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アウシュビッツ絶滅収容所「SNSでは皆さんの声でアウシュビッツの歴史を拡散してください」

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

2022年末には目標の150万フォロワー達成

第2次大戦時にナチスドイツが約600万人以上のユダヤ人やロマ、政治犯、同性愛者などを殺害した。ポーランドに設置されたアウシュビッツ絶滅収容所では約110万人が殺害された。ホロコーストで殺害された約5人に1人がアウシュビッツで命を落とした。アウシュビッツ絶滅収容所は現在でも博物館としてホロコーストの悲惨さを伝えており、世界中から観光客が訪問している。

2019年には過去最高の230万人以上がアウシュビッツ絶滅収容所を訪問していたが、2020年は世界規模でのパンデミックの影響で、アウシュビッツ絶滅収容所博物館も一時閉鎖しており訪問者数は52万人程度だった。2021年もまだ世界的なパンデミックの影響で56万人程度だった。それでも現在でもアウシュビッツ絶滅収容所は世界的な観光名所の1つである。最近ではオンラインやバーチャルでの展示にも注力している。

アウシュビッツ絶滅収容所博物館ではツイッターでも情報発信を行っている。そしてアウシュビッツ絶滅収容所博物館では2022年末までにフォロワー数150万の目標を掲げて2022年12月4日に目標の150万フォロワーを達成した。

そして新年の2023年1月5日にはアウシュビッツ絶滅収容所博物館の公式ツイッターでは「アウシュビッツの歴史は人間が憎しみあっていたことが導いてしまったことへの警告です。道徳的責任と行動が必要です。今日もこれからも。ソーシャルメディアでは、皆さんの支援が必要です。アウシュビッツの歴史を皆さんの声で拡散してください。記憶を次世代に伝えてください、そして決して忘れないでください」と訴えていた。

▼アウシュビッツ絶滅収容所博物館「SNSでは皆さんの声でアウシュビッツの歴史を拡散してください」(2023年1月)

「記憶を次世代に伝えてください」

アウシュビッツ絶滅収容所博物館では、2019年8月に「解放75年目を迎える2020年1月までに、ツイッターのフォロワーを75万人まで目指す」と掲げていた。当時は55万人程度のフォロワーだったが、2019年末には75万まで到達し、目標はクリアした。 その後、アウシュビッツ絶滅収容所博物館では「フォロワーを2020年1月27日(国際ホロコースト記念日)までに100万人」と目標を上方修正し、この目標もクリアされ、2022年2月には120万、2022年6月には130万を超えて、2022年11月で140万、そして2022年12月に150万を達成した。

アウシュビッツ絶滅収容所博物館のツイッターでは、毎日、アウシュビッツ絶滅収容所で犠牲になった方々の誕生日や殺害された日に、彼らの写真とともに生まれた場所、いつ殺害されたかを投稿している。大量にある犠牲者の写真の他にも文書、遺品などをデジタル化して保管しており、それら貴重な歴史的コンテンツを毎日ツイッターで世界中に発信している。

2022年6月には「アウシュビッツ絶滅収容所のツイッターの投稿に「いいね(Like)」をしにくいから「リスペクト(Respect)」のボタンがあるといいな」という投稿があった。それに対してアウシュビッツ絶滅収容所のツイッターは「全ての"いいね"とリツイートは、私たちの活動を支援してくれていますし、投稿が拡散されるので、多くの方に対してホロコースト教育を行うことにつながります。皆さんがソーシャルメディアで"いいね"やリツイートといった行動を起こしてくれることは、私たちがソーシャルメディアで情報発信を行っているミッションそのものにつながります。私たちにとってツイッターでの"いいね"は"ホロコーストの記憶と歴史を忘れない"です」と綴っていた。

アウシュビッツ絶滅収容所の博物館のツイッターではホロコースト関連のニュースや犠牲者の情報、生存者の体験など決して明るいニュースや情報ではなく、目を覆いたくなるような写真や生々しい情報も多い。また当時のホロコーストの様子やニュースだけでなく、現代社会のヘイトスピーチや民族憎悪、欧米では根強く残っている反ユダヤ主義に対しても警鐘を鳴らしている。

ホロコーストを経験した生存者らの高齢化も進んでいる。遠くない未来にゼロになり、世界中の多くの人にとってホロコーストは歴史的な出来事になっている。だが、アウシュビッツで起きた残虐な歴史を二度と繰り返さないように積極的な情報発信と記憶のデジタル化を推進している。

アウシュビッツ絶滅収容所の博物館では記憶のデジタル化を重要視している。記憶の保持と伝達のためにもツイッターを活用している。「アウシュビッツの歴史の記憶の継承が私たちの道徳観と責任感を反映することにも役立ちます。記憶の継承のためにツイッターのようなバーチャルなコミュニティをもっと成長させていきましょう。リツイートは私たちの声を増大させてくれます。是非他の人にも紹介してください」と呼びかけていた。

▼アウシュビッツ絶滅収容所で毎日ツイートされる囚人の誕生日を伝える投稿(2023年1月)

▼記憶の継承の重要性を訴えてリツイートや他の方への紹介を呼びかける(2022年11月)

▼「リスペクトボタン」があるといいなに対して「いいね」も記憶の継承に繋がると答える(2022年6月)

▼150万フォロワー達成の御礼を伝える(2022年12月)

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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