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統一ヘビー級タイトルマッチ、アンソニー・ジョシュアvs.タイソン・フューリー戦実現へ

林壮一ノンフィクションライター
WBA、IBF、WBOのベルトを保持するジョシュア(写真:ロイター/アフロ)

 「次はフューリー戦だ。このカード以上にプライオリティーのある試合などない」

 WBA/IBF/WBOヘビー級王者、アンソニー・ジョシュアのプロモーター、エディ・ハーンは、ワイルダーvs.フューリーIIの2日後に、そう捲し立てた。ハーンはWBC新チャンピオン、タイソン・フューリーとの統一戦を最優先として動き始める、と正式にアナウンスした。

Photo:Mikey Williams/Top Rank
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 ハーンは「次の試合」を強調する。

Photo:Mikey Williams/Top Rank
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 デオンテイ・ワイルダー陣営は、タイソン・フューリーとの再々戦のオプションを持っている。ワイルダーvs.フューリーII時の契約では、「第3戦は7月18日までに米国開催で」となっている為、マッチメイカーの駆け引きが今後を左右する。実はジョシュアサイドも、6月20日にIBF1位のクブラト・プレフとの防衛戦を組もうとしていた。

 「でも、フューリーvs.ワイルダーIIIが無いのなら、我々は全てを懸けてジョシュアvs.フューリー戦を正式に決めるよ」と、ハーンの鼻息は荒い。

Photo:Mikey Williams/Top Rank
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 ヘビー級の頂上対決が英国人同士というのも、このプロモーターのモチベーションを高めているであろう。

 先日、ESPNが歴代のチャンピオンからコメントを集めた。ジョージ・フォアマン、イベンダー・ホリフィールド、リディック・ボウ、マイケル・モーラー、シャノン・ブリッグス、レイモン・ブリュースター、クリス・バード、バーナード・ホープキンス、シェーン・モズリー、アンドレ・ウォードらが、アンソニー・ジョシュアvs.タイソン・フューリー戦の実現を心待ちにしていると述べた。

Photo:Mikey Williams/Top Rank
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 WBCタイトルを失ってから、子供じみた言い訳を続けていたワイルダーだが、2月末になって「やはり、マーク・ブリーランドは自分のチームに必要だ」と発言。ブリーランドは1984年ロス五輪の金メダリストで、プロ転向後はWBAウエルター級タイトルを2度獲得した実力者である。トレーナーとしての引き出しも多い。

 そのブリーランドを袖にしたワイルダーは、ボクサーとしてだけでなく、男としての価値も著しく下げたhttps://news.yahoo.co.jp/byline/soichihayashisr/20200227-00164627/。ボクシング界からは「聞き苦しい言い逃れに加え、命を救ったトレーナーに対して何という発言をするのだ」という嘆きばかりが聞こえて来る。浅はかな人間性を露にしてしまったワイルダーは、非難の大きさに驚き、考えを改めたのか…。いずれにしても、この男に未来は無さそうだ。

 さて、英国人対決となると、彼らの祖国での開催となるか? ワイルダーvs.フューリーIIは、ネバダ州で行われたヘビー級タイトルマッチのチケット収益において過去最高の1691万6440ドルを記録した(もっとも、フロイド・メイウェザー・ジュニアvs.マニー・パッキャオの7220万ドル強には遠く及ばないが)。開催地として名乗りを上げる場所、箱、スポンサードする社も大きな戦いが展開されるに違いない。

Photos:Mikey Williams/Top Rank
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 23勝(21KO)1敗の30歳、ジョシュアと、30勝(21KO)無敗1引き分けの31歳、フューリー。ハーンは「今年中にセットしたい」と話す。その言葉に期待したい。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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