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【休校中の宿題問題(2)】学校、教育行政は保護者の不満、不信にもう少し向き合ってほしい

妹尾昌俊教育研究家、一般社団法人ライフ&ワーク代表理事
(多くの保護者は不満ばかり言っているわけではない)(写真:アフロ)

 現在、およそ7割の都道府県等の学校で今月末まで休校が続く見通しだという(朝日新聞5/13。調査対象は都道府県・道府県庁所在市・政令指定市・東京23区の計121自治体)。

 通常の夏休みの3倍近く不登校に近い状態が続くなか、各地の先生たちは、子どもたちの学びを保障しようと、さまざまな努力と工夫をしてくれているが、保護者からは不満や「もう限界」という声も上がっている。

 各地多様なので、十把一絡げに申し上げたいわけではないが、休校中の家庭学習、宿題をとってみても、「家庭へ丸投げで、学校からはほとんどフォローがない」という声は多い。わたしの独自調査でも、公立学校の保護者の約半数は「学校は課題をわたしたあと、放置に近い」と回答している。前回記事ではこうした事実の一端をデータ付きで紹介した。

前回記事:「宿題わたして、あとはよろしく」 休校中の学校に高まる保護者の不満、悲鳴 【独自調査結果】

 この記事では、調査結果をもう少し紹介しつつ、現状をもう少し丁寧に確認したい(調査概要や留意点は前回の記事をご覧いただきたい)。

(写真素材:photoAC)
(写真素材:photoAC)

■家庭学習に関わり、親子関係等がよくなったところが約2割だが、約半数は怒りっぽくなっている

 次の結果は、休校中の家庭学習に関わって、よかったこと、よくなかったこと、負担などを聞いたものだ。公立小学校の保護者では「子どもの様子が詳しくわかり、よかった」との声は多い。「子どもとの関係がよくなった」との意見も1~2割ある。

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出所)妹尾昌俊「休校中の家庭学習について、保護者向けアンケート調査」(以下、特に断りがない限り同様)

 一方で、「ついイライラしたり、子どもに怒ったりするときもあった」との回答も、公立小の保護者では半数近くに上る。

 「保護者も時間が取られて、仕事や家事が進みづらかった」という負担感も高い。「宿題はやったの?(終わったの?)と度々聞くことがあった」も小中ともに4~6割。宿題をやったか、しつこく言われ、ときには怒られる。子どもたちの学習意欲が下がっている可能性も心配だ。

■保護者は先生の代わりにはなれない

 昨日のわたしの記事には、教員と思われる方から「家庭学習には保護者の役割、責任も大きいのに、学校だけ批判して」や「保護者の不満、愚痴をぶちまけてるだけだ」といった内容のコメントも寄せられた。たしかに、教育基本法を持ち出すまでもなく、保護者の責任が大きいことは、再確認しておきたい。だが、なにもやっていない保護者はごく少数であることが、この調査からも示唆される。

 次のデータは、4月または5月の休校中の学校からの課題・宿題について、保護者が行ったことについての回答結果だ。

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 中学生はだいぶ放っておいても大丈夫な場合もあるだろう(国立・私立には中学校もかなり含まれている)が、小学生の低学年にいくほど、やはり、いろいろな支援が必要となる。公立小1~4年の保護者について見ると、丸付け・採点をしたのは約8割、わからないところを教えたり調べたりしたのも約8割に上り、「とくに何もしなかった」保護者は数%だ。

※もともと、問題意識の高い保護者がアンケートに回答しているという可能性もある。

 保護者もかなりできることはやっているが、我が子に勉強を教えるのは簡単なことではない。なかなか思うようには進まない家庭も多い。それなのに学校からのフォロー、支援は少ないので、不満が高まっているのではないか。

(写真素材:photoAC)
(写真素材:photoAC)

 ちなみに、次の文章は、先日朝日新聞へ投書されたもので、小学校教員でもある、ある母親からだ。

 小学4年の娘は自ら学習計画を立て順調だ。だが新1年生の息子の対応に困っている。教室でするように、ひらがなの書き順や字の形の整え方を教えているが、「なんできれいになぞらなくちゃいけないの」「テレビ見たい」「お菓子食べさせてくれたらやる」と口答えの嵐だ。

 正しい姿勢や鉛筆の持ち方を教えても自分流を貫き、殴り書き。他の新1年生のお子さんをもつ家庭ではどうやって勉強を進めているのだろうか。私にはなかなか息子のやる気スイッチを見つけられない。

出典:朝日新聞2020年5月10日

 この一事例だけで一般化するつもりはないが、学校の先生であっても、我が子の家庭学習をみるのは難易度が高いという声はよく聞く。

■約半数の公立学校の保護者は、学校への信頼感を下げている。

 こうしたなかで、次のデータは、ショッキングだ。「休校中の学校からのコミュニケーションや働きかけが少なく(または満足できるものではなく)、信頼感が下がったかどうか」について聞いた。

 公立小学校、公立中学校については、Yes、Noがくっきり分かれた。公立小の保護者の約50%、公立中の保護者の約56%が「信頼感が下がった」と回答している。

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 国立・私立学校は、予算や家庭環境なども公立とはちがうので、一概に比較はできないし、回答数も少ないことにはご注意いただきたい。とはいえ、公立とは大きな差がある。学校への不満が高まり、信頼が落ちている原因は、新型コロナの影響で、保護者もストレスフルな毎日だから、という影響もあろう。だが、ならば、校種を問わず、もっと似た結果になりそうなものだ。やはり、学校ごとの対応の差が保護者の不信という結果にもあらわれているのではないだろうか。

 公立・国立・私立問わずだが、これは、ビジネスパーソンなら、相当危機感をもつ結果だと思う。たとえば、あなたが飲食店の店長だったとしよう。常連のお客さまの半分近くが「マズくなった。もうこの店には来たくない」と言っているとしたら。「客の単なるワガママだ」、「本社が予算をとってくれないからだ」などとばかり言ってはいられないはずだ。(もちろん、わたしは、教育行政等にも問題は多々あると考えているが。)

 公立小中でも、4~5割はそれほど信頼は下がっているわけでないので、多様ではある。だが、下がっているところは、なぜそうなってしまったのだろうか。どういうことを今後は考えていくべきだろうか。次回の記事では、背景・要因、今後必要なことなどを分析する。

⇒次の記事:【休校中の宿題問題(3)】保護者の不満、不信はなぜ高まったのか、コミュニケーションロス、宿題の質

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◎妹尾の記事一覧

https://news.yahoo.co.jp/byline/senoomasatoshi/

教育研究家、一般社団法人ライフ&ワーク代表理事

徳島県出身。野村総合研究所を経て2016年から独立し、全国各地で学校、教育委員会向けの研修・講演、コンサルティングなどを手がけている。5人の子育て中。学校業務改善アドバイザー(文科省等より委嘱)、中央教育審議会「学校における働き方改革特別部会」委員、スポーツ庁、文化庁の部活動ガイドライン作成検討会議委員、文科省・校務の情報化の在り方に関する専門家会議委員等を歴任。主な著書に『変わる学校、変わらない学校』、『教師崩壊』、『教師と学校の失敗学:なぜ変化に対応できないのか』、『こうすれば、学校は変わる!「忙しいのは当たり前」への挑戦』、『学校をおもしろくする思考法』等。コンタクト、お気軽にどうぞ。

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