過去に2度交渉の機会を持ったが具体化しなかった。互いにつまらないことを言い合ったし、ここで戦うのはアリだ」

 マレーは2013年4月27日にセルヒオ・マルチネスの持つWBCミドル級タイトルに挑み、判定で敗れている。2015年2月21日にはGGGに挑戦し、第11ラウンドTKOで敗者となった。

 順当にいけばチャンピオン有利であろう。が、活動停止中に、どのようにモチベーションを保っていたかが明暗を分けそうだ。先日のテオフィモ・ロペス・ジュニアvs.ワシル・ロマチェンコ戦の例もある。

 カネロ戦を熱望していたソーンダースがいかに不満を解消して、このファイトを見据えるかーーがポイントとなる。

 世界のベルトを懸けた英国人対決と聞いて私が思い出すのは、1993年10月1日のWBCヘビー級タイトルマッチ、レノックス・ルイスvs.フランク・ブルーノ戦だ。

 カーディフのナショナル・スタディアムは、2万5784人のファンで埋め尽くされ、当時28歳だったチャンピオン、ルイスが第7ラウンドに左フックをヒットし、31歳の挑戦者をTKOで下した。

 この時、英国内ではブルーノを応援する者が圧倒的に多かった。12歳でカナダ移民となり、メイプルリーフ旗を背負って1988年ソウル五輪の金メダリストとなったルイスを、祖国のファンは歓迎しなかった。

 しかしながら、ファイターとしての両者には差があった。ファイトマネーもチャンピオンの800万ドルに対し、ブルーノは150万ドルだった。

 ルイスという選手は、持って生まれたポテンシャルは最高級であったが、自身の力を3割ほどしか出さなくても統一ヘビー級王者になれてしまい、己を燃やし切れない男だった。客を熱狂させる何かに欠けていた。https://news.yahoo.co.jp/byline/soichihayashisr/20171201-00078376/

 それでもブルーノ戦はイングランドで行われる同国人同士の世界戦とあって、ボクシング興行としては稀な盛り上がりを見せた。

 ソーンダースvs.マレー戦は、アリーナに観客を入れるのか、あるいは無観客とするか、まだ情報は入らない。いずれにしても、英国人ファンにとってはクリスマス前のお楽しみとなるのは間違いない。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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