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デオンテイ・ワイルダーよ、これ以上醜態を晒すな

林壮一ノンフィクションライター
責任転嫁しなければ、自分を保てないのか…(写真:ロイター/アフロ)

 これほど見苦しい敗者も珍しい。

Photo:Mikey Williams/Top Rank
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 派手な衣装に身を包んでリングに上がったのは、己の判断であろう。「40パウンド(18.14kg)もあったコスチュームが重過ぎて、足が動かなくなった」などと、よくも言えたものである。

 マイク・タイソン、レノックス・ルイス、あるいはモハメド・アリ、ジョー・フレジャー、ジョージ・フォアマンがあんな格好でリングインしたであろうか? 自分の技量の無さを、入場時の演出で誤魔化して来たのがデオンテイ・ワイルダーという男だ。

 仮の話となってしまうが、先に挙げたチャンピオンと同時代に生きていたら、ワイルダーは世界王者にはなれていなかったレベルである。

Photo:Mikey Williams/Top Rank
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 22日にWBCヘビー級タイトルを失ったワイルダーは3月末までアフリカで休養し、その後、タイソン・フューリーとの三度目の対戦を希望するとアナウンスした。

 また、タオルを投入したトレーナー、マーク・ブリーランドに対する怒りを示し、今後2度と共に仕事をしないとも語った。ワイルダー陣営のジェイ・ディアストレーナーも、試合直後からブリーランドのタオルに不満を述べている。

Photo:Mikey Williams/Top Rank
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 しかし、ワイルダーが危険な状態に陥っていたことは、試合を目にした誰もが分かっている。

Photo:Mikey Williams/Top Rank
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 3回と5回にダウンを喫したことに加え、何度となくスリップダウンを繰り返していたワイルダー。左耳を2cmカットして出血しながらも「パンチによるダメージは無かった。まだ俺は戦えた」と発言。

Photo:Mikey Williams/Top Rank
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 伝説のファイターで、元統一ミドル級チャンピオンの"マーベラス"・マービン・ハグラーは「タイソン・フューリーはフィジカルもメンタルも100%磨き上げ、完璧なコンディションに仕上げて、素晴らしい戦いを見せた。おめでとう!」という言葉を勝者に贈ったが、ボクシング界の殆どが同じ思いだろう。

Photo:Mikey Williams/Top Rank
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 最重量級のチャンピオンが、ここまで醜態を晒すのか。ワイルダーもジェイ・ディアスも冷静に映像を見直し、ハグラーの言葉を受け止めるべきだ。身体だけでなく、脳も壊れてしまったのか。

Photo:Mikey Williams/Top Rank
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 タイソン・フューリーは、もうワイルダーなど眼中に無いだろう。当然のことながら、彼の視線はWBA/IBF/WBO同級王者のアンソニー・ジョシュアに向けられている筈だ。統一ヘビー級タイトルマッチの年内実現を期待する。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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