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アマゾン、アウシュビッツをデザインしたクリスマスグッズを販売しネット大炎上、商品取下げ

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

 世界一のオンラインショップのアマゾンに、アウシュビッツ絶滅収容所をデザインしたクリスマスグッズが販売されていた。ナチスドイツが第2次大戦中に、ユダヤ人やロマ、政治犯ら約600万人を殺害した、いわゆるホロコースト。アウシュビッツ絶滅収容所は、約110万人が殺害されたホロコーストの象徴のような収容所の1つで現在でも観光地として年間200万人以上が訪れている。日本人には馴染みがないが、欧米やイスラエルからは学生や若者らが社会科見学でも多く訪れている。

 今回、アマゾンに出品されていたのはクリスマスのオーナメントや栓抜きなど、アウシュビッツ絶滅収容所の入り口がデザインされていた。今回のアウシュビッツをデザインした商品にネットも大炎上していた。アウシュビッツやホロコーストを想起させるデザインの商品は炎上しやすい。現在では当時のホロコーストを経験した人々は高齢化が進み、多くの人がこの世を去っているが、欧米のユダヤ人や欧州の人々はまだホロコーストの記憶を忘れていない。現在でも欧米では反ユダヤ主義は根強く、ヘイトスピーチや民族憎悪の対象にもなっているので、ホロコーストを想起させる商品に対して、欧米の人々は非常にセンシティブである。このようなホロコーストをイメージした商品は初めてではなく、過去にもシャツなどに採用されてきたが、その度にネットで炎上してきた。過去にも何回も同じように炎上しては商品販売を中止したケースがあったにもかかわらず、今回もまた同じようなことが起きた。

 アウシュビッツ絶滅収容所は現在ではアウシュビッツ・ビルケナウ博物館となっており、アウシュビッツ博物館も自身のツイッターで「アウシュビッツの写真を掲載したクリスマスのオーナメントを販売するのは不適切だ。アウシュビッツの栓抜きとは、犠牲者を落胆させ、彼らに対して失礼だ。アマゾンはこれらの商品を削除すべきだ」と訴えた。アマゾンはすぐに商品を削除。アマゾンでは商品を販売する基準として、相手に不愉快な思いをさせる商品や不適切な商品の販売は認めないことになっている。

▼アウシュビッツ博物館はツイッターで、アマゾンに対してアウシュビッツをイメージしたクリスマス商品の削除を要求。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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