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日本ライト級タイトルマッチ

林壮一ノンフィクションライター
撮影:山口 裕朗

 4月9日に行われた日本ライト級タイトルマッチは、挑戦者三代大訓が96-94、96-94、97-93で仲里周磨を下し、新チャンピオンとなった。仲里は2度目の防衛に失敗した。

撮影:山口 裕朗
撮影:山口 裕朗

 5回終了時の採点は、ジャッジ3名全員が48-47で仲里優勢としていた。後半に進むに従って三代がジャブでポイントを稼いだ。

 チャンピオンのコーナーで息子のチーフセコンドを務めたのは、元OPBF東洋太平洋スーパーバンタム級王者、繁である。ハードパンチャーとして鳴らし、24の白星のうち18がKO勝ちだった父は、試合5日後に振り返った。

 「我々としたら、倒して勝ちたかったです。しかし、三代選手があまりにも打ち合ってこないので……」

撮影:山口 裕朗
撮影:山口 裕朗

 三代にしてみれば、父譲りのパンチ力を秘めた王者の攻撃を躱すことが、鍵だった。

 繁は続けた。

 「こちらがチャンピオンで、手を出していたのに…。ずっと、攻撃していたのにという思いはあります。結果は覆らないと分かっていますが、ああいう判定が出ると、ボクシングの魅力が薄れるように思うんです。アマではなく、あくまでもプロの世界ですから」

撮影:山口 裕朗
撮影:山口 裕朗

 5回に右目の上を切った仲里だったが、血が目に入ってやり辛かったのでは? という筆者の質問に繁は応じた。

 「それは全くありませんでした。倒そう、倒そうと力んだのかな。7回以降、全てのラウンドでポイントを失った点が疑問です。

 プロボクシングなら、よりダメージの深いパンチをヒットさせた方にポイントがいく筈だと感じていました。小さなパンチを集めてポイント加点するアマチュアボクシングではなく、プロボクシングですから。ジャブが右ストレートは、同じポイントなのか? と感じざるを得ません。見た目は周磨の古傷が切れて出血していますが、ラウンド全体での有効打の攻撃力ヒットは、明らかに勝ったと私は思ったんですよ……。

撮影:山口 裕朗
撮影:山口 裕朗

 1ラウンドから5ラウンドまでの採点結果は1ポイント差で、リードしていました。7~9ラウンドは、ポイントを失ったかも知れませんが、6ラウンド、10ラウンドは、こちらが有効打を当てています。アマチュアボクシングとプロボクシングは違う筈です。よりダメージを与えた方に、ポイントがいくのではないのでしょうか?

 負けは負けなので、受け入れるしかありません。本当に再戦させたいです」

撮影:山口 裕朗
撮影:山口 裕朗

 繁はこう結んだ。

 「三代をKO出来ないんじゃ、周磨も世界がどうなどとは言ってられません。また出直しですね」

 仲里に同ベルトを奪われ、かつてジムメイトとして数え切れない程のスパーリングを重ねた宇津木秀は語った。

 「三代が勝つなら判定、仲里ならKOと予想していました。5ラウンドでの途中経過は、自分の考えとは真逆でした。あれを聞いて、三代はリズムを変えていくだろうなとは思いましたが、修正力が高く、仲里よりも一枚上だと感じましたね。考えてボクシングをやっている点が流石でした」

 仲里周磨は、どんな形でリングに戻ってくるか。親子の戦いは続く。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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